第42話 温泉でぼわんぼわん……ぶくぶく
「しーぃ、おーーい、しーーーーぃ!!」
孵らないケット・シーのタマゴの管理をしてもらおうと、ピクシーのしーを探してるんだけど。
「アイツ、どこいんのよ」
呼んでも来ないし。しーって普段は前屈みで両手スリスリしてこびへつらうのが癖になってるんだけど、実は裏があるんだよね。ニワトリのタマゴで巨大オムレツ作ってたのもあの子だし。
今もどっかでコソコソ悪さを……あっ、いた!
「こらっ、しーっ! あんたまた何しでかそうとしてんの」
温泉施設に向かう通路で、カゴにどっさり入った落花生を持って、ちょこちょこ歩いているしーを発見。声をかけるとびっくりしたのか、おわわって感じでカゴを落としそうになっている。
「しーっ、しーしー、しーっ」
何? 秘密にしろって??
「しーしし、しーっ!」
???
悪いけどあんたの台詞ってわかりにくいのよ。秘密主義者にしか聞こえない……、うーん、それで、なになに?
「しししっ、しーししっ」
えっ、そうなの!?
「ふぉっふぉっふぉっ。ピクシーさんや、ゆで落花生はまだですかなー?」
あの笑い声は……やっぱり!
「ノームのおじいちゃん、また温泉入りに来てたの?」
そりゃあ土地10ブロックと引き換えに「温泉入り放題パス」をあげたけどさあ。毎日くらい来てない? しかもわたしに声かけずに、しれっと来てピクシーこき使って、あいさつもなしに帰るよね?
「たまには手土産の一つでも持って来いっての。はーあ、土地10ブロックと交換じゃあ割に合わなかったかも」
「しーしし、しー!」
ハイハイ、疑って悪かったよ。あんたはノームおじいちゃんの接待してくれてたんだよね、ありがと。だけど何でもかんでもノームの言うこと聞く必要ないよ。温泉だけ入らせてあげたら、それで十分だよ。
「ピクシーさん、おビールのほうもくだ——」
「うち、飲酒禁止ですから」
バッサリかぶせて断言します。ただでさえ鬱陶しい(本音)のに、酔っ払いの世話までしたくありませんっ。
それより孵らないタマゴだよ。
ノームのおじいちゃん、何か役に立つ情報持ってるかな?
「このタマゴ、ケット・シーなんですけど、全然変化なくて」
「ビールをくれたら」
「ああ?」
「おたく、麦植えてるのに生産してないの?」
「してませんけど?」
それよりタマゴだって。孵らない理由わかる?
「どれ、ちょっと見てみようか」
両手を出すので、孵卵器からタマゴを取り出して渡す。すると、ノームのおじいちゃん、軽く振った後、耳を当ててフムフム。
「もしかして中身からっぽ?」
「どーれどれ、フムフム、ほほーう。ちゃんと生きとるよ。でも、まだまだ生まれてくる気はないみたいじゃ」
そーなんだ。って、ホントかな? 適当に言ってない?
「お嬢ちゃん、なぜそう疑うのよ。ほんとじゃて。わしノームよ」
「たまに胡散臭いからなあ」
「ヒドイ。わし、土の精霊なのに」
ぼわん、ぼわん……
ぶくぶく、ぼわん、ぼわん……
え、今、温泉で大きな気泡が浮かんで弾けたような。
まさか……。
「ノームのおじいちゃん。今、オナラしました?」
「エッ」
しーも鼻摘まんでる。わたしも摘まも。
「やめてくださいよ。レディの前でぇ」
いくらおじいちゃんだからって失礼すぎまっす!
鼻声で非難すると、ノームのおじいちゃんは「ちがうちがう、わし、オナラなんてしとらんわいっ」と顔を真っ赤にして否定している。あやしー。まあ、うっかり出て恥ずかしくなったのかな。一回くらいなら——
ぼわん、ぼわん……
ぶくぶく、ぼわんぼわん……
「ちょっとー!!」
このタイミングでするっ!?
嫌がらせですかっ。もー、温泉禁止です!!
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