川端康成文学賞作品全作解剖

龍姫

はじめに

 日本には200を超える文学賞が存在する。新たな作家を発掘するための公募新人賞。既成作家の既存の作品から優れたものを拾い上げる文学賞。大手出版社などが主催となって大々的に執り行われる文学賞。地方で募集される小規模な文学賞。ジャンルに囚われないものや、特定のジャンルに特化したものなど、実に多くの文学賞が存在する。

 そんな森羅万象の中から、私が拾い上げたのが、「川端康成文学賞」である。本賞の創設に至った経緯は以下のようだ。賞にも名を冠する川端康成が逝去した1972年に、井上靖を理事として、財団法人川端康成記念会が設立される。翌年には「川端康成文学賞」の創設が決定された。

 本作の審査の対象となるのは、その年度に於ける最も完成度の高い短篇小説である(基本的に選出されるのは純文学)。執筆キャリアは一切問わず、長年の執筆経験を持つベテランや、まだ文壇に登場して間もない新人が受賞することがある。選考委員が受賞するケースや、複数回受賞するケースなどもあり、作者よりも作品そのものを評価していることが窺われる。

 本賞は2度の休止期間があり、この期間を区切りとして、1期、2期、3期と分けられている。本作ではそれに従い章立てをする。

 それでは、ここから1作ずつ見ていくとしよう。

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