バイト先の金髪ハーフ女子大生が至高の焼肉で俺を昇天させて異世界にお持ち帰りしようとしてくる

北原黒愁

第1皿 ヒントは……先輩が、大好きな『アレ』です

※ASMR形式。女子大学生・竜宮ネムの独り語りで話が進みます



「あ、あのっ、先輩! 昨日はバイト、変わってくださってありがとうございましたっ!」


(焼肉屋。開店前準備の慌ただしい音)


「それでその…… もし、よかったらなんですけど…… 今日のバイト終わりに、お礼、させてもらってもいいですか……?」


「あっ、大丈夫ですよ! 私も今日、閉店までなんで。先輩と上がり時間、一緒です!」


「……って、ちちちち違いますよ! いつも先輩のシフトをチェックしてるワケじゃなくて! 今日はお礼がしたかったから、たまたま知ってただけです!」


「もう、からかわないでください…… え、お礼がなにかって?」


「えっとそれは…… 見てのお楽しみ、ということで…… え、ヒント?」


「う、そうですね。じゃあ1つだけ。先輩ちょっとかがんで、耳、貸してください」


(はあ、と耳元で息が漏れる音)




「ヒントは…… 先輩が、大好きな『アレ』です」




「~~~~ッ!! あぁ、もう、これ以上はダメ! 私が耐えられなくなっちゃう……!」


(店長から開店を告げる声)


「あ、ハーイ! じゃあ、先輩。私はホールに接客に行きますから。くれぐれも、今日の夜のこと、忘れないでくださいね?」


「あ、ちょっと待ってください」


(しゅるりと衣擦れの音)


「先輩、エプロンの紐、解けてましたよ? いっつも結び忘れてる。もう、うっかりさんなんだから」


「それでは、また後ほど! 今日もお仕事、がんばりましょうね!」




(客で騒めく店内。焼肉の焼ける音。香ばしい匂い。ダダダダと誰かが走る足音)


「あわわわ、先輩大変です! 未予約の社会人ラグビー団体100名が来店! 食べ放題の注文きちゃいましたぁぁ!!」


「ファーストオーダー、タン塩100人前、カルビ200人前、上ロース500人前なんですけど、キッチンいけますか!?」


「ううう、さすが先輩……! 頼もしすぎて、お顔がシャトーブリアンに見えますぅ! それでは私はこれから、ビール大ジョッキ100人前、いれてきますので!」



(ビールサーバでビールを注ぐ音)


「あわ、あわ、あわっと。うん、ふわふわの泡が美味しそう。あぁ、先輩に私の注いだビール、飲んでもらいたいなぁ…… それで、こう言うの」


「先輩ったら、お口の周りに泡のおひげができてますよ? 私が拭いてあげましょうか? この唇で。なんちゃって。きゃーー!」


(ビールを催促する客の声)


「あ、いけないお仕事中だった。はーい! 乾杯ですよね! いま、お出ししまーす……って、キャーーーー!?」


(ドンガラがっしゃんとけたたましい音)


「ああああ! ビールが! ジョッキが! 大変なことにーー!!」


「お客様っ、大変申し訳ございません! お怪我はありませんでしたか!? え、私の服ですか?」


「…………」


「きゃあああ!! ビールでずぶ濡れで、し、し、下着が透けて……!」


「やだっ、見ないでください! あ、誰ですか、今触ったの!?」 


「へ、へんたい! やめてくださ…… あ、先輩……?」


「す、すみません、ありがとうございます…… 私、従業員室で着替えてきますね……」




(トテトテと歩く音。扉が開き、閉じる)


「はあ…… 私って、ほんとどうしてこう、ダメなんだろう……」


「先輩も、きっと呆れちゃったよね。こんな迷惑ばっかりかける、後輩じゃあ……」


「今日は、大切な日だったのに。髪も、肌も、下着だって、念入りに準備してきたのに」


「やっぱり私には、無理なのかな…… でも、でも……!」


「先輩のことを諦めるのは、もっと無理……!!」


「やっぱり、今日、言おう。勇気を出して、私の正体を明かして、そして……」





「私と一緒に、異世界に来てもらえませんか、って伝えよう」

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