第11話

「うちで作っている製品の約7割はオークポリマーに納品しているんだよ」


「え?そうなの?」


「あのね四季………まぁ、入社したばかりだし、分からなくても仕方がないけど」


「ごめんなさい」


丸和電機は主に国内主要メーカーのカーナビの部品を製造している。


CEOというのが執行役員だということも初めて知った。


「きよちゃん、たもくんが業界で超有名人ってさっき言ってたでしょう。あれって……」


「う~ん、実は私もよく分からないんだ。あのルックスだし、お金持ちだし、女性関係が派手とかじゃないの?」


そんなことを話していたら、品質管理課の武田課長に声を掛けられた。


「悪いけどこれ須釜製作所にFAXしておいて。長澤、ラインのおばちゃん達がお前の話で盛り上がっていたぞ。外車でかなりのイケメンに送られてきたって。いいなぁ~若いって~」


笑顔で書類を受け取ったものの表情はかなりひきつっていたと思う。

これからラインに行くのに。

どんな顔でパートのおばちゃん達に会えばいいのか分からない。

絶対冷やかされる。

そして根掘り葉掘り聞かれる。

それを思うと胃が痛くなってきた。


そして、その日の夕方。

納品された成型材の数を確認するため納品書を手にきよちゃんと倉庫にいたら、

「……四季くん……ねぇちょっと……」


同じ事務の長谷川さんに小声で話し掛けられた。


「どうかしましたか?」

「迎えに来てるよ」

「迎えって?」

「だから朝宮さん」

「嘘……」

「嘘ついてどうするの」


どうしていいか分からなくてきよちゃんに助けを求めた。

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