第11話 キッチンで働く妖精を雇う

  ピロンッ♬


【キッチンが完成しました】

【経験値がアップします】


 わーい、待機時間24時間経過して、ついにキッチンが我が家に!

 どれどれ……おぉ、なかなか良きですぞ。


 温かみのあるイエローの壁紙、腰板と窓枠は白。タマゴみたいな色合いだな。

 で、装備も標準でいろいろ揃っている。


 コンロでしょ、流し台に調理スペース、小さいテーブルの食卓もあるし、椅子も一脚だけど丸っこいのが置いてある。家電もしっかり。

 2ドアの冷蔵庫にトースター、ジューサーに——おやっ! アレは備え付けのオーブンかな。立派ぁ。食器棚もあって中にはシンプルな皿やグラスが並べてある。


 ウインドウを確認するとコインを消費したらまたいろいろ模様替えできるようだ。でもまあこの状態で十分かな。椅子に腰かけ、あたりを見回す。水、でるかな。グラスを食器棚から出して水道をひねるとちゃんと透明な水が出た。


 コインの消費は……ないね。通知ナシ。ってことは水は飲み放題だな。

 なーんて思ってると。


 ピロンッ♬

 

 ヒッ! やっぱり水道代払う仕組み??


【キッチンで働きたがっている妖精がいます。雇いますか?】


 え、妖精? なになに、しもべ妖精でもいるの?

 とりあえず、イエスっと。

 すると……。


 ぼわんっと小さい煙が出現。それがかき消えると。


【捕獲したピクシーが良いピクシーとして家事を手伝います】

【経験値がアップします】

【ピクシーを雇うと毎日50コインが消費されます】

【ピクシーを雇うと毎日経験値が3割増します】


 出現したのは、あの畑をめちゃくちゃにしたイタズラ妖精ピクシーだ。赤毛に緑のとんがり帽子。そいつらが三匹、ヘラヘラとこっちを見上げてくる。


「雇う妖精ってあんたらなの?」


 イタズラ妖精を捕獲して家事労働に雇うとな? しかも日給50コインなんだ。三匹でその値段は安いような気が……まあいいか。


「あんたたち、ちゃんと働けるの? 畑みたいに、このキッチンもめちゃくちゃにするんじゃないでしょうねぇ」


 厳しく腰に手を当て威圧してみると、ピクシーたちは「ギャイッ」と起立の姿勢を取る。このピクシーたち、フリフリの白いエプロンを装着していた。で、胸にアルファベットのアップリケ。PとKとCだ。


「ぴー」と左端の一匹が鳴く。敬礼にポーズ。

「くー」と真ん中。忠誠ってかんじで胸に手を当てる。

「しー」と右。コイツはなんかゴマするように手をスリスリさせている。


「……もしかして、それが名前?」

「キーッ」と三匹。


 名前かあ。でもエプロン取ると区別つかないんだけど。三匹とも目がギョロギョロデカくてブタ鼻、口は目尻まで裂けてて牙もある。こわー。全然可愛くない。


 でも。


「ぴー」「くー」「しー!」


 働く気満々らしい。敬礼に忠誠にゴマすりポーズ。

 まあ毎日50コイン消費だけど経験値が割り増しになるらしいし、しばらく様子見るかなあ。

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