第62話 マリアンヘレス・カルラ・リノドラン
掲示板の報告を見た後にふと、気が付いた事がある。
「あの黒髪豪運令嬢……でもソルさんの顔も知らないんだよな」
首から下の情報のみである。
太ももだけでそんなに……顔にはこだわりない人なのか。
でもソルさんのお顔見たらもっと情熱の炎が燃え上がりそうだな、かっこいいからな。
◆ ◆ ◆
俺が我がソーテーリア子爵領の砦へ向かう道中、馬車で移動をしつつ、俺は護衛騎士相手に今後の話をした。
「ところでせっかく竹林があるからさ、灯籠祭りができると思ったんだよ」
「トウロウ祭り?」
「そう、竹の中にろうそくを仕込んで明かりを灯すんだ。綺麗なんだよ。ほら、正式に子爵になったし、日中は領民の皆も忙しいから夜に灯籠祭り兼、子爵の叙爵祝いをやろうかと」
ついでに今度はナンみたいなパンとカレーでもふるまおうかと思う。
米を出すのは自領で収穫できるようになったらってことにする。
今だと足りなくなるからな。
「それは子爵になったお祝いがメインで、トウロウ祭りとやらがついでになるではないですか?」
「まあ、それはそうか」
「なんにせよ、めでたいことですね」
帰りついたら文官に話をして、領地内で祭りの告知をしてもらおう。
ちなみにアルテちゃんは馬車の移動中はスヤスヤ寝ていたから静かなもんだった。
流石猫。
◆◆◆ ニコレット視点 ◆◆◆
私は先日、ネオ様の叙爵式と一つのティーパーティーを終え、王都のタウンハウスの自室にてカウチに横になり、休んでいました。
「ねぇサーラ、なんだか胸が苦しくなってきた気がするわ」
侍女のサーラは最近事情があって頻繁に侍女の仕事は休みをとっていたのだけど、今日は久しぶりにこちらに出て来ていた。
ネオ様の叙爵式に参加する為にね。
「ニコレット様、ではお医者様をお呼びになりますか? それともマギアストームの症状ですか?」
「そうじゃないのよ! あの美しいネオ様が叙爵されてパーティーに出たのよ! 今頃あまたの貴族達がパーティーや茶会の招待状を用意するし、婚約者を探している令嬢達が近づこうとするはず!」
「でも他の令嬢からはネオ様の詳しい情報がなくて元平民に見えるでしょう? 元平民てそんなに人気はないのではありませんか?」
「領地なしの騎士爵しかない騎士にでも夢中になる令嬢がたくさんいるのよ! 何もおかしくないでしょう!?」
「そう言えば……そうかもしれませんね」
サーラ相手に愚痴っていると、扉越しにコンコンとノックの音がした。
「入っていいわ」
入室を許可するとメイドが伝言を持ってきた。
「マリアンヘレス・カルラ・リノドラ男爵令嬢がニコレット様を訪ねていらっしゃいました、面会を求めておられます」
「マリアンヘレス・カルラ・リノドラン……ああ、あのソル卿に夢中な黒髪令嬢ね。会って差し上げましょう」
私は令嬢を待たせているサロンへ向かいました。
「ごきげんよう、リノドラン男爵令嬢」
「私の事はどうぞ気軽にマリアンとお呼びください、ニコレット・モリス・オラール様」
「ではマリアン、本日のご要件は?」
大体想像はつくけれど。
「例の騎士様の事で……どうか当家に来ていただく事は無理でしょうか?」
「ソル卿は、本来お父様の護衛騎士だから、それにはソル卿本人とお父様の許可がいります」
「あ、ニコレット様の護衛騎士ではないのですね」
「そうなのよ、ひとまずお父様にお伺いするわ」
少々お待ちになってね、と、一言言ってから私はお父様の執務室へ向かい、扉の前でノックをして声をかけます。
「お父様、ニコレットです」
「入りなさい」
人を待たせているのでソファには腰掛けず、立ったまま単刀直入に用件を伝えます。
「お父様、リノドラン家の男爵令嬢からソル卿が欲しいと言われましたの」
「あー、またか。男前だからソル卿は度々よその家門から欲しいと言われるのだが、お気に入りなんだ」
「では、お断りさせていただきますか」
「いや、しかし、あれだろう? そなたのお気に入りのネオ殿と多少関わりのある令嬢なのだろう」
「そうですわね、多少は掲示板越しに……でしょうけど」
「侍女のサーラが懐妊して、仕事を休ませるから、後任を探していたところだ。その男爵令嬢をニコレット、そなたの侍女にし、ソル卿をニコレットの護衛騎士に配置換えをし、それならソル卿を我が家門に留めおけるし、ニコレットも侍女が手に入る」
そう言えば侍女のサーラは既婚者で妊娠したから最近は仕事を休みがちになっていましたし、ソル卿もお父様の護衛騎士から私の護衛騎士になる分には特に問題はないでしょうし。
「流石はお父様! 名案でございますわね! 早速侍女とソル卿の件を伝えてまいります」
「ああ、私の方はソル卿にニコレットの護衛騎士になるよう申し付けておく」
「はい!」
私は男爵令嬢とソル卿のお話をネタにネオ様に報告できる事が出来たので、また連絡をとってみることにします!
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