第8話

「スペア,お貸ししましょう」

「結構です。スタッドレスタイヤがありますから」そう人の腕をこづく。

 解きはなたれるように車外へと転がりでた際,先刻より世話を焼く男の顔を見た。色つき眼鏡から透ける片眼がなかった。

 僕は逃げだした。

 男や未知瑠の呼びとめるのも構わず走りつづけた。

 曼珠沙華まんじゅしゃげれいの存在が僕を途轍もない恐れに駆りたてる。

 どうしてこんな羽目に陥ったのだろう。未知瑠の家になんか居候しなければよかった。誠皇晋せいのうしんについていけば問題なかったのだ。そうだ,誠皇晋が悪い。セイノシンの馬鹿!

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