おにぎりの側で
鷹簸
おにぎりの側で
僕らは毎日毎日、言葉を使って生きている。
来る日も来る日も、言葉を吐いて生きている。
誰かを傷つけたり、楽しませたりできる言葉。
それは、どれほど恐ろしく大きな力か人々は知らない。
俺はおにぎり。
日本人なら言わずと知れたものだ。
誰が俺をつくったのかは知らないけど、俺の命は蝉よりも短い。
長くても2日ぐらいで俺は捕食される。
早けりゃ40秒といったところか。
でも、そのうち生き返る。
まぁすぐに食われるんだけどな。
俺を食べる奴はまぁまぁ元気がある奴ばっかりでな、
ガキンチョとかだと俺を汚してまで食べるんだ。
あの土のついた手がどれほど最悪なものかお前らにはわからないだろうけどな。
ま、俺が知り合いといる時は透明な袋に入れられるおかげでマシだけどよ。
あぁそうだったな、アイツの話を聞きたんだっけ。
アイツはたまに俺のことをつくるんだけどよ、自分で食べないんだよな。
俺はあいつをみながら、食べられるんだ。
俺を食べる奴が誰かは見たことねぇがアイツはいつも肌が赤かった。
血の類でもない、多分暴力に遭ってるんだろう。
でも俺には何もできない。
つくられて、喋れずに、食べられるだけだからな。
ま、お前も案外誰かに見られてるぜ?
俺かもしれないし、惣菜に入ってるちくわがお前を見てるかもしれん。
でも最近のことを見てこれだけは言える。人間は自分にしか興味がない。
うまくやれよ、そのうちまた会おう。
おにぎり
おにぎりの側で 鷹簸 @tacahishi-13
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