第20話 カレーとロブスター

 俺、そろそろ爵位ももらうし、味方もできた。

 この世界に頼れる人がユージーンだけ状態ではなくなった。


 であれば、彼が俺の側に残るか去るかの選択肢を与えてやるべき時がきたように思う。


 俺を幼馴染の乳兄弟のジョーだと思って、信じているから付き合ってくれてるだけだろうし。



 だから、隣で健気にカレーの下ごしらえを手伝ってくれてる彼には、俺の真実をそろそろ話すべきかもしれない。


 卑怯かもしれないが、自分の身の安全のために彼の善意を利用してたんだ。俺は。


 離れる選択肢もあると、そろそろ言わないと。

 できればあんないいやつめったにいないだろうから側にいてはほしいけど、それは俺のエゴだし。

 

 せっかく池にまで飛び込んで助けたのに別人の魂が入っていたなんて、めちゃくちゃショックだろうが。


 カレーを作りながら、俺はそんな事をツラツラと考えていた。


 ちなみに今、王弟殿下とレベッカ嬢はリビングで急いで各地に手紙を書いたり魔法の伝書鳥を飛ばしたりして忙しくしているようだった。


 しかし俺の作るカレーの味が気になるらしいので、それは食べてから帰るそうだ。




「家が建つまでは俺の城で待機か、王都のタウンハウスを用意するでもいい気がしたんだが、どうする?」

「あっ! ネオ様! 当家に滞在していただいても!」



 急に厨房に王弟殿下とレベッカ嬢が現れて声をかけてきた!

 びっくりするだろ!


「お二人共、ありがとうございます。えー……せっかく契約もしたのでしばらくこの家にいます」 



 掃除にもお金を払ったからもったいないという貧乏性!

 これぞ庶民感覚!



「そ、そうか? よほどここが気に入っているんだな」

「当家にもいつでも遊びにいらしてくださいましね!」


「それにここ、海街なので新鮮で美味しい海産物が食べられるんですよね」

「それは確かにそうかもしれんな」

「分かりましたわ、ところで変わった香りがしますわね」

「レベッカ様に届けていただいたスパイスからですよ」


「美味しそうな香りで楽しみだな」

「申し訳ないのですがお二人に見られていると緊張するのでリビングに戻ってくださいませんか?」


「お、そうか、すまない」

「はぁい」


 少しシュンとして、王弟殿下達はリビングへ戻った。すみません。



 俺はこれからのユージーンとの関係に悩みながらもちゃんと料理する手は動かしてる。


 カレーの方は、シーフードカレーという選択肢もあったが今回はカレーにはチキンを使う。

 ロブスターは蒸して仕上げに軽く焼く料理にする。

 見た目はロブスターのバターチーズ焼きになる訳だ。


 蒸し器の代用品は、フタ付きの深めのフライパンと、多少の高さのある耐熱皿。


 底が平らな耐熱の皿をフライパンに逆さに置いて台座を作る。


 フライパンに3cmほどの水を入れて沸騰させる

 蒸気がしっかり上がったら台座の上に食材を乗せた皿を置く。


 そしてフタをして食材に火が通るまで蒸す訳だ。


 今回は蒸し器にロブスターを置いて、お湯が沸いたら蒸し器を使い、15分から17分ほど蒸したらロブスターの蒸し方は終わり。


 バター、砂糖、ニンニクを適宜入れてよく混ぜる。


 ロブスターの蒸し作業が終わったら、ロブスターの殻をひっくり返し、内側の両側に、ハサミを入れて切る……と、簡単に剥がれる。


 皮をむいてロブスターの身に用意しておいたバターを多めに塗って、さらにチーズをたっぷりのせる。


 そしてフライパンで少し温めればロブスターのバター焼きが完成。

 もともと蒸して火が通ってるから軽くチーズがとろけるくらい焼けばいい。


 カレーはバターチキンカレー。

 こちらの方は先に手順を紙に書いて話してユージーンが調理を進めてくれてる。



 調味料は手に入ったもので作る。

 シナモン、クミン、コリアンダー、カルダモン、ターメリック、レッドペッパー、ペースト状にしたカシューナッツ、おろしにんにく、ミルク、塩と小麦粉とバターを火にかけながら混ぜ合わせる。


 鶏肉の方はヨーグルト、クミン、コリアンダーで揉み込むことで、鶏肉を柔らかく、かつスパイシーに仕上げる。


 カレーのバターとロブスターのバターが被ってるが気にしたら負け!

 







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