第29話 謝罪と新しい情報

「ニコレット様、そういえば、その……三年はこの地に留まると約束をしていたのに申し訳ありません……。三年間の間はコチラにちょいちょい遊びに、いえ、治療に通うようにします」



 昼餐後、俺はニコレット様に改めて謝罪をした。

 レベッカ様とエマ様が化粧直しに行かれた隙にだ。



「王弟殿下に領地を賜るのですから、お気になさらず! 平民のままで居るより身が護れると思いますもの。

私の方からスクロールなり転移陣などを駆使して通いますから。ただ……もしよければ今度また歌声を聴かせて下さいませんか?」




 意外な事を上目遣いでおねだりされた。

 が、お安い御用だ。



「素人の私の歌なんかで良ければ、晩餐の後にでも」

「嬉しいですわ!」



 こんな事で素直に喜んでくれるなんて、可愛らしい人だ。



「調味料を探しに出かけることもあるかもしれませんので、私の住まいはあまり急いで建てなくても大丈夫だと手紙で王弟殿下に伝えます。叙爵の際は一旦辺境伯領に行きますけど」


「分かりましたわ。私で力になれることがあれば何なりとおっしゃってくださいね」



 どのみち重機もない世界なら家が一軒建つまでに一年はかかるだろうと思う。

 豪邸なら三年くらいかかるかもしれないが。


 元の世界でも家一軒に8ヶ月くらいはかかったみたいだし。

 まあ、家の件は置いといて、ニコレット様は親切なので、できる限りの事をしないとな。



「ついでに……今から個室で治療をしておきますか?」


 胸を揉むことになってしまいますが。


「っ!!」


 お、やはりお顔が真っ赤になってしまいましたね。



「また今度にしますか?」

「そ。そうですわね、せっかく自宅におりますもの! お化粧直しのついでに……」



 そんな流れで魔力吸引の治療をすることにした。

 まだあの下半身を隠す衣装は手に入ってないからなんとか違うことでも考えながら胸を揉むしかない!


 今回は先にトイレの場所を聞いてからにした。

 別荘では慌てたからな。


 パウダールームに招かれて施術する。


「魔力吸収!!」


 しかし、貴族令嬢の柔らかい胸を揉みしだくだけの素敵で簡単なお仕事です!


 役得!!



「ああん……っ」



 色っぽい声が聞こえても、意識をそらす!


「はい、痛かったら手を上げてくださいねー」


 などと歯医者みたいなセリフも挟むが、彼女は手を上げずに、


「ああ〜っ!!」


 色っぽい声だけを上げておられる。

 いや! 度々聞こえる、これは猫の鳴き声! 猫の鳴き声!



 その後、俺は平静を装いトイレに向かった。


 そしてスッキリしたあとは煩悩を物欲に変換すべく、手洗い場で手を洗い、布で濡れた手を拭った後に魔道具で味噌と醤油の情報を探す為、掲示板をチェックした。


 すると……あった!

 書き込み情報が!

 醤油と味噌! 大森林、獣人の村!


 行くしかねえーーっ!


 ドキドキしてきた!

 森かあ、魔物もいるみたいだが、醤油と味噌の誘惑には抗えない!!

 せっかくファンタジーな世界に来たんだし、ケモミミっ子も見てえー!


 そして晩餐の後、侯爵様はこれからお仕事らしいのでいないのだが、令嬢達の前でプチリサイタル開催し、ユージーンも一応見守ってくれてる。

 

 と、言ってもカラオケセットもないからアカペラになった。


 折角なのでサービスになるかならんか微妙だけど、女性人気の高い日本のラブソングを歌ったが、異世界言語なのでよくわからなかっただろう。


 それでも、美しい旋律の歌だと喜んでいただけた。


 さらに歌の後で俺は、


「今度大森林に醤油と味噌を探しに行くつもりなのですが、何か気をつけることはありますか?」


 と、令嬢達に聞いてみたのだが、


「なんですって!? 絶対に護衛がいります! 私が付き添いますわ!」

「「わたくし達も! お供しますわ!!」」


「数日は猶予をください! 私、急いで準備しますから!」

「「わたくし達も!」」



 落ち着いてくれ、令嬢達! 暇なのか!?

 俺と違って何かあるだろ!?



「いえ、皆様は他に予定などが……」

「お茶会やパーティーよりネオ様の命の方が大事です!」

「ニコレット様! 皆様方! 王家や公爵家のパーティーもありますから今更キャンセルは流石に問題があります! 護衛には手練れの騎士をつけましょう!」



 流石! 侍女サーラさんは冷静だ。



「でもサーラ! 私は心配なのよ!」

「魔法の伝書鳥にて連絡をこまめにさせましょう! 責任感の強い信頼できる騎士に!」


「侯爵家の騎士をつけていただけるのならユージーンもいますし、こちらはなんとかなるでしょう。皆様は本来の予定通りの社交活動をなさってください」

「「「ネオ様ぁ!!!」」」

「お嬢様方! 冷静になってくださいまし!」



 サーラさんが必死で宥めてくれて良かったと思いつつも、その時の俺は登り調子の運気の中で、謎の自信に満ち溢れていた。

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