ボロ布を着た犬。
恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界
ボロ布を着た犬
黒い何かが、空からしきりに降り注ぐ。
自分の家があったであろう場所は、火の海に飲まれている。飼い犬のシバと、積乱雲の不格好さを山の家から見る。
「シバ。オレたちの家が……」
「だったら、ずっとここにいればいいじゃないですか。」
「……すまん。それは、できないんだ」
「大丈夫です。いつでも何処でも、私はご主人のそばに居ますから」
ご主人の、なんとも悲しそうな表情。紛らわすための言葉も、意味をなせておない。
大丈夫だと安心してほしいと伝えたいから、ご主人の体に身を寄せる。
ご主人は、ゆっくりと震える手で、私を抱きしめる。
「大丈夫です、私はここに居ます」
一人と一匹は家、元いバラックに帰る。シバにとって、ここは初めての土地。飼い犬だと分かるように、剥げた背中に布を着せておく。
大部分が焼け落ちた家に、飼い主が悲しんでいると、シバはどこかへ走っていってしまう。
夜になり、立ちすくむ飼い主のもとにシバが戻ってくる。
「ご主人、ご主人。あそこで芋を育てる許可をとってきましたよ」
「ありがとう。そうか、そんなことしかできないか」
「大丈夫、僕がなんとかしますから。」
飼い主は、毎日畑に通い、仲間たちと芋を育てた。
そして何故かシバは毎日賢くなっていった。毎晩、その日に学んだことを飼い主と語り合った。
芋は順調に育っていった。しかし、収穫が近づいた頃から、芋がどんどんなくなっていく。
ある日、シバがいい服を着たおえらいさんを連れてくる。シバは収穫が近づいた頃から毎日、おえらいさんに芋を持っていっていたという。
そこで飼い主とおえらいさんは話をする。シバとの会話のおかげで頭が良くなった飼い主は、おえらいさんに気に入られる。そこから話が進んで、飼い主を弟子にしたいという。
その道を選んだ飼い主は、シバと一緒に学び、暮らす。
暫くして、飼い主は一人前になり、裕福な家で暮らすようになる。
シバは、ご主人の隣で美味しい肉を幸せそうに食べる。
ボロ布を着た犬。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro
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