8/17【土】晴れのち曇り―9日目―

朝目が覚めると早速、花の咲き具合をチェックした。


花の色は……『赤』だ。


色が赤なら良くないことはないだろうけど、ちょっとくすんだ赤色なのが引っかかる。


鮮やかさがないというかなんというか……。


まあどうなるかはこれからわかるか。


体調もバッチリだし、今日は2日ぶりに外に出よう。


* * *


朝ご飯を食べたあと、公園へ遊びに出かける。


大きめの公園で地面から噴水が噴き出て、暑い時期にうってつけのスポットだ。


途中にある河川敷を歩いていたときだった。


道の横の草むらから何かがキラキラと反射して、ボクの目に映った。


なんだろうとゴソゴソ草の中を探る。


するとそこには、金属製のロボットのキャラクターキーホルダーが付いた財布だった。


青色で縁が黒色の財布で、ボクと同じぐらいの子が良く持っているようなやつだ。


とりあえず交番に届けておこうと、公園とは逆方向に行こうとしたときだった。


道の向かい側から、右から左へキョロキョロと下を見ながら歩く人影が見えた。


通り過ぎようとしたとき不意にその人と目が合う。


「あれ?みのるくん?」

優斗ゆうとくんじゃん、なにしてるの?」


その子は同じクラスの学級委員長の高木優斗たかぎゆうとくんだった。


勉強ができていつもテストで90点以上取るし、責任感もあってスゴイ真面目な子だ。


「昨日財布落としちゃってさ。交番に行っても届いてなくって……」


ボクの質問にションボリしながら答え、優斗くんは深くため息をついた。


もしかしてと思い、さっき拾ったばかりの財布を差し出す。


「落とした財布ってこれ?」

「あ‼これだよこれ!良かった~、3日後に家族で旅行に行くからそれまでに見つけたかったんだ。本当にありがとう!」


優斗くんはボクの両手を掴み、ありがとうありがとうと何回もお礼を言った。


「なんかお礼をさせて欲しい。できる限りのことをするよ」

「そんな別にいいよ、たいしたことはしてな……」


お礼を丁重に断ろうかと思ったそのとき、“お願い”のことが頭をよぎる。


もしかして


「……ねぇ優斗くんは宿題終わった?」

「うん、日記以外は終業式のあとに終わらせたよ」


はや!さすが優等生……。


その話を聞き、これならいけるか?とボクは心の中でほくそ笑んだ。


「宿題写させてくれない?」


顔の前で手を合わせ、申し訳なさそうにボクはお願いを伝えた。すると、


「いや宿題は自分でやらなきゃだめだよ」と、ごもっともな言葉が返ってきた。


ここが“お願い”が叶うタイミングだと思っていたボクは、肩透かしをくらった。


(なんだよ~絶対写させてくれて宿題終わる流れだったじゃん……)


ボクが密かにがっかりしていると、


「じゃあさ、これから僕の家で勉強教えてあげるよ。そうすれば宿題もすぐ終わらせられるよ」

「え⁉でも、そんないきなりお邪魔しても悪いし、優斗くんの時間を奪っちゃうのもあれだし……」


優斗くんの突然の申し出にシドロモドロになって答える。


正直、宿題がやりたくないのでどうにか逃げられないか考えた。


「勉強するならウチのパパとママも大丈夫って言ってくれるよ。ほらほら遠慮しないで」


爽やかな笑顔でグイグイと来られたボクは思わず、


「……じゃあお願いします」


と勢いに負け了解した。


「さっきも言ったけど3日後に旅行に行くから、それまでに終わらせるよう一緒に頑張ろう!」

「……帰ってきてからでもいいよ?」

「夏休みの最終日近くまで帰ってこないから、今しかないんだ」

「……そう」


観念したボクは、宿題を終わらせることは望んでたけど望まない勉強合宿に参加することになったのだった―――



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る