第13話:訪ねてきたエルフ。

ある日のこと。

その日は土曜日で天気君も大学は休みだった。

だから、朝からマンションでアンブレラとまったり過ごしていた。


するとドアホンが鳴って誰かが訪ねてきた。


宅配便か、はたまた友達か・・・母ちゃんはこの間来たから違うかなって

天気君」は思った。

宅配もきっと違う、最近通販で買ったものもないし・・・


だとしたら、やっぱり大学の友人かな?って天気君は思った。


で、彼はろくに覗き穴で外にいるであろう人物を確かめもしないでドアを開けた。


すると、そこに奇妙な格好をしたひとりの青年が立っていた。

黒髪の長髪で、なかなかのイケメン。

右手に杖のようなものを持っていてマントなんか羽織っていて、しかも

アンブレラと同じで耳が尖っていた。


エルフだって天気君はすぐ思った。


「おはようございます、私はレインストームと申すものです」


「レインストームさん?」


「はい・・・つかぬ事をお聞きしますが、こちらにアンブレラと言う

エルフがお邪魔してませんか? 」


「アンブレラ?」


「あ〜失礼ですけど、あなたアンブレラにどんな用ですか?」


「私はアンブレラと同郷に暮らす、エルフの魔法使いです」


「同郷?・・・」


「アンブレラを迎えに来ました」


レインストームと名乗ったその男の言葉は天気君を、この上なく動揺させた。

アンブレラを、迎えにだって・・・。


「どうしたの?天気君?」


玄関に行ったまま戻ってこない天気君を心配してアンブレラが様子を見に来た。


そして玄関にいる男を見て、絶句した。


「レインストーム・・・どうして?、え、あなた、なにしてるの?」

「それにどうしてここが分かったの?」


「アンブレラ、ここで立ち話もなんだから、お客さんにリビングまで

上がってもらったら? 」


「あ、そうね」

「レインストーム、上がって」


「では、失礼して、お邪魔します」


レインストームは軽くお辞儀をして遠慮がちにリビングに移動した。

レインストームの話ではこうだった。


薬の調合に失敗して行方不明になったアンブレラを学校でも放ったままに

するわけにはいかないと言うので、父兄や学校の先生、

生徒みんなしてアンブレラの行方を探すことになったらしい。


まずアンブレラが今どこにいるのか、生きているか?

探す手立てがない・・・そこでアンブレラの同級生でイトコのレインストームが

代表して遠路エルフの里まで行って、思い描いたものがなんでも映せるって

言う魔法の鏡を借りてアンブレラの行方を捜したらしい。


で、アンブレラが人間の世界にいることは分かったんだけど行く先は次元を

超えた彼方・・・さて時空を超なければアンブレラのところにはいけない。


そこで、レインストームは時空を自在に超えることが出来るって言う月に住む

精霊プルヴォワールのとこまで行ってようやく彼女の力を借りて人間界に

たどり着いたらしい。


「そういうことで、こうしてアンブレラに会えました」

「アンブレラ、私と一緒にエルフの里に帰りましょう」


「大変だったわね、レインストーム」

「私のためにごめんね」


天気君は、思った・・・もしかして、この魔法使いの彼がまじな話で

アンブレラの彼氏・・・恋人じゃないかって・・・。

アンブレラは彼氏なんかいない・・・冗談だよって言ったけど本当は冗談なんか

じゃなかったんじゃないかって・・・。


「僕もアンブレラを探すのを一時は諦めようかと思いましたががんばって

よかったです・・・」

「これで、故郷で待ってるみんなが安心するでしょう」


「やはりエルフはエルフの世界で暮らすのが自然です、それが普通です 」

「人間の世界にいてはいけません」

「だから僕と一緒に帰りましょう」


「そちらの方、アンブレラがお世話になりました」

「お世話になったお礼は今ここではできませんが心から感謝しています、

ありがとうございました」


レインストームは深々と頭を下げた。


「あ、いや、僕はなにもしてないです・・・コスプレイベントで路頭に迷ってた

彼女を助けただけです・・・けど・・・」


「待って、レインストーム・・・」

「苦労してせっかく私を迎えに来てくれたのは感謝だし嬉しいけど」

「私は・・・私はもう故郷には帰らない・・・」

「人間の世界で愛する人が、愛しい人ができたから・・・」


アンブレラの愛しい人・・・それはまぎれもな天気君だった。


つづくかも。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る