呪いのはじまり

時間が止まっていたなんて知らない


ちくりと指先が痛んだのはほんの少し前

目覚めれば目の前には知らない男がいて

城中の人々が歓喜し男をもてはやした


魔女の呪い百年の眠り王子様のキス

垂れ流される情報と急速に流れ出した時間に

ぐるぐるぐるぐるめまいがする

喜びからわたしだけが置いてきぼりにされている


呪われた瞬間から何もかも何もかも何もかも未来は決まっていて

本当の呪いが今はじまったことに

わたししか気づいていない


ずっと眠っていたかった

二度と目覚めなければよかった


歓喜に湧く眠りから覚めた城と

隣で笑う知らない男

この男と結婚することになるということに

ただただ絶望している


死ぬことも眠り続けることも

呪いなんかじゃない

これから始まる毎日こそが魔女の呪い



『いばら姫』


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