タイ怪談
ただのネコ
血まみれの男の話
私は日本人ですが、縁あってタイ人と結婚しています。なので、妻の母ももちろんタイ人。しかも、なかなか不思議な家系でして。
義母のお祖父さんは、魔法医だったそうなのです。例えば病気の人がやってくると、おもむろにハーブを煎じて薬湯を作ります。薬湯を入れたお椀を持ってモニャモニャと呪文を唱えてから患者さんに飲ませると、数日のうちにきれいに治ってしまうそうで。ちょっと調子が悪いぐらいだったら、憑いた悪い霊を一喝するだけで追い払って治せたとか。
いわゆる、ウィッチドクターというやつですね。その中でもかなり腕が良い方。お金持ちの患者さんたちが治った後に土地を寄進したりするものだから、サッカーコートほどもある大きな家を構えて、貧しい患者さんは無料で直すどころかご飯を食べさせてあげたりもしていたとか。
そんな環境で育ったので義母もまた霊感が強い人。これはそんな義母の体験談です。
それは、ひどく暑くて寝苦しい夜のこと。日本人からするとタイは一年中暑いのですけど、現地の人でもそう思うのだからよっぽど暑かったのでしょう。
義母は眠るのを諦めて、蚊帳の中で身を起こしていたそうです。
すると、そこにひときわ暑い風が吹いてきて。ふと蚊帳の外を見ると、人の足が見えたそうなんです。ずうっと視線を上げていくと、脚の方は普通なんですが、上半身は血まみれで頭が無い。
その時点で、もう普通の人間では無いですよね。しかし、霊感が強い義母はさほど恐れることもなく、何をしに来たのかと問うたそうです。
すると血まみれの男は、どこから声を出しているのかは分からないけれどこう答えたそうです。
「私は、貴方の夫の親戚です」
無関係ではないですが、化けて出るには微妙な関係。それを指摘しようとしたところで、血まみれの男はこう説明しました。
「あなたの供養がとても上手だと聞いたのでやってきました。お経を唱えて、私を弔ってくれませんか」
そういうことなら、と祖父譲りの仏心が出てきた義母は、すぐにお経を唱えて男の霊を弔ってあげたそうです。
霊は成仏する直前に、お礼をしたいと言って、番号を教えてくれたそうです。
後日、義母は霊から教わった番号の宝くじを買いました。その宝くじは見事当選。多額ではありませんが、お経の返礼としては十分すぎるお金が手に入ったそうです。
タイの宝くじは何十枚も並べて売られていて、好きな番号を選んで買えるので、こういう事ができるんですね。
タイ怪談 ただのネコ @zeroyancat
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
永遠と一日だけ/ただのネコ
★38 エッセイ・ノンフィクション 連載中 406話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます