第三幕 第一場 仲間との絆
ゼファは、ピッピが突然言葉を話せるようになったことに驚きながらも、どこか嬉しさが込み上げてきた。「ピッピを喋れるようにするなんて、ゼフュロスさまはすごいや。ちょっとうるさいけど」
「ゼファどの、うるさいとはなんですか。私はゼファどのと風の国のために力を尽くしておるのですぞ」と、ピッピは少しふくれっ面で応える。
その様子を見て、ゼフュロスは微笑んだ。「われは風の国に向かうぞ。闇の軍勢と戦わねばならぬ。ゼファ、そなたはどうにかして闇の神殿へ赴き、闇の神と対峙し、そして勝たねばならぬ」
ゼファはその言葉に力強く頷いたが、すぐに不安が頭をよぎる。「たしかにそれはそうなんだけど、戦力が足りなくない?」
ピッピが小さく咳払いをしてから言った。「……助力できるものなら、あてが一人おります。ここから離れた村落に隠遁しておる戦士で、エリナという者です」
その言葉に従い、ゼファたちは麓の村落へと向かった。村には盗賊たちが現れ、エリナが彼らを撃退しているという噂を耳にしていた。
村に到着したゼファたちは、エリナを見つけ出し、協力を依頼した。ゼファは自分の気持ちをそのままぶつけた。
「エリナさん、私たちは風の国を守るために、勝つ力が必要です。どうか力を貸してください!」
エリナはゼファの言葉に驚き、少し迷いの表情を浮かべた。彼の言葉は若さゆえの直感的なものであり、その率直さがかえって彼女の心を揺さぶった。
エリナはゼファたちの状況を理解しながらも、どうすべきか悩んでいた。そのとき、ピッピが前に出て静かに話しかけた。
「……エリナどの。ゼファどのにはあなたの力が必要なのです」
ピッピの声を聞いた瞬間、エリナは目を見開いた。彼女の昔の仲間であるピッピが、今や小鳥の姿で目の前にいる。その姿に驚きと戸惑いが交錯する。
「ピッピ、そんな姿になってもあなたは人に尽くそうというのか……」
エリナの心は複雑だったが、ピッピの強い意志を感じ取り、彼らを助ける決意を新たにした。その決断には、過去の罪を償おうとする気持ちも含まれていた。
しかし、その時、村が盗賊団の襲撃を受けた。ゼファたちは急いで村を守るために動いたが、今戦えるのはゼファしかいない。
ゼファは風の護符を手に取り、風を呼び起こした。「この風を使えば、どんな敵だって吹き飛ばせる!エリナさん、見ててください!」
ゼファの風は村を包み込み、盗賊たちを吹き飛ばす。彼の動きは大胆で、その力はエリナを驚かせた。
「すごい…この少年、思っていた以上の力を持っているわ。」エリナは呟いた。
ゼファは風に乗り、高く跳躍して敵に突撃する。その動きは無謀に見えたが、風の力とゼファの身体能力が見事に調和し、敵を圧倒した。
彼の行動はまさに風の子そのものであり、その無鉄砲さと勇気は他者を動かす力を持っていた。
エリナはその光景を見つめ、ついに決断した。「あなたたちの決意は本物ですね。わたしも力を貸しましょう。」
ゼファの直感的で素直な行動は、時に突飛に見えるが、それが彼の持ち味であり、仲間の心を動かす力でもあった。
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