第104話 悲報

 ゲートを使った後に、ダンジョンへ向かって馬車移動の途中、俺は暇つぶしにまた魔導サロンを覗いてみた。



 ◆◆◆ 魔導サロン掲示板 ◆◆◆


 ★名無しの令嬢【悲報】

〈騎士トーナメント戦で優勝した茶髪騎士様が星祭りで見つかりませんでした〉


 名無しの令嬢〈もしかしてフルフェイスの鎧を着て護衛任務についていた可能性がございます〉

 名無しの令嬢〈お可哀想に。冬の珍しい社交イベントでしたのに〉



 !!

 お、しまった、ユージーンを探してる子がいたんだった。



 名無しの貴族〈お気の毒に……確かに彼は顔が隠れる鎧兜で会場にいましたよ〉


 ★名無しの令嬢〈!? 知っていたなら教えて欲しかったですわ!!〉

 名無しの貴族〈それは申し訳なかった。あの時はバタバタしていてそこまで気が回らずに〉



 ほんとにごめん。と、俺は少しだけ情報を書き込んだ。



 ★名無しの令嬢〈キー!! ですわ!〉


 名無しの貴族〈お詫びにドラゴンを解体する彼の勇姿画像を……いや、血まみれだからやめとくか〉

 


 よく考えたらかなりグロいかも。



 ★名無しの令嬢〈とある山でドラゴンスレイヤーが出たって噂でしたが!? 倒したのは彼でしたの!? 血まみれでも見たいのですが!?〉


 名無しの貴族〈あ、本人の許可取ってなかった……今度聞いておきますね〉


 *

 *

 *



 名無しの貴族〈画像全裸待機〉

 ★名無しの令嬢〈こ、ここに来て焦らしプレイ!? あなたは悪魔ですの!?〉

 名無しの貴族〈絶対関係者やんけ〉


 名無しの令嬢〈お、落ち着いてください令嬢。茶髪優勝騎士の関係者なら主かもしれません! 心象を悪くしてはなりません〉


 ★名無しの令嬢〈!! も、申し訳ありませんでした、つい取り乱して!!〉

 名無しの令嬢〈ドキドキ……〉

 名無しの貴族〈無言? もしかすると茶髪君への道が絶たれた可能性〉


 ★名無しの令嬢〈な、なんとか言ってくださいまし!? 私の謝罪は受け入れていただけなかったのです!?〉

 ★名無しの令嬢〈……へ、返事が……ないわ!?。°(´ฅωฅ`)°。ぶわっ〉


 名無しの貴族〈可哀想に、令嬢は泣いてしまった〉

 名無しの貴族〈……例の関係者は寝落ちしたんじゃないか?〉


 名無しの貴族〈ドラゴンスレイヤーが彼なら本当にすごい、当家に欲しい〉

 ★名無しの令嬢〈そんなのうちだって欲しいですわ!〉


 ◆◆◆



「ネオ伯爵! もうすぐ着きますよ!」



 馬車での移動中、俺は端末を見ながら、いつの間にか寝落ちしてた!


 馬車を護衛するように並走していたユージーンが声をかけてきたが、護衛騎士が他にもいるから丁寧な言葉遣いである。



「あっ、移動中に寝落ちてた!」

「お疲れなんですね」

「そうだ、ユージーンに聞こうと思ってた事が」

「何をですか?」


「お前のドラゴン解体シーンの画像を魔導サロン掲示板に上げてもいいかなって」

「お止めください、そんな血まみれの汚い画像は」

「ドラゴン解体なんて珍しくはあると思うが、嫌なら仕方ないな」


 ユージーン本人にさくっと断られたので、令嬢には謝っておこう。


 そして再び掲示板を開いたが、令嬢がパニクっていた。


 ◆◆◆続魔導サロン◆◆◆


 *

 *

 *


 名無しの貴族〈寝落ちてました、すみません。そして本人に画像を上げてもいいか聞きましたが、解体作業で血まみれで汚いから止めて欲しいと言われました、ごめんなさい〉


 ★名無しの令嬢〈お、怒っていらっしゃらないなら、良かったですわ……ガクガク:(´◦ω◦`):ブルブル(涙目)〉

 名無しの貴族〈怒ってません! 春の社交会をお楽しみに! (・ω<) てへぺろ〉


 名無しの貴族〈てへぺろじゃねーんだわ〉

 ★名無しの令嬢〈春は……春はまだですか?〉

 名無しの令嬢〈まだ全然冬ですわ〉


 ★名無しの令嬢〈容赦なさすぎですわ! 人の心はないのですか!!((((;゚Д゚))))〉


 名無し貴族〈争え……もっと争え!!〉

 ★名無しの令嬢〈スン……ッ。( ˙-˙ ) 何か怖い人がおられますね(急に真顔になる)〉

 名無しの貴族〈寝ながら待ってればそのうち春は来るだろう〉


 名無しの貴族〈春の芽吹きの祭りでワンチャン?〉

 名無しの貴族〈銀髪貴族が春に婚約式をやるはず、夫人候補三人もいる……〉


 ★名無しの令嬢〈!! 春までに磨き上げておきます!٩(´ᵕ`๑)و*〉

 名無しの貴族〈紹介状を贈るのであなたの家門のヒントをいただけますか?〉

 ★名無しの令嬢〈白百合と二本の剣……ですわ〉

 名無しの貴族〈家紋ですね、ありがとうございます〉

 ◆◆◆


 「白百合と二本の剣の家紋と言えば……どこだろう、今度ニコレットに訊いてみよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る