第21話

「これは……」


 おじいさんの目の前には祠がありました。

 かつて、おじいさんが祀られていた、綺麗に維持されていたものです。


 誰も山に立ち入っていないはずなのに、これが綺麗に維持されているのはおかしなことでした。


 おじいさんは天を仰ぎます。


「俺を……まだ信じてくれているのか。ばあさんよ、いや、単身で鬼を滅ぼした斬瑠璃姫ざんるりひめ


 鬼ヶ島に着いたとき、そこに鬼は一匹しかいませんでした。

 それが出会い。


 桃太郎は持ってきた火箸を手の中で回すと、その切っ先を己の胸へ向けます。


 一気に貫きました。


 命に危機が迫ります。


 世界が黒と赤に染まりました。


 そこまでして漸く老いた身に気が満ちます――――

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