第11話:一番確実なのはアンちゃんの耳。

しばらして天気君が、あわててマンションに帰ってきた。


「ただいま〜」


「おかえり〜・・・アンブレラと母ちゃんが、ほぼ同時にハモった。


「母ちゃん・・・これにはさ・・・」


「アンちゃんから大体のことは聞いたわ」

「にわかには信じがたいことだけど嘘ついてるようには見えないし」

「もし天気とアンちゃんが申し合わせて作った話にしてはよくできた話だしね」


「それにまあ、一番確実な証拠はアンちゃんの耳ね」

「引っ張らせてもらったけど取れないのよ・・・ちゃんとくっついてるのね」

「付け耳じゃないみたいだし信じるしかないでしょ」


「アンちゃん?・・・アンちゃんって、もうそこまで呼ぶくらいフレンドリー

な関係になってんの?」


「そうよ、あたりまえでしょ・・・私こう見えても順応性高いのよ」

「でもアンちゃんはいい子ね〜」

「私のこと驚きもしないで、ちゃんと事情を丁寧に優しく説明してくれて、

思いやりもあって・・・」

「天気の彼女にしておくには、もったいない子だわ 」


「それはまあ、僕も思うけど・・・」


「お母さんとってもアンちゃん気に入っちゃった 」

「あんた、アンちゃんのフラれないよう、ちゃんとしなさいよ」

「私、次にまた来るのが楽しみだわ」


「アンちゃん・・・故郷のお話とかまた聞かせてね・・・」


「はい、お母様と仲良くなれてよかったです」


(なるべく彼女に故郷のこと思い出させるなよ・・・彼女が故郷に帰り

たいって思いを増幅させるようなことはするな)


なんとなくその思いを察したアンブレラは天気君を見て苦笑いた。


「さ、私は帰るわ・・・」

「アンちゃんが全部やっててくれてたから掃除も洗濯もなんにもすることなかった

しね・・・」


そう言って、もろもろ納得した母ちゃんは喋りたい放題でぎやかに帰って行った。


「あ〜うっとい・・・来るなら来るって前もって連絡よこせっつうの 」


「お母様にそんなこと言っちゃだめだよ」


「理解があって素敵なお母様ね・・・私も故郷が恋しくなっちゃった」


「ええ・・・うそ、帰りたいの?」


「そりゃ帰れるなら・・・」


「そうか・・・そうだよね・・・ごめんね、こんなところに君を閉じ込め

ちゃって・・・」


「何言ってるの・・・私感謝してるんだよ」


「たしかに帰りたいって思うときはあるよ、だけど私は天気君と生きてく

って決めたから・・・。


「うん、嬉しい・・・僕も君にいて欲しい」


その反面、天気君はアンブレラを元の世界に帰してあげたいとも思っていた。

いて欲しいという気持ちと帰してあげたいって気持ち・・・、天気君は

めちゃくちゃ複雑な心情だった。


もしアンブレラが自分の故郷に帰れるようになったとしたら、俺もいっそ

この世界を捨てて彼女の住んでた世界に一緒に移住してもいいかな・・・

とも思ったりした・・・もう天気君はアンブレらなしじゃ生きていけなく

なっていた。


つづくかも。



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