あなたの隣ではじめての恋を知る

彩矢

第1話


すぐに止むかと思った雨はなかなか止まず、仕方なく、傘もないままアパートまで急いで帰ることにした。どこかのお店に入るお金もなかったし、就職したばかりで疲れて眠くて、とにかく早く帰りたかった。


でも、ゴロゴロと雷の音が聞こえてきて、アパートまであと少しというところで雨宿りをすることにした。車椅子に雷が落ちたらそれこそ命に関わる。


たまたま目についた、マンションの駐車場に入り、そこで雨脚が弱くなるのを待っていたら、シルバーの見るかに高そうな車が静かに入ってきた。


マンションの住人じゃないのがバレたら、不法侵入で警察に通報されるかも知れない。


駐車場から慌てて出ようとしたら、


「おい、きみ」


その車の運転手から声を掛けられた。


「ご、ごめんなさい。勝手に入ったことお詫びします。悪いとは思ったんですが・・・・・・」


緊張しすぎて呂律がうまく回らなかった。


「外は酷い雷雨だ。誰もきみを咎めないよ。きみさえ良かったら・・・・だが、雨が止むまでうちで雨宿りすればいい」


「で、でも・・・・・・」


見ず知らずの人についていっちゃ駄目って社長さんと園長先生が言ってたもの。


断ろうとしたら名刺をぽんと渡された。そこには【株式会社オークポリマーCEO朝宮和真】って書いてあった。オークポリマー・・・・・あれ、どこかで聞いたことがあるような。

ダメだ、頭が回らなくて思い出せない。

COE・・・・・・って何?聞き慣れない横文字に首を傾げていたら、よほど面白かったみたいでくすくすと笑われてしまった。


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