第26話 錬金以外に興味津々になってしまった久しぶりの配信

「----という訳で、『あるけみぃ』久しぶりの配信になります! 皆さん、おはこんばんにちは~!」


(※)『おひさ~』『帰って来た錬金術師』『更新はほぼ毎日やってたけどね』『ベータちゃんとデルタちゃんのゴーレム配信だろ? あれ良かったよな』『ゴーレムから見る宇宙の神秘や、"くらしっく"なる音楽! 芸術的だったよ!』


 はい、という訳で今日は久しぶりに配信者『あるけみぃ』としての配信をする事にした。

 ちなみに、配信が出来なかった期間は、ベータちゃんやデルタちゃんが配信していたらしく、なかなか好評だったようだ。

 ……というか、私よりもコメントやお気に入りの伸びが良いのは、少し嫉妬しちゃう。


 あと、ゴーレムから見る宇宙の神秘は、私も気になる。

 

「(クラシック……前世の音楽が聴きたかったんで、【ガンマちゃん】にはその辺を教えたのが流出したという感じかな)」


 この世界、娯楽というのは、以前にも言ったように魔王ユギーのせいでほとんど失われてしまった。

 勿論、レコードや楽譜----つまりは、音楽史もすべて焼失、白紙になってしまったのである。

 それじゃあつまんないとの事で、前世で聞いた音楽のデータを叩きこんで完成したのが、ガンマちゃん----別名、音楽再生用ゴーレム。


 あらゆる楽器に精通し、"ポップス"、"ロック"、"アニソン"など多種多様な曲を教え込んだ結果、前世のボーカロイドのように、いや、それ以上の才能によって、自ら楽曲を作り出すに至った音楽ゴーレムである。

 彼女は私とは別に歌枠、音楽枠で顔出しNG配信をしており、私よりもファンが多い人気配信者となっている。

 彼女にはまだクラシック系統は配信させていなかったのだが、ベータちゃんやデルタちゃんが言ったから、今度やるように伝えておこうっと。



 ----閑話休題。私の配信に戻そう。


 

 シグレウマルを倒した後、私もしばらく配信が出来なかった。

 いやぁ、掃除機で吸い取ったシグレウマルをどうするのかという処理を考えたのもそうなんだけど、シグレウマルを私が倒してしまったのがマズかった……。


「師匠! 錬金が完了しましたので、見て欲しいのであります!」

「師匠! 教えていただいた"タイチューケン"、デルタちゃんさんとの特訓でも分からないことが多すぎます。せめて、もう少し教えて欲しいのですが……」


(※)『弟子キタ~!!』『増えとる、増えとるww』『おや、あの方、共和国の姫様なのでは……』『知ってるの有識者さん?!』『姫さんがこんな配信に出る訳ないだろ』『エルフと姫様とか、この配信、ゲストが豪華すぎる!!』『ゲストじゃなくて、弟子だけどな』


 おかげで、弟子が増えました。

 フランシアさん、自分が倒せなかった名持ちの悪魔シグレウマルを倒した私に惚れこみ、今ではタラタちゃん同様、私への押し掛け&住み込み弟子になっている。


 しつこく教えを請う2人は、めちゃくちゃしつこく、おかげでシグレウマルとの戦いをした日とは別で、5日くらい配信が出来なかった。

 師匠として課題を出して、ようやく配信にこぎつけたのだが……まさか、ここまで空気が読めないとは……。


 バッと、なんと配信中にも関わらず、師匠と呼びながら部屋に入って来る弟子2人。

 あぁ、もう! (配信中に親が入って来る)親フラは、この世界にもあったのか……てか、コイツラ親じゃなくて、弟子だから、弟子フラ?

 いいや、呼び方なんてどうでも良い!


「タラタちゃん! 錬金は後で見ます! それよりもベータちゃんに次の教えを教えて貰いなさい!

 フランシアさん! 体中剣のデータはデルタちゃんにインプット済です! そちらに聞きなさい! それと、デルタちゃんで良いから! さん付けしない!」


 あと、配信中に部屋に入って来るなっ!!

 絶対だぞ、絶対!


 弟子2人をサッサと追い出し、私は配信を再開する。


「さっ、さて、配信を再開しますよ~」


(※)『初見です、失礼します"タイチューケン"とはいったい』『あっ、某も気になるでござる』『知らないのお侍さん?!』『お前も知らないだろうww』『錬金術以外で驚かれることが多い配信者』『だよなぁ~、ダンジョン内を写したり、エルフ乱入とかだろ』『お姫様も来たし、ますます多くなるだろう』『錬金術系配信者というか、それ以外が豪華すぎる系配信者』


「こら、そこ! 誰が錬金術それ以外が豪華すぎる系配信者ですか! 誰が!」


 まったく、私の売りは錬金術だというのに。

 こちとら配信者としての生活は趣味ではありますが、それなりに真剣にやっております故、キャラを大事にしてるんですよ。

 錬金術師としてのキャラ、どうにか守って見せますよ!


「という訳で、体中剣に関しましては、サラっと流しますよ!」


(※)『結局、教えるんかい!!』


 あとで、個別に配信を通してメールとかされるのも面倒だしね。

 あと、ないとは思うけどフランシアさんのように、家まで直接来られるのも面倒だし。



「体中剣というのは、一種の思想だよ。剣を扱う者としての心構えみたいなモノで、何も難しい事ではない。

 自分の身体を大木の幹として例えて、目の前の剣を木の枝として見なしつつ、大木のようにどっしりと構える----そうして、相手の攻撃を集中するという『護りの剣』だね」


 要は、自身を人ではなく木であると思い込み、相手の攻撃にのみ備える。

 自ら攻撃するのではなく、相手の攻撃をどうやって防ぐかのみを考える、思考を防御のみに捧げる『護りの剣』である。


「相手の剣を受け流しつつ、相手が打ち切るよりも先に、自身の剣を相手の剣に付ける。相手の行動を予測して無力化しつつ、相手を斬りつける。

 要は、相手の行動を予測して、力や行動を制限する剣という感じかな」


 まぁ、あくまでも理想論である。

 『相手の行動を把握して、自分の思い通りにする剣』----それが簡単に出来るのであれば、誰も苦労しないのだから。


 タラタちゃんの訓練も、今はデルタちゃんを使って打ち込んだ剣を徹底的にさばくというのをやってもらってるのだ。

 まずは第一段階、相手がどこから攻撃してもさばくことをやってもらっているのだ。

 それが出来れば相手がどう動くかを把握するかを学ばせるつもりだ。


 ----というか、これが出来れば私は必要ないかなぁ~くらいのノリで学ばせているのだけど。


(※)『つまりは、相手の行動を把握して自分のペースに持ち込む、と』『そのため自分を固定して、相手の行動に集中すると』『確かに理に叶ってるな』『体中剣……良い考えだ』


 あぁ、ヤバイ! ヤバイ!

 なんかコメント欄が、体中剣に夢中になってしまっている!


 戻さないと!

 錬金術師系配信者『あるふぁ』としての配信に戻さないと!


「さてさて、体中剣の話はここでおしまい!

 ----錬金術師系配信者『あるけみぃ』の話に戻りますよ! 今日は、視聴者さんの安価に応える配信をしたいと思います!」

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