第40話 ついに手に入れた!

「今から治療行為の為に、貴女の胸に触る事になりますが、怒らないでくださいますか?」


 手のひらに意識を集中しつつ、緊急時でも一応本人にお伺いをたてる。


「この痛みを何とかしてくれるなら胸でも何でも触って!」


 うさ耳お姉さん本人から許可が出た!



「では、魔力吸収!!」

「んっっ!!」


 チューブトップみたいな服の上から光を纏う手のひらを乗せた。

 それからゆっくり揉みほぐすようにする。


「頑張ってください! だんだん楽になるはずです!」

「はぁっ、ああっ、はぁ……っっ!!」


 揉み、揉み、揉みっ。


 周囲の女性陣は固唾をのんで見守っている。

 はたから見てるとただ女の胸を揉んでるだけの怪しい男ではあると思うが。

 うさ耳のエイダさんは苦しげに眉根を寄せていたのが、だんだん穏やかな顔になってきた。



「エイダさん、どうでしょうか?」

「ああ……痛みが……急速に引いていきます……神様……」


 うわ言のように神様に祈り始めたが、お顔が何気にうっとりした感じになってきた。


「おねーちゃん、おむねなでてもらっていたくなくなったの?」


 ベッドサイドから心配そうに覗き込む猫耳アルテちゃん。

 彼女の髪は白で耳と尻尾はグレーであり、尻尾の先っぽは白い。いわゆる幸せを呼ぶキャンドルテールってやつかな。



「アルテ……ありがとう、痛みが消えたわ。天使様を連れて来てくれたのね」



 うさ耳さんは何故か薄いピンクの髪色をしている。

 耳も薄いピンク。

 まあファンタジーな世界だからそんな事もあるんだろうな。



「おねーちゃん、たぶん人族だよ……」

「人族の治療師です」



 おっぱい柔らかいなーとか思いながらもアルテちゃんの意見に頑張って真面目な顔を作って頷く俺。



「人族の……治療師……人族にも優しい人が居るのね」


「えーと、はい、痛みもなくなったようなので施術はこのへんで終わりにします」



 これ以上は俺の下半身が危ない。



「……ふう。助けてくださってありがとうございます……」


 エイダさんは身だしなみを整えつつ、深いため息を一つ吐いて礼を言ってくれた。

 はっ! お礼!!


「はい、対価はソイソースやミィソでも受け付けます!」


 急に物欲に支配される俺。



「対価……そんなものでいいのですか?」

「それが欲しくて俺は大森林まで来ました」

「そ、そうなんですね。そこの台所に……予備がありますから」



 そう言ってベッドから体を起こしたエイダさんは、俺にツボに入った醤油とミィソを渡してくれた。



「やったーーーーっ!! ミィソとソイソース! 手に入れたぞ!」

「ネオ、治療終わったの!?」


 ユージーンの声が家の玄関扉の向こうから聞こえた。


「終わった! もう入っても大丈夫!! 多分!」


 他所の家だけど! 安否確認くらいなら!

 獣人の兵士もドヤドヤと入って来た。



「エイダ! もう大丈夫なのか!?」

「ええ、すっかり痛みは消えているわ」


 獣人の皆さんが話してる間に我慢が出来ない俺は早速醤油と味噌を手のひらに少し取り、ぺろりと味見した。



「まちがいない! 味噌と醤油だ!」

「えーと、そこの人族の銀髪の……エイダが世話になった」


「はい! 私の仕事にご満足いただけたならお米を譲ってください! 棚田の豚の飼料とか言ってらしたあの植物です! 金貨や銀貨と交換しますか? それとも森に住んでるなら海の幸が欲しくなったりしませんか? 魚介類とかの海産物も有りますよ!?」


「お、おお、海の幸か、悪くないな。それともうじき収穫の時だから」

「え!? 新米? いつ収穫ですか? この際古米でもいいですけど!」

「三日後に収穫予定だ」

「あ、干す時間とかあるんじゃないです?」


「まあ、確かに保存の為に乾燥をさせているのはある」

「あ、そうか! とにかく脱穀した粒のやつ譲ってください!」


 食べたい!!


「よく分からんが束にしてまとめてあるやつをもっていくか?」


 脱穀はしてないのかも! 俺の勢いに若干引き気味の兵士さんだったが、稲をくれるならもうなんでもいい!


「わかりました! 見せてください!」



 そうして俺は金とは言われなかったが、今後の事も考え、金貨数枚と海の幸を差し出しつつ、ドライフラワーみたいに束にして纏めた米をもらった!!

 脱穀精米せねば!!



「へー、海の幸は久しぶりだ」

「だなー」

「流石にこの高級魚と海老、全員分はないな」


「それは鯛と海老だから味噌、いえ、ミィソに入れて食べれば美味しい出汁が味わえますよ!」


 獣人達の会話に思わず口を挟む俺!


「そうよ! 汁物にすれば解決するわ!」

「そうだ! ミィソに入れよう!」



 獣人達は野外にテーブルセットを設置し、俺の魔法の布から出した沢山の海の幸を囲んで宴会の準備を始めた。よほど嬉しいらしい。



「新米も気になるし、しばらく脱穀作業とかしますので数日間、俺達が村に滞在してもいいですか?」


 宴会の準備をする彼ら相手に堂々と滞在許可をねだる俺。


「ああ、数日だけなら」

「そうだな」



 村の獣人達からお許しが出た! 早速掲示板に報告をしよう!

 あ! 写真も撮ろう!











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