第13話 地の精霊ノーム現る
最初、巨大なテントウムシが現れたのかと思った。
赤くて丸っこいフォルム。大きさは一メートルくらいある。
「お嬢ちゃん、こっちきて話そうやあ。花も咲いて、ええ畑やなあ」
……なんじゃ、あの物体は?
ピロンッ♬
【地の精霊ノームに話しかけられました】
ノーム? 聞いたことある。精霊なんだ。
とりあえず謎の巨大テントウムシではないみたい。「なあなあお嬢ちゃあん」と気安く声かけてくる態度が不信感をもよおすけど。
「あのー、なんですか?」
精霊だというので丁寧に話しかけてみる。
近づいてみてわかったけど、赤いのは咲がペタンと倒れている三角帽子で、その下はモジャモジャの白い髭がたっぷり生えているお爺さんだ。帽子に隠れているのか、それとも髭なのか。目が全然見えてないし、口も髭で隠れていて見えない。で、全体が丸い。二頭身なんかな。手にはてっぺんにキノコが生えた節くれだった杖を持っている。
「お嬢ちゃん、上手に畑やっとるねー、がんばってるねー」
「はあまあ。ぼちぼちと。ありがとうございます」
ペコとお辞儀すると、ふぉっふぉっと笑っている。
「そんなお嬢ちゃんに良い話、持ってきてあげた」
良い話? 詐欺か。
「土地、欲しくない?」
「えーと、くれるなら」
システムのアナウンスがあったからゲームキャラだろう。地の精霊だっていうし、もしかしたら土地を……。
「あげようか?」
「ください!」
何コインでしょか!!
がっつくとノームのおじいちゃんはふぉっふぉっと笑う。
「今回は初回サービスで無料じゃよ。ほーらよっ」
木の杖で地面をドンと突く。
ピロンッ♬
【ノームから土地を受け取りました。どの方向に敷地を拡げますか?】
ウインドウ画面に俯瞰図の表示が出る。周囲四後方で好きな場所を自分の土地にできるようだ。左側に増やすよう決定すると、でんっ、と音がして敷地が今までの倍に広がった。
「おおっ、ありがとうございます!」
お礼を言うと、ノームは「引き続きがんばってちょうだい」とふぉっふぉっ笑いながら去ろうとする。
「あ、あの。また土地を広げたくなったらどうしたら——」
「気が向いたらまた見学さしてもらいますからねー」
で、ポンッと弾けるように消えてしまった。
「ゲームの進み具合で登場するキャラなのかな」
どうせなら、もっとドーンっと一気に土地を増やしたかったけど。
「でも倍になった。しかも今回は家の敷地がない分、全部、畑に出来る!」
というわけで、気になったまま土地が足りなくてクリアできていなかったクエスト【田んぼを設置しよう】を試みる。
ピロンッ♬
【田んぼを設置しました】
【クエストクリア】
【経験値がアップします】
【レベルアップ】
【レベル9になりました】
やったー! あと少しで二桁のレベルになる。ここまで長かったなあ。
しっかし。
「田んぼ、広っ」
新しく入手した土地の半分が田んぼになってしまった。
ピロンッ♬
【クエスト:稲を植えよう】
ハイハイ、稲ね、えーと……田んぼには水を張らないといけないよね。
今あるアイテムってジョウロだけ。ジョウロでこの田んぼいっぱいに水を張るなんて無理!
【ホースを購入しますか?】
買いますっ、800コイン、お支払いだあ!
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