第43話 ゲームの自宅でお泊りしよう

 ったく、ノームのおじいちゃんたら。

 結局オナラに関しては最後まで「ワシじゃないっ、違うったら!」と否定してたけど、あのあと、とっととお帰り願いましたっ。


 あーあ、今日は温泉入ろうと思ってたのになあ。オナラぶくぶく見てすぐだから、入る気が失せたっつぅの。


 しかーしっ。


「へへへっ、実は内風呂も完備してんだな」


 温泉施設の頭上をお空。つまり露天風呂。で、内風呂はジャングルをイメージして観葉植物をいっぱい飾ってある豪華風呂なのです。もちろん引いているお湯は温泉。モンステラが丸い湯舟を囲ってて、ポトスが天井にずらーっと伸びていて。南国っぽい花もいっぱい。ハイビスカスにプルメリアも咲いております。


「ヒッポちゃん、一緒にお風呂入ろー」


 誘うと「ほげー」と気の抜けた声ながら、蹄を鳴らし、かっぽかっぽ歩いて来るヒッポちゃん。そろそろ一緒にお風呂は厳しくなってきたサイズ感ですが、わしゃわしゃ洗ってやりたいので、気にせずGOです。


 前半身が鳥だからか、馬もそうなのか。


 ヒッポグリフのヒッポちゃんは水浴びが大好き。ほげー、ほげー、と喜んで湯舟に顎まで浸かります。その分、わたしは端っこでうずくまってたけど。この浴槽だとヒッポちゃんと入るとギュウギュウ。羽毛に潰されるかと思ったよね。


 んで。


「今日はお泊りするぞ!」

「ぴー」「くー」「しー!」

「ほげー」


 こぶしを突き上げて言うと、ピクシーとヒッポちゃんが応じてくれます。今日はゲームの中で寝起きしてみようと思ってまして。


 このゲーム、時間の流れはリアルと連動しているけど、太陽の位置は選択できて。つまり、夜にログインしても朝を選択していたら、ゲームの中は朝になっている。


 でも時間の流れは短縮されたりしないから、待機時間とかはそのままなんだけどね。たとえば、朝にログインしてすぐ何か設置し、待機時間が4時間だとして。即座にログアウトし、夜に設定してから再びログインしても、待機時間は4時間のままってこと。


 ちなみに季節も選択可能。これはレベル25くらいだったかな、その時からできるようになった機能だ。通常はリアルと連動。それを真夏にも真冬にも設定できる。でも、植物は真冬にヒマワリを植えても育つんだけどね。そこがゲームだよねー。まあ季節感出すために、植えるものを変更するのはプレイヤーの好み次第ってことかな。


 最近ではわたしもヒマワリやめてコスモス畑にしているのです。うっふふー♬


 ってわけで。


 いつもは夜にログインしても、朝や昼時間に設定して畑やら何やらで作業してたんだけど。今日は夜のままにしてゲームの中で寝ちゃうのです。

 なぜなら。


「ついに念願の王族ベッドを購入したからです!!」


 じゃっじゃっじゃっ、じゃーんっ。

 天蓋付きの巨大ベッド。ひだ飾りたっぷりの豪華ベッドカバー付き。

 お値段、8万コイン!!


 いやー、がんばりました。市場でせっせと商品を売り、コツコツ貯めて。ついについにですっ。

 これは実際に寝てみないともったいない。飾りじゃないのよベッドは!


「お前たちピクシーのおかげだよ。よく働いてくれました」


 日給を上げてあげたいけど、システムの都合上変更できなさそうなので。代わりに少しくらい収穫物を勝手に食べても許すことにします。常識の範囲内ですよ、いいですね?


「ぴー!」「くー!」「しーーーーーい!!」


 しーの常識の範囲内が少々恐ろしいですが、まあいいでしょう。

 今夜は気分が良いのです。


 さーて、フカフカ王族ベッドで、おやすみなさーい!

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