夏の毎日更新チャレンジ日記
沢田和早
8月9日
沢田は驚愕した。数年前から利用している小説投稿サイト「ヨムカク」において赤字出血大サービスなキャンペーン開催の発表がなされたからだ。
「ヨムカク夏の毎日更新チャレンジ」スタート!
期間中、新規エピソードを毎日1件以上公開してください。
23日間毎日公開:全員に500リワード。
14日~22日間公開:全員に200リワード。
7日~13日間公開:全員に100リワード。
しかもエピソードの文字数に制限はない。例えば「沢田、本日の心の俳句」などと称して、
「ヨムカクや ああヨムカクや ヨムカクや」季語無し
みたいな、幼稚園児でも詠まないような駄句だけの文章でも1件の投稿として認められるのだ。極端な話、毎日「オレオ」の3文字だけを投稿し続けても500リワードがいただける、ということになる。
「これほど太っ腹な企画がかつて存在しただろうか。未曽有のキャンペーンと言っても過言ではあるまい」
参加者全員にリワードが付与される企画がないわけではない。毎年3月に開催されるヨムカク・アニバーサリー・チャンピオンシップ、通称YACだ。皆勤賞を達成した者全員に300リワードが付与される。
こちらは毎日公開ではなく、公開するエピソードの数も5~11と今回のキャンペーンより条件は緩いのだが、お題に沿った内容であることと最低文字数が決められていることで難易度が飛躍的に高くなる。実際、今年のYAC皆勤賞を獲得した者は600名にも満たなかった。
だが今回のキャンペーンは自由度の高さが圧倒的だ。内容も文字数も制限が設けられていないのだから。しかもご褒美は500リワード。即座にギフト券への換金が可能だ。
「これはもしかして運営が我々に与えてくれる夏のボーナスなのではないか」
最近すっかり怠け癖が付いてしまい数百文字の入力さえも億劫に感じている沢田ではあったが、これほどの好条件を提示された以上黙ってはいられなかった。前代未聞と言えるほどの運営の太っ腹に応えないとあっては男が廃る。
「では何を書くか」
沢田は思案した。今のところ何のネタもない。未発表の作品や別サイトの作品を再掲載するのが一番手っ取り早いが、そんなお手軽な手段は取りたくなかった。
「となればやっぱり日記か」
小説に比べると日記は楽だ。起承転結は不要だし毎回テーマを変えられる。思い付いたことをそのまま書くだけなのでプロットを練る必要もない。
「よおし、500リワード獲得目指して頑張るぞ!」
こうして沢田の23日間の苦闘が始まった。苦闘と言っても駄文を書くだけなのでほとんど苦しみはない。楽闘と言ったほうが適切である。もちろんそんな作品に読む価値などない。不幸にも第1話を読んでしまったユーザー様は2度とこの作品に近付かぬのが賢明であろうと思われる。
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