カタルシス

つきたておもち

第1話

「今日のこの面接で終了としたいと、私は思っています。」

ほんのりとした、とても薄い緑色の壁紙で囲まれた、床には毛足の短い鼠色の絨毯が敷かれている6畳くらいの部屋。

採光を取るためなのだろう。廊下側のドアから入った正面には小窓があり、レースのカーテンで直射日光が入るのを避けている。

ドアから入った右側は隣の部屋へと続くのだと思われる木目調の扉。そして左側の壁際には腰くらいの高さの棚、ローボードが3つ並んでいる。それら棚の上には何も置かれていない。

そしてこの部屋の真ん中くらいに、丸テーブルと椅子が4脚設置されている。

シンプルな部屋。

窓から入る微風で揺れるレースのカーテンの動きを何とはなしにぼんやりと見ていると、

「永良(ながら)タクヤさん。」

柔らかな男性アルトの声のトーンで名を呼ばれ、タクヤは少し斜め前に座る、担当カウンセラーの月島(つきしま)を改めて見やった。

「タクヤさんは面接を終了と聞いて、どう思っていますか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る