第17話 おひげの男性
小鳥の鳴き声で目を覚ます朝。
「ふぁーーっ」
「ネオ、眠そうだね。さては夜更かししたろ?」
「まあな」
「新しい魔道具を貰ったからそれで遊んでたんだね」
「そうなんだよ。探してる調味料を書き込んだけど更新ボタン押してもまだ返事の書き込みがないんだよ」
「持ってる人が限られるからまだ時間がかかるんじゃないかな?」
「それはそうかもなー」
そして俺達は出かける準備をして朝ご飯の調達に朝市に向かう。
美味そうなロブスター発見!
ちょい贅沢かな? と、思いつつもお金は今あるしな。
「これ二つください」
「はい、銀貨八枚だよ」
「はい」
「朝から豪勢だね」
「先日仕事したばかりだし! 生活には潤いがいるんだよ! また川でもただ食材も採るし!」
言い訳を並べる俺にユージーンは苦笑しつつも、見逃してくれた。
自分もロブスターが食えるからいいよな!
さて、ロブスターは家で調理するとして、簡単につまめるものを……。
そしてとある店舗にて、目の前で捌いたばかりの鶏が羽根を毟られ、そして焼かれていくのが目に入った。
確実に新鮮だ。
こんがりとしたキツネ色の焼き色が素晴らしい。
ちよっと残酷に見えるが、新鮮で安全だと分かるのがいい。
俺達は朝食用に手羽を四本購入し、次に十字の飾りの入ったしいたけみたいな模様のパンを4つパン屋で買った。
何処かに座れるとこはないかな? と、キョロキョロしていると、夏だというのにボロく汚れた外套をまとった背の高いヒゲの男が物乞いをしているのが見えた。
無駄に体格がよさそうなのに物乞いに落ちてるのは、怪我して引退した傭兵か何かだろうか?
「どうか、食べ物かお金をください、お恵みを」
パンと肉は四個買ってあるし、これ俺のおかわり分ならあげていいよな?
「これ、よかったらどうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
肉とパンを1個ずつあげた。
男は、急いでそれを食べはじめた。
「お人好しだねぇ」
と、ユージーンに言われて、
「いやその、先日歌を一曲歌うだけで金貨一枚もらえて、いわば泡銭みたいなもんだし、情けは人の為ならずということわざがとある国にあってね、いつか自分にいいことが返るんだよ」
思わず早口で言い訳をする俺。
たとえ偽善でも、俺はくそ腹減ってるけど金も食べ物もない時になんか食べ物貰えると助かるし、嬉しいから。
「自分で稼いだ金で買ったものだし、いいけどね」
俺はユージーンの許しをえて、ほっとしてその場を離れようとしたが、
物乞いの男は慌ててパンを懐に入れ、素早く外套で手を拭いた後に、俺の腕を掴んだ。
「え?」
「見つけた! 救世主!」
「え? パンと手羽肉をあげただけで救世主は言い過ぎですよ」
俺は苦笑いしたが、ヒゲのおじさんは俺の手をガッツリ掴んで離さない。
「占い師の言った通りだ! ここの朝市で、できるだけ汚い格好で物乞いをして、食べ物か金をくれる親切な銀髪の若者がいたらその人が俺の救い主だと!」
あれ、どっかで聞いたような話!
「またあの占い師さんか! あの占い師さん、今どこにいるんですか?」
まだ神スキルもってるの教えてもらった御礼を言えてない!
「占い師の現在地はおそらくここよりだいぶ遠く離れてる! 俺は遠くから来た!」
「あ、そうなんですね」
「ネオ、それより今気にすべきは占い師の居場所より患者さんの体のことだよ」
「そ、そういやそうだな、すごい勢いで手羽肉食べてたから、今は元気に見えるからつい」
「やはり君がマギアストームの治療ができる人か」
ヒゲ伸び放題の男の言葉に俺は静かに頷いた。
「とりあえず、治療の仕方が少し独特なので人目を避ける必要があります」
と、俺は控えめな声で説明した。
そして今回は……男の胸を揉むことになるのか。
でも俺の下半身は沈黙してくれるだろうから、そこはセーフだ。
「わかった、どこに行こうか? 宿とか裏路地か?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます