異世界戦国伝
沙羅双樹の花
第1話
一番苦しい死に方は溺死だと何処かで聞いた事がある。
と言っても、何処かの漫画だかに載っていた話で信憑性は定かではないし、何となくイメージしやすいから記憶に残っているというだけの話だった。
少なくとも、さっきまでは。
今は違う。
現在進行形で、その苦しさをこの身を持って味わう羽目になっている。
(やばい!死ぬ!!)
辺りは暗い水の中、光指す水面に向かって、必死にもがく。
しかし、身体は浮上するどころか、鉛でも付けられたようにどんどん海の底へと沈んでいく。
何が起きているのかは分からない。
友達と海で遊んでいる時、足に何か巻きついたかと思えば、勢いよく水中に引きずり込まれたのだ。
(・・・・・くそっ、やっぱり気づいてないか。)
友達が気付いて助けてくれることにも期待したが、可能性は低い。
実は静かに溺れる事は意外に多い。
状況を理解出来ていないが故の溺水反応などもそうだが、必死にもがいていても、俺のように水面の中で手足を動かしていれば、派手な音も鳴らないし、視覚的にも分かりにくいからだ。
だからこそ、人と一緒にいても、溺れている事に気付けないという事が起こる。
海と近い地域に住んでいる俺は学校の授業でその事を習っていた。
尤も、全く役に立っていないが。
(駄目だ、もう息が・・・・・)
酸素が足りていないせいか、全身から力が抜け、視界にも靄が掛かる。
遂に動く事さえ出来なくなった俺は波の動きに抗えず、みるみる水底へと引き寄せられていく。
薄れ行く意識の中、最後に見たものは海の底に突き刺さる一本の剣と俺を飲み込もうとしている巨大な龍の姿だった。
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