第38話 猫耳少女
「大変だ! 獣人の幼女がゴブリンに攫われている! マーヤさん、何とかなりませんか!?」
俺がマーヤさんを振り返ると即座に、
『ストーンバレット!!』
マーヤさんの石礫の魔法がその場にいたゴブリン五体全てに炸裂した。
そう、素晴らしいコントロールで幼女には当たってないのだ。
ゴブリンの急所のみ撃ち抜いている。
手にしていた奴らの武器の棍棒も地面に散らばる。
しかしゴブリンは急所を撃たれ、そのまま肩に担いでいた幼女を落としてしまったので、慌てて駆け寄ろうとする俺。
しかしユージーンに肩を掴まれ、騎士が代わりに幼女の元に走ってくれた。
「ネオ、非戦闘員の護衛対象が迂闊に近づいてはダメだよ」
「そ、そうだな! ソル卿! その子大丈夫ですか!?」
俺が幼女に駆け寄り抱き起こした騎士のソルさんに声をかけると、
「後頭部をおそらくそちらに転がっている棍棒で殴られてるせいか、ぐったりしてます!」
という返事が来た。
確かにゴブリンは武器として棍棒を持っていたので、そうなのかも。
「レリアさん、お願いできますか?」
「はい! ネオ様、任されました!」
すぐさま巫女のレリアさんが治癒魔法をかけてくれた。
治療後にそっと草むらの上に寝かせ、その状態で声をかけてみた。
人間嫌いだといけないからな。
「お嬢ちゃん! 大丈夫かー? おーい」
「……んん? ハッ! 人族!?」
「俺達は確かに人だけど、そこのお姉さんがゴブリンを倒して、そっちのお姉さんは君の頭の怪我を魔法で治してくれたんだよ」
俺は手のひらをマーヤとレリアさんの方に向けて味方アピールをした。
猫耳幼女は俺とマーヤさんとレリアを見た後に、地面に倒れてるゴブリンに気がついた。
「……人族が、あたしを……あ、ありがと」
お、信じてくれたようだ。
「君に聞きたい事があるんだが」
「なに?」
「君の村に醤油……ていうか、黒くて辛い、豆から作られる調味料はないかな? お料理に使うものだよ」
「ソイソース? ある」
マジか! やった!
「やっぱりあるんだ! じゃあスープとかに溶かす、味噌、てゆーか、茶色いとろっとした調味料もある!? 味はしょっぱい系かな」
「茶色い……ミィソならある」
ミィソって言うのか! やや掠ってるから、信憑性高い!
「味噌があるなら、穀物の米ってのも、もしやあるかな? 初めは緑の葉っぱで秋に黄金色になる植物知ってる?」
「……草?」
「うーん、確かに草っぽくはあるかな。認識できてないだけで食べてるかも。でも醤油と味噌あるだけでもありがたい! ところで味噌、ミィソは豆から作るのかな?」
「しらない」
「だよねー」
幼女だしな。
そもそも日本の若者だって味噌の原材料が分かってない人多そうだ。
でも味噌があるなら、この幼女が米を違う呼び名で気がつかずに食ってる可能性はある。
俺は質問をつづけた。
「とにかく、俺達は君の村に行って、交易をしたいんだけど」
「こうえき?」
「ミィソとソイソースを買いたいんだ、お金とか、何かと交換して欲しい」
「ふーん……」
幼女は俺達を一人ずつ観察した。
王弟殿下は、本当は50人くらいは俺の護衛につけたかったらしいが、武装した集団がまとまって獣人の村に行くと侵略者だと警戒されるだろうから、断念したと言っていた。
ここで少数精鋭で来た事が吉とでるか!?
「お願い! この通り! 買い物したらすぐ帰るし! 君たちに酷いことは決してしないから!」
俺が手を合わせて懇願してる間に幼女はゴブリンに殴られた自分の後頭部を撫でた。
「エイダにもそのおねーさん、まほうかけてくれる?」
幼女はレリアさんを見てる。
「ん? 君の知り合いが怪我でもしてるのかな?」
「病気……」
「治せるかは、病気にもよりますが、私が診てみましょう」
「よし、話は決まったな。お嬢ちゃんの村に案内してくれ」
「うん」
「あと子供が一人で村の外に出たら危ないよ、魔物が多いし」
「やくそうさがしてた……」
「え、エイダさんて人の為に?」
「うん。いつのまにか……近くにゴブリンいて殴られた」
「こんな健気な子を殴るなんてゴブリン、許せないな」
この子を巣に連れ帰って食料にしようとしてたのか、繁殖に使おうとしてたのかは分からんが、とにかく許せない。
「ところでお嬢ちゃん、あなたのお名前は?」
レリアさんがそう言ってようやく名を聞くのを忘れてたのに気がついた俺。
「ラーレアルテ」
ほほー、ラーレアルテちゃんて言うのか。
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