第53話 ゲームの運営スタッフに物申す
「チョコさんとタビーさん。お二人ともモニター当選者ですね」
フムフムと手帳を見ているナマケモノ。首を伸ばして盗み見ると、手帳に見せかけてタブレット端末だったらしく、ペン先でスイスイ画面を動かしている。
「チョコさんが現在レベル32、タビーさんはレベル47。結構お二人で差がありますね。称号はどうなってます? アマチュア園芸家と……おおっ、ケット・シー愛好家ですか。なるほどなるほど」
メモメモ、とペンを動かしている。ナンパ男のナマケモノかと警戒してたら、ゲームの運営スタッフだったみたいだったから、そのままテーブルについて話をすることにしたけど。けっこう図々しい人だよね。ノリも軽いし。
「んじゃ、次の質問です。課金状況についてはどうですか?」
「……わたしはまだ一度もしてないです」
「ケット・シーのタマゴが欲しくて、一度だけ課金しました」
「ほうほう、タビーさんが一度だけ、っと。お二人はモニター当選者ってことで最初から10万コインありましたよね? もしそれがなかったらもっと課金してました?」
ちらりとタビーさんと視線を交わす。モニターやってるんだし、正直に答えたほうが良いよね。特典でもらった10万コイン分の貴重なユーザー意見を言おうじゃないの。
「課金する前にゲームやめてましたね」
「わたしもかな」
「だいたい初期投資でコイン消費させすぎですよ。コイン使わないと進行しないゲームなんて問題ありすぎ」
「そもそも全体的に説明不足なんですよね。最初はもっとゲームに慣れる時間が必要っていうか」
「チュートリアルしながらレベルもあがっていくほうが良いかな」
「ある程度慣れてから課金要素増やしたほうがいいですよ」
「10万コインでもお得感なかったですよねー」
「そうそう、すぐ減るし。それで増やし方がなかなかわからなくてね」
「結局、あれって市場に参加できるようになるまでコイン増やせませんよね?」
「課金なしだと参加レベルまで行くのも一苦労かと」
「ログイン特典のガチャ。あれなんです、景品しょうもなさすぎ」
「わたしは最近ガチャしてないなあ」
「そうなの? わたしなんてわずかばかりの希望を抱いてガチャし続けてますよ」
「あとあれ、ハリケーン。なんなんですか、最悪ですよ」
「そうそう、あんな鬼畜イベントいりませんって。対策わかった人はまぐれだと思うな。フツーわからないでしょ」
「あれで辞めちゃったプレイヤー多いと思いますよ」
「わかるー。全滅ですもんね」
ナマケモノが両手をあげる。降参ポーズのつもりかな。
「き、貴重なご意見、ありがとうございます」
「課金要素はある程度ゲームにならせてから、ココ重要でしょ」
「ハマるゲームだとは思うので」
「やり込み要素ハンパないし」
「幻獣はすごく良いです。ケットシー最高!」
「精霊ってあれ、どのプレイヤーにも絡んでくるもんですか? わたし、この間——」
「ハイッ」手をぴしゃっと打ち鳴らすナマケモノ。何? もう黙れって?
「お二人ともゲームを楽しんでいるようで何よりです。それでですね、今回、大型イベントを用意しておりまして」
ゴソゴソとショルダーバッグをさぐり、取り出したのは一枚のポスターだ。なんと憧れのペガサスとそれに騎乗している勇者っぽい人のイラストが描いてあった。
「幻獣フライングレース大会?」
どれどれ……。
「幻獣の飛行技術を競い合おう。優勝賞金は、——1000万コイン!!」
「どうです、興味ありますか?」
ぐふっと笑みを浮かべるナマケモノ。なんかムカつくな。
でも1000万コインは魅力的だ。
「2位だと500万コイン、3位でも100万コインを差し上げます。それに完走者全員に『幻獣ライダー』の称号が与えられるのです」
やーっ、と両手を上げるナマケモノ。幻獣ライダーの称号はどっちでもいいけど、3位でも100万コインか。ちょうどうちには鳥類系の幻獣がいることだし……。
「コレ、エントリーはどうやってするんですか?」
「チョコちゃんっ!?」
「タビーさん、話してませんでしたっけ。実はうちにはいずれ人を乗せて大空を飛ぶであろう幻獣がいるんです」
ヒッポグリフのヒッポちゃん。まだ人を乗せてどころか、空を飛んでいる姿すら見たことないけど、なんてったっけ、前半身は鷲なのだ。鳥類でも強そうなやつ。しかも後半身は馬! こんなのレースにピッタリでしょっ。
イケる、優勝は無理でも3位までなら可能性あるよね。
「チョコさん、エントリーですね。ではではこちらの画面にですねえ……」
ウインドウでポスターをスキャンするとエントリー画面が。よーし、参加参加、待ってろ、わたしの100万、いや夢はでっかく、優勝1000万コイン!!
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