私の実家
渉
私の実家
私の実家は不思議な事が頻回に起こる場所でした。
玄関の天井には、女の人が倒れたあとのようなシミがついており、鏡に私の顔ではなくおかっぱ頭の女の子がにたりと笑っている顔が映ったり…それ以外には皿が勝手に動く音や襖のシミが動いたりなどなどいろいろな事が起こる家でした。
私が幼い頃は、家族でない低い声の誰かに名前を呼ばれたり、首や足を力いっぱい掴まれ、死にそうな思いをすることもありました。
それはある程度大きくなってからも続きました。
今から話す話しは、私が小学生中学年になってからの話です。
私は、お風呂から上がったあといつものように母の鏡台へ向かい髪を乾かしていました。
ふと鏡の端に青白い光を感じました。私は鏡越しに光る物体を確認するために、光る方へゆっくりと目を動かしました。
私はゾッとしました。
光っていたのは着物を着た女性の形をした真っ白な置物だったからです。
私は、急いで髪を乾かした後、置物の実態を確認するべく鏡台から離れ、置物の方へ歩きました。
近づくたびにザワザワゾワゾワと嫌な緊張感に苛まれていきました。
私は、やっとの思いで置物に近づきました。
置物は、小窓の縁に置かれていました。
ぽーっと淡く青白く光る置物。
窓から月明かりが入ってきたのかと思い、窓をみますが、真っ暗でした。
しかも、小窓のとなりはすぐ壁になっている場所だったため、太陽もあまり入らない場所でした。
私は、これはおかしいと思い、急いで母へ話に行きました。
母は、陶器の置物は光らないと言ったあと
「まぁ。光るだけで何もしないんでしょ?ほっときなさい。」
と言いました。
私は、あんまりにもあっさりな母にびっくりしながらも、今度は兄弟へ話しました。
いつもは怖がる兄弟ですが、今回は、見に行くと話し、兄弟みんなで見に行くことにしました。
心臓がバクバクとなるのを抑えながらも光る置物の場所へ向かいました。そんなに広くない家がとてつもなく広く感じました。
やっと置物のある場所へたどり着きました。
暗がりの中。ぽーっと淡く青白く怪しく光る置物を見て兄弟は…
「わぁー!ひかってるー!」
「なんで?すげーー!」
「ほかの色に光らないのかな?」
などなど怖さよりも光るかっこよさに惹かれているようでした。
その様子を見て私は、何か心のゾワゾワが軽減されたような。ここに来るまでの怖さはどこかに行ってしまったような心地になり、その日以降、光る置物が光るたびに兄弟たちと一緒にちょっかいをかけるようになりました。
光る日はわいわいとはやしたて。
光らない日は、なぜ光らないんだ。どうして。と質問攻めにしたこともありました。
元気がないのかもしれない。とこっそり陶器の置物を持ち出し太陽に当てるなどしていました。
ですが、光らない日が続きました。
太陽に当てても光らない。
日の当たらない場所に置いても光らない。
夜も光らない。
私は、置物にちょっかいをかけすぎて置物が怒ってしまったと考えました。
どうしよう。どうしよう。と考えていたある日の昼過ぎ。
その日は学校も休みで友達と遊ぶ予定もなかったため、自室で昼寝をしていました。
昼寝から覚め、お菓子でも食べようとキッチンへ行こうと考え、自室をでました。
陶器の置物の様子も気になり見に行くと、置物が小窓の縁からなくなっていました。
私は慌てて母に陶器の置物がなくなっていることを伝えました。
母はまたあっさりと
「捨てたよ。」
と答えました。
私は、目を丸くしながら母をみました。嘘だ。とも考えましたが、部屋にあるゴミ箱を開けて確認しました。
ですが、中には何も入っていませんでした。
どこだどこだと探していると、外に一つ袋が置いてありました。
私は急いでスリッパを履き、見に行きました。
そこには木っ端微塵になった陶器の置物が入った袋がありました。
欠片の一つに着物の模様が入っていた為、気づく事ができました。
私は、優しく袋を触り、何故か悲しい気持ちになっていました。
母いわく、処分する際にかさばるからとの事でした。
怪しく光る陶器の置物は二重に袋に入れられ、危険物として燃えないゴミの日に回収されました。
その後も、食器が落ちる音(実際は落ちていない)や、窓に何かの影が映るなどありましたが。
母が
「うるさい!」
と音の方へ言うと不思議と音がしなくなったり、
母のいる時は、不思議なこと等が起こらなくなったりと逆不思議のような事が起こるようになりました。
母にどうしてか聞くと
「幽霊なんて見えないんだから悪さをしなければほっとけばいい。悪さをするならそん時は。」
と言われました。
現在は、私達も実家をでてしまい、今もあるかはわかりません。
たまに実家に帰って密かに不思議な事が起こったスポットを巡って何か起きないかな?など見て回っています。
ですが今のところ以前のように起こる事はないようです。
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