第69話 海老チャーハンで釣る。

 今回の俺の城行きの用事は錬金術師との会話が主で、子供が楽しめる要素はまるでない。

 なので自分と護衛騎士だけで、アルテちゃんには留守番をさせて王弟殿下の城に向かった。


 そして男性の錬金術師を王弟殿下から紹介していただいた。年齢は25歳でまだ体力もしっかりありそうだ。



「新しく子爵になったネオだ。よろしく頼む、当然研究資金はしっかり用意するから」

「こちらこそ、魔導具研究に支援していただけるのは大変助かります」



 研究には、資金がかかる。

 それは俺も理解しているのでここは出し惜しんだりしない。



 そして王弟殿下の城内にあるサロンを借りて錬金術師に作って欲しいものをあれやこれやと説明する。

 脱穀、精米を人力でやるのは疲れるからぜひ頑張って欲しいと力説した。


 さらに城の中にある厨房を借りて海老油で作ったチャーハンも作って錬金術師にも食べさせてみた。



「美味い!! これ美味しいですよ!」

「そうでしょう!? 米は美味しいので、例の魔導具は絶対に必要なものなのです」

「なるほど! 制作頑張りますね!」


 料理で釣った感があるけど、米は手間をかける価値があると思わせるのは大事だと思った。


 錬金術師は魔導具作りが本当に好きらしく、かなり創作意欲が刺激されたようだった。

 興味なしだとつまらない作業になるだろうから、そこはとても助かる。

 それからせっかく城まで来たので王弟殿下の治療もしておいた。

 相変わらず立派な胸筋でした。



 そしてやることやって帰る為に城の廊下を歩いているとまた視線を感じた。

 あ、眼鏡の文官っぽい娘さんだ。


 この肉体、ジョーの見た目がかっこいいから目をひいてるのかもしれないな。


 俺が眼鏡っ娘に軽く挨拶したら、やや恥じらいながら挨拶を返してくれた。



 そして錬金術師に会うという大事な要件を済ませたので、俺はまた子爵領に戻った。



 * * *



 砦に帰り着くと池の近くの雑木林にアルテちゃんがアケビを見つけたと言いながら迎えに駆けてきた。

 アケビは蔓性の植物でパッと見がじゃがいも色や紫色のものがあった気がする。



「あぁーー、これ収穫出来るの秋だったか」


 雑木林を見上げて感慨にふける。

 懐かしい感じするな。

 アケビは前世の孤児院の裏手の山にもあった。



「とどかないっ」


 アルテちゃんはピョンピョンとジャンプしてアケビに手を伸ばしてる。

 ジャンプする度に尻尾が揺れててかわいい。


 どうやら自分でアケビを採りたいようだ。



「どら、抱えてあげよう」


 高いところに実があったので俺はアルテちゃんを抱え上げた。



「んっ! 取れた!」



 アルテちゃんは嬉しそうに笑った。

 アケビは11個取れた。


 俺とアルテちゃんはその場で自然の甘みを楽しんだ。



「森にもいきたい」


 砦内の規模の小さな雑木林では大森林に住んでいたアルテちゃんにはもの足りないのかな?



「そうだな、砦に一番近い森ならいいかな。ただし長いズボンを履いてな。このズボンのお尻部分に尻尾を通す穴を針仕事できる人に作って貰ったならな」


「エイダー! スボンにあなつくって!」


 アルテちゃんがスボンを抱えたままエイダさんの所に走って行った。


 元気な子だ。


 ◆ ◆ ◆


 翌日にはアルテちゃんの希望通りに砦の側にある森にも散策に出た。

 距離が近いので日帰りだ。


 今日はアルテちゃんには安全の為に長ズボンを履かせたので、以前よりは安心。


 そこではクルミを見つけたので収穫した。

 こちらでは袋に入れて外皮を腐らせて中身を取り出すらしい。


 また倒木のところで舞茸もみつけてそちらも収穫した。


 子爵になった祝いで支度金を沢山国からいただいたが、まだただ食材をゲットすると嬉しいな。



 それから厨房のカレー作りの様子を見学したりもした。

 野菜や鶏からしっかり出汁スープを作っている。


 厨房にてカレーの準備を確認した後にユージーンから手紙が届いた。

 


「へー、騎士見習い達は魔獣討伐の実践訓練に出るのか」



 ユージーンにこちらの近況報告と共に無事に帰って来いよと返信した。










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