第33話 急がなければならない解散理由?

 現在、総理はまだ岸部だ。予算案、与野党討論を経て、国民が判断できる中で解散総選挙するべきだ。石庭は総裁選時にも早急の解散には賛同していなかった。憲法第69条にあるように予算や国の行方を左右する内閣の重要法案が否決されたり審議未了になったときに行うものであり、議席を増やすために行うものではないという考えの持ち主だった。それが、総裁選に勝った途端、衆議院解散・総選挙を打ち出した。猫の目政権だと揶揄するのは簡単だが、議席を多く望みたいのは必須。しかし、それは国民の支持を得て人気の波に乗り、勝ち取れるもの。ご祝儀相場のある株価が急落する「石庭ショック」の中、自ら進んでちゃぶ台返しに移行するのは摩訶不思議。各党が明らかにした公約や政策とは異なる重要な案件が登場し、国民の判断を求める必要が生じた場合のみ解散できるとした第7条を用いて解散できる。元安部首相はこれを用いて民主党を分裂させ、自民党は6連勝を達成した。しかし、各党の違いが明確になっていない現在、国民の判断は、石破政権の是か非が問われるものになる危険性が多い。自らが短命政権の道を選ぶ理由が見当たらない。気になるのは組閣人事に安部派がいないことだ。打診はしたが固辞されている。寧ろ、故安部氏を国賊と呼び処罰された者や日朝議連会長を起用している。これでは、自民党を支持していた者からも反感を買うことは必須だ。

 副総理に菅野が起用されたが、霊魂が抜かれたような様子に何かしらの不安要素が感じられる。解散を急がなければならない理由が菅野を追い込んでいるのではとも受け止められる。政権が倒れる最も大きな爆弾はスキャンダルだ。現総理の岸部は知っていたが党内野党の石庭は知らなかった。総裁になって初めて聞かされ、待ったなしの道を選ばざるを得なかったのではないだろうか。安部派の議員起用に消極的だったのは特捜部の獲物がそこにあるからではないのか。単なる申告漏れ以上の汚職や失態があるからではないのだろうか。

 慌てなければならない理由は、捜査が煮詰まっており、いつでも動ける状態にあるのを選挙で伸ばし、早くて年内、遅くても検察人事の入れ替えがある三月まで遅らせたい思惑があるのではないか。麻僧さんが写真撮影を断ったのも犬猿の関係もあるだろうが火の粉を被らないための行動だったのでないだろうか。

 政権を揺るがすスキャンダルが本当にあるのか。そのネタを週刊誌が暴露してしまうのか。総選挙の行く末以外にもきな臭さが気になる早期解散だ。

 

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