第12話 デルタちゃんと刀造り配信
「----という訳で、今日の配信はうちの武闘派ゴーレム、デルタちゃんと一緒に配信していきますよ~」
「皆様、お初にお目にかけます。素材回収担当、デルタと自己紹介します。お見知りおきを」
(※)『いきなり知らん女が出て来た!?』『腕が6本あるんだけど?! なにこの娘?!』『凛としていて、ベータちゃんとはまた違う魅力がありますね』『この娘も良いな……"ヌ"けるっ!!』『衛兵に通報しときましたww』
はい、という訳で今回は、いつものベータちゃんではなく、デルタちゃんと一緒に配信をやっていきたいと思います。
なにせ、今回取り上げるのは、彼女に与える刀を作る配信だから、本人が居た方が作りやすいからね。
「今回はですね、剣の一種……いえ、亜種と言っても良い"刀"を作っていきますよ」
剣と刀は、同じく相手に斬りかかる武器である。
そして、錬金術では、この2つの武器は、大きく違う目的の武器として扱われる。
剣は、『頑丈に作った』相手を斬るための武器だ。
斬るというよりかは、フェンシングのように突くのを主流としており、硬い魔物の身体に何度当たっても大丈夫なように硬く作る、いわば誰でも扱えるための武器。
一方で刀は、『鋭利さにこだわった』相手を斬るための武器。
薄く鋭く作る事で、切れ味を良くすることにこだわった武器で、上級の使い手なら山ですらスライスに出来ちゃうとされるほどの、斬る事に特化した武器。
その一方で切れ味を良くするために、どうしても構造を薄くしなければならないため、ちゃんと使わないとすぐに折れてしまう、いわば使う人を選ぶ武器。
刀は確かに強い武器であり、配信強化を受けたデルタちゃんが使えばほぼ誰にも負けない最強の武器となる。
だがしかし、脆い武器でもある。
それに、この世界には『合金』という錬金術があり、その気になれば剣自体に『合金』の作用により、刀と同じだけの切れ味を与えることも可能だ。
それでもなお、私がデルタちゃんに対して、刀を渡し続ける理由はたった1つ。
「という訳で、今回はそんな私のこだわりの武器、刀を錬成していきたいと思います!」
「はい、ここで効果音【拍手】を発動させます」
----パチパチパチパチ!!
「デルタちゃん! そういう裏事情は言わなくて良いの!!」
(※)『これは、天然……!!』『そう言うのは言わなくても分かってるから言わなくても良いぞww』『知らない視聴者を安心させるスタイル!!』『ベータちゃんとは違う意味で、伝説を残しそうだな』
うん、
初期の頃にこんな事を言ってたら、むちゃくちゃ叩かれたと思うけどなぁ……。
「さて、それでは早速、材料を紹介しましょう! デルタちゃん!」
「材料は、魔鋼ですね」
デルタちゃんが用意してくれたのは、魔鋼と呼ばれる、特殊な金属だ。
地面などに埋まった鋼が、長時間に渡って魔力を吸う事で完成する。
最近だと、『合金』の力を使えば、鋼に魔力の性質を付与したまま錬成して作成できるため、そこまで高価で珍しい代物ではない。
今回使用する魔鋼も、そういった経緯で作られた、人工的な代物である。
また、魔鋼の中でも炎属性の魔力が含まれまくっていれば火魔鋼とかいう、魔術的な属性を最初から持つ魔鋼などもある。
なんだけど、それはそもそもレア中のレアなうえ、今回作りたい刀には向かないので、普通の魔鋼を使おうと思う。
「では、デルタちゃん! ハンマーの用意を」
「至極了承して、了解しました」
(※)『至極了承+了解ww』『口調がヤバすぎるww』『なんだコイツ!?』『クール系に見えて、実はお笑いタイプか!』
うんうんっ、良い感じに配信が盛り上がって来たね。
……あんまり良い感じに受け入れられると、デルタちゃんの性格設定変更を妨害されそうだから、この辺で止めとこう。
「ではまず、魔鋼をハンマーで叩きます」
----カンッ!!
鈍い音が響き渡り、それと同時に魔鋼の中の魔力の向きが、良い感じに揃い始めた。
よしっ、この調子で魔鋼の中の魔力の向きを、全部同じ向きに揃えていこう。
3分ほどで全て揃え終わった私は、視聴者に告げる。
「ではこれより、刀の真の価値をお見せいたしましょう」
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