第9話小説「安倍晴明物語☆夢幻の月」番外編「ある昼下がりに」

 ☆入門編なので多分、初めての方でも読めます☆




 登場人物紹介

 ◇安倍あべのせいめい

「安倍晴明物語☆夢幻の月」の主人公、都の陰陽師。人と白狐しろきつね化生けしょう


 安倍晴明イメージAIイラスト

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093082853962862


 ◇美夕みゆう

 物語のヒロイン、晴明を慕っている。人と鬼の化生。


 美夕イメージAIイラスト

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093082853950968


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 ここは平安時代の京の都、日中、陽が良く差し込む、陰陽師おんみょうじ安倍あべのせいめいの屋敷。

 美夕は炊事場で、洗い物を済ませると、晴明の仕事部屋へ白湯さゆをお盆に乗せて運んで行った。



 小柄で、肩までの黒髪、大きな金色の瞳。蒼の布地で白い菊の紋様の着物で可憐な姿。

「晴明様、美夕です。入ってもよろしいですか?」


 彼女は、ふすま越しに晴明に声を掛ける。

「ああ、入って良い」

 晴明の声が聴こえて、美夕はふすまを開けて彼の部屋へと静かに入る。


「白湯を持って参りましたよ」

「ああ、すまぬな。そこの文机に置いてくれ」



 黒髪に薄紫色の瞳、白のかりぎぬを着たこの屋敷の主、安倍晴明は優しく目を細めた。

 美夕は、文机の上に白湯を置くと「では、戻りますね」と部屋を出ようとした。

 その時、晴明は美夕の名を呼んで引き留めた。



「美夕、もう少し話しをしていかないか?」

「何かご用ですか?晴明様、縫い物がありますので、少しでしたら良いですけど」

「最近は、仕事続きでゆっくり、話すことがなかったからな。今日は少し、話そう」

「はいっ」



 美夕は、晴明のその言葉を聴いて、嬉しくて胸が温かくなった。

 晴明と美夕は、軽い世間話からお互いの近況報告等、話しに花を咲かせた。


「お前とこうして、話せると私も嬉しい。たまにで良い、こうして話せるか?」

「はい、私も晴明様とお話し出来てとても、嬉しいです!」


 お互い穏やかな雰囲気に包まれる。

 晴明はすくと立つと、引き出しの中から、藤色の布に包まれた物を持ってきた。



「これをお前に渡そうと思ってな」

 美夕が見ていると晴明は、布を彼女の前で開いて見せた。

 そこには、陽の光に照らされ、キラキラと輝く銀の鈴が乗っていた。

 鈴には、朱色の紐が付けられている。


「わあ、綺麗ですね。これを私にくださるのですか?」

「ああ、私の母上が持っていた魔除けの鈴だ」

「えっ、そんな、大切なお母様の形見を私なんかが、頂いてもよろしいのでしょうか」


 美夕は、戸惑いながら、少し遠慮がちに晴明をみやった。


「私は、お前に持っていて欲しいのだ。母上がこれからも、お前の身を守ってくださるように」

「それでは貴方の形見がなくなってしまうのではありませんか」

 美夕が聴くと、晴明は優しく微笑んで言った。


「私はもう、充分守って貰った。これからはお前が守って貰うと良い」

「晴明様、ありがとうございます」

「ああ……」


 彼女は、晴明の母の形見の銀の鈴を、大切に懐にしまうと美夕と晴明は微笑み合った。



「安倍晴明物語☆夢幻の月」番外編「ある昼下がりに」終わり


 本編はこちらです。

【安倍晴明物語☆夢幻の月】

 https://kakuyomu.jp/works/16817330653207686428

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