第23話 悪魔を成仏、もとい討伐するまで暇なんだが配信
「カハッ……!!」
ゆらりと、真っ二つにされたはずのシグレウマルは浮かび上がる。
浮かび上がったシグレウマルの身体の傷が徐々に塞がっていき、真っ二つの身体から、真っ二つになる前の1つの身体へと戻って行く。
その代わりに、シグレウマルの身体は先程までよりも明らかに薄くなっていた。
「物理攻撃を受けるなんて、想定外すぎるんだが?!」
真っ赤な顔で抗議するシグレウマル。
神聖術以外は効かない、物理も魔法も受けつけない体質である悪魔シグレウマルからしてみれば、剣で斬られるなんて想定外だったのだろう。
「----せいっ!!」
「よっ! もう油断はしないんだがっ?!」
タラタちゃんが放った弓矢を、今度は受けないとばかりに飛んで避けるシグレウマル。
----うん、ちゃんと警戒はしてくれているみたいである。
けれどもまぁ、タラタちゃんが放った弓矢は、先程シグレウマルの球体を破壊したのと同じ【負傷】の力しか与えていない、ただの弓矢。
シグレウマルにぶつかってもダメージゼロなのだが、警戒してくれるのは何よりだ。
「おかげで、これも当てられるだろうよっと!」
私はそう言って、こういう時のために用意しておいたライトを取り出す。
前世でいうと懐中電灯の形状のコンパクトサイズで、ボタンを押せば中にある魔術付与が発生して、光が放たれる仕組みになっている。
「---ポチッと、な!」
----ピカッ!!
ボタンを押すと共に光がシグレウマルに放たれ、光に当たったシグレウマルの身体が燃えて消えていった。
「ぎゃああああああああ!! 痛いんだが?! これはもしや、神聖術なのでは?!」
----まさしく、その通り。
神聖術を帯びた光を放つ魔道具、名付けて【神聖懐中電灯】である。
フランシアさんの【必中】の魔剣だけでは悪魔対策として
まぁ、本物の神聖術と比べると魔術付与で真似ただけなんで威力が弱すぎて、武器なんかじゃあなくて、あくまでもサポートアイテム的な扱いなんですが。
「
「くっ……!」
睨んで来るも、シグレウマルはそれ以上は何もできない。
----悪魔は物理攻撃も魔法攻撃も効かない、神聖術だけが唯一の突破口みたいなデタラメ性能をしている魔物である。
しかしながら突発的に戦うのがヤバイのであって、『悪魔がそこに居る』と分かってさえいれば、対策も簡単なのである。
「対策も完璧な悪魔など、恐れることなど何もないね。----という訳で、あとはフランシアさん。あなたに任せます」
「はいっ! ここは私が、あの悪魔を1人で倒します!」
フランシアさんは熱意を持って、魔剣と魔道具を握りしめる。
フランシアさんに1人で、あの悪魔を討伐させる。
----別名、丸投げである。
そもそも彼女と因縁があるのは、髪の毛を生きる獅子に変えられてしまったフランシアさん。
彼女があの悪魔に決着をつけるのが一番良いという判断と、悪魔と決着をつけてくれたら私への弟子入りを諦めてシュンカトウ共和国に帰ってくれないかなぁという判断である。
神聖術を放つ魔道具で
ここまで対策を整えていれば、あとは相性の差というよりかは、彼女がどれだけ訓練したかという事だろう。
「私とタラタちゃんは離れておこうか」
「はいであります、師匠!」
一騎打ちを邪魔しないように、私とタラタちゃんは離れる。
----面倒だから押し付けた、という訳ではないよ。うん。
「----勝負ですよ、シグレウマル! あなたを倒して、この呪いを解いて見せます!」
「
ほぉら、あの2人ったら、私達の事を無視して、2人で戦い始めましたよ?
私達の事無視して、お互いに戦ってます。
この世界、基本的に煽り耐性がない人多すぎなんですよね~。
あぁいうのに対抗できる人って、そういう耐性を持つレアな人達か、煽られている相手よりも圧倒的にレベルが高いという条件を持っている者だけで、基本的には煽られたら乗ってしまうのが通例な世界。
見た事ないけど、たぶん王国議会とか、お互い腹の探り合いをしている前世の世界よりも、言いたい放題言い合っての罵倒溢れる現場なんだろうなぁ……。
この世界には【挑発】なんてスキルは、私が知る限りはない。
もしもあったら、多分絶対に多くの人や魔物がかかるだろう。
「(そうだなぁ。一回試作で作ってみるのも、アリなのかもしれない)」
それに【神聖懐中電灯】の力も試すことが出来たし、私としては万々歳の成果である。
あとはフランシアさんが、悪魔シグレウマルを成仏、いえ討伐するのを待つだけっと。
「まぁ、いざとなればこれで----」
そう思って、奥の手を用意していたのが良かった。
「ハハハッ!! 次はお前らの番なんだが!?」
シグレウマルは、フランシアさんとの戦いに勝利し、こちらに戦いを挑んできたのであった。
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