第34話 人生二回目の女の子の部屋
期末テストの勉強を
いつもの別れ道を月花さんと一緒に歩いて行く。そして見えてきたお洒落な外観の二階建ての家。月花さんの家だ。
「ただいまー」
玄関へと入った月花さんが、帰ってきたことを知らせた。そうだね、そういったあいさつは大事なことだと思うよ。……あれ? 前に来た時は言ってなかったような?
すると右側にある部屋から、女性の声で「おかえりー」と返ってきた。確か玄関から見て右側の部屋はキッチンだっけ。案内されたことはないんだけど。
いやそうじゃない。そんなことよりも、もっと気にしないといけないことがあるじゃないか。
「月花さん、今は家に誰かいるの?」
俺はそう言ってからこれが無意味な質問だと気がついた。もしもこれで月花さんが「今は誰もいませんよ?」なんて答えようものなら、怪奇現象が成立してしまう。「今は誰が家にいるの?」と聞くのが正解だった。
「お母さんがいますよ」
「へー、お母さんかぁ」
(マジかっ!)
クラスメイトの女の子のお母さんに会ったことなんて、今まで一度もない。女の子の親に会うなんて、そんな場面がやってくるのは俺が結婚する時だけだと思ってた。
「先に私の部屋で待っていてください」
「分かりました」
俺は謎の緊張で月花さんに対して敬語になってしまった。月花さんは首をかしげて、俺を不思議そうに見ている。
そんな月花さんを残して、俺は正面に見える階段を上がって左にある、月花さんの部屋へと入った。
広さは12畳くらいで広々としており、白を基調としていて、フローリングの床にはベッドやテーブル、二人がけのローソファー・ラック・シェルフなどが置かれている。
人生二回目の女の子の部屋だ。前に来た時は緊張のあまり、どこに座ればいいのかすら分からず、月花さんが来るまで部屋の中で棒立ちするという失態を演じてしまった。でも今日は大丈夫、ここだ!
俺はローテーブルの横に置かれている白いローソファーに座って月花さんを待つ。背もたれのすぐ後ろにはベッドがあり、ソファーに座るとドアが正面に見えることになる。
「お待たせしましたー」
コーラが入ったペットボトルと空のグラスが二つ乗せられたおぼんを持って、月花さんが部屋に入ってくる。そして当たり前かのように俺の隣に座った。
月花さんが近くに来る度に思うけど、こんな可愛い女の子が俺の隣にいるなんて、未だに信じられないくらいだ。
「早速だけど分からないところがあるから、月花さん、教えてくれないかな?」
今の俺は勉強やる気モードになっているため、せっかく可愛い女の子の部屋に二人きりなんだから、イケナイことをしようなどという邪念を振り払っているのだ。
「ん」
月花さんからの返事はそれだけ。
「ん?」
さすがに意味が分からないので俺は聞き返した。すると今度は月花さんが、ソファーの上で正座している自分の太ももをぽんぽんと軽く叩いて、俺を見てくる。
「えっと……、ひざ枕ってこと?」
俺がそう聞くと月花さんは、コクンと静かに
確か前に来た時もひざ枕をしてもらったんだっけ。その時の月花さんは足を伸ばしていた。でも今日は正座をしている。
俺の中でひざ枕といえば正座というイメージがあり、もし次があればぜひ正座でと思っていたんだ。
あっさりと勉強モードを解除した俺は、ソファーから足をはみ出して、頭を月花さんの太ももに乗せた。さすがにこの体勢で月花さんのほうを向くのは恥ずかしいので、目線はドアに向けることにした。
俺の右頬にとてもスベスベで温かく柔らかな感触が伝わってくる。今日はもう勉強はいいかなぁ……。
俺の決意が早くも揺らいでいると、部屋のドアが少し開いているのが見えた。そしてその隙間から見えるものは……? 明らかに誰かが部屋の中を覗いていた。
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