冴えないモブである俺をからかって辱めてくる学校1番の美人先輩 VS 俺
🔰ドロミーズ☆魚住
第1話 朝の先輩 VS 俺
「後輩くーん。おーい後輩くーん。ねぇ無視しないでくださいよ後輩くーん。この学校1番の美少女を、学校のアイドルと言っても過言ではない美少女を無視しないでくださいよ後輩くーん。泣いちゃいますよー? えーんえーん」
「無視はしていません。返事が面倒くさいのでやっていないだけです。お願いですから俺の頬をつんつんするの止めてくれませんか」
「嫌ですよーだ。ところで今更だけど私たち、カップルというか恋人って感じがしませんねぇ」
「そうですね、先輩」
「何でだろうねー?」
「それは俺たちが恋人ではないからでしょうね」
「えー? モブ高校1年生の
朝。学校へ登校する前の時間。
学校に真っ直ぐ向かおうとする俺の周囲に付きまとっているニマニマ笑顔の女子生徒にして1学年上の先輩とそんな他愛のない会話を交わす。
「いやぁ、こんな美少女と恋人になりたくないだなんて後輩くんの理想は高いですねぇ。今の人類に私以上の逸材いましたっけ? このままじゃ後輩くんは一生独身かもですよ?」
どう聞いてもナルシストの発言としか思えない台詞を口にしてみせる彼女だが、そんな彼女の容姿は発言通りであると誰しも頷かざるを得ないぐらいの美貌だった。
「学園でも人気の
濡れた
透き通るような白い肌に、遠目から見ても分かるぐらいの大きな
モデルのように細身で、すらりと伸びた細くしなやかな手足。
細く整った鼻梁と、芸術品を思わせる顔の輪郭線。
上品さと初々しさを連想させ、思わず目を逸らしてしまうぐらいに犯罪的な桜色の薄い唇。
色白なことも相まって、いかにもな深窓の令嬢といった雰囲気と、悪戯好きだと言わんばかりにニヤニヤニマニマと上がっている口角。
そして、学校指定のブレザーを花魁風に着崩し、スカートから見える黒いタイツで覆われた細くも長い美脚。
誰が見ても、美少女と認める程の美少女が彼女であった。
「まぁ後輩くんは確かにモブですけどねぇ」
「はいはい。先輩と違って俺はどうせモブですよ」
「そんなモブくんにこんなにも優しくしてあげるの私だけですよー? 勘違いしよ? あっ、この先輩、俺の事が100%好きなんだ。俺の彼女になりたいんだ……って勘違いしてもいいんですよー? さっさとしろしろー。おらおらー」
何度も何度も自分の右頬に先輩の冷たくて心地良い肌で覆われた指でつんつんするだなんていう暴挙をしやがる所為で周囲の登校中の生徒の視線が気になって仕方がない。
当然と言えば当然だろうか。
何せ俺にちょっかいをかけている彼女は学校1番の美少女高校2年生と名高き速水詩歌であるのだから、集客力という集客力は文字通り桁違いなのである。
だというのに、件の彼女は周囲に視線が集まっているのにも関わらず、それすらも俺を辱める為だけにそんな事を爪先立ちで背伸びした状態でし続ける。
そんな先輩の両頬は赤く染まっており、実に幸せだと言わんばかりにニコニコとニマニマとニヤニヤしていて……俺は思わずため息を吐き出すのであった。
「先輩、俺はこういう風に人の視線が集まる事をされるの苦手なんですけど」
「知ってるよー? だからしてるの。嫌でしょう? 嫌ですよねぇ? 私、一見すると平和を愛する美少女にしか見えませんがその実、人に嫌な事をするの大好きなのです」
「先輩ってドSですよね」
「ふっふっふ。よく言われます。そこが可愛いともよく言われます。ドMでむっつりスケベな後輩くんと相性抜群ですね?」
「そうですか。ですがもう1回言わせてください。最終警告です。俺はこうしてイチャイチャするのが苦手なんです」
「えー? なんでなんで? 人前で恋人らしくイチャイチャするのは恥ずかしくない事なんですよ?」
「人前でイチャイチャするのは恥ずかしい事なんですよ先輩。後、俺は先輩の恋人じゃありません」
「へぇ? ふぅん? それ本当ですかぁ? その感想は後輩くんだけじゃないんでしょうか? いくら恥ずかしいからって苦し紛れにそんなバレバレな言い訳をするだなんて後輩くんったらかわいいー」
「分かりました。それでは実際に体験してみましょうか」
「実際に体験って――」
「――皆さん、聞いてください!!!」
「ちょ、声大きっ……!」
「この先輩はー!
この人はー!
この美少女はー!
めちゃくちゃー!
いい匂いをしてまーす!
特に首筋ー!
俺と付き合い始めてからー!
俺の好きなー!
匂いの香水をー!
つけてくれてー!
こっそり俺にだけ嗅がせてくれまーす!」
「な、な、な、なな……何言ってるの……⁉ ちょっと待ってよ⁉ 私、まだお父さんとお母さんに後輩くんと付き合っているって言ってなくてぇ……⁉ バレたら本当に不味いからちょっと黙ってぇ……⁉」
「先輩とのキスはー!
すっごくー!
気持ち良いでーす!」
「にゃぁっ……⁉」
「そんな先輩ですがー!
いつもいつもー!
自分が年上だってー!
余裕そうな態度してるのにー!
先輩が自分からキスをした事はー!
1度もー!
たったの1度もー!
ありませーん!」
「ば、ば、ばっ……馬鹿ぁ……⁉ い、言わないでよ、そんな事⁉ プライバシーの侵害だよっ⁉ ほ、ほら、ご近所迷惑だよ⁉ 朝から大声出さないでよ! あ、ああぁ……! 私のクラスメイトがめっちゃ見てるぅ……! やだぁ……見ないで……! 聞かないでぇ……!」
「先輩はー!
俺より身長が低いのでー!
キスをする時はー!
つま先立ちをしますがー!
それでも届かないからー!
俺とキスをしたいときはー!
涙目になってー!
ぷるぷると恥ずかしさで震えながらー!
それでもキスがしたいのでー!
キスがしたいってー!
お願いしてきまーす!
めっちゃかわいいでーす!」
「ね、ね、ね⁉ 黙ろう⁉ ねぇ黙ってよ後輩くん⁉ お願いだから黙ろっか⁉ 恥ずかしいから止めてって言ってるじゃん! 聞いてよ馬鹿ぁ……⁉」
「黙りませーん!
黙らせるのならやり方っていうモノがあると思いまーす!」
「な、何⁉ 何をすれば黙ってくれるの⁉」
「先輩からー!
キスをしてくれたらー!
黙ってあげまーす!」
「ちょ、え、なっ、はぁ⁉ ほ、本当に何を言ってるの⁉ こんなに人の視線が集まっている状態で……き、き、き……キ、ス……するだなんて……そんなの、やった事ない……! だからいつもみたいに誰もいないところでしようよ⁉ ねぇ⁉」
「キスしなかったら――」
「――するからっ! キスしてあげるからっ! キスしてあげるから本当に黙って⁉」
「皆さーん!
今からー!
速水詩歌さんがー!
恥ずかし過ぎてー!
涙目になりながらー!
俺とキスしまーす!」
「うううう、うるさいっ! ムードってモノが分からないのかなぁ⁉ これだから男の人は……! ほ、ほらっ! キスしてあげるからさっさと屈んで……! あぁもう! 爪先立ちするなぁ! お願いだから屈んでってば! 意地悪しないでよっ……! キス、できないじゃん……⁉ お願いだからキスさせてってばぁ……⁉ キスさせてよぉ……!?」
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「
「人前でイチャイチャするのは恥ずかしい事だと分かって良かったですね、先輩」
「後輩くんはいつもいっつも! イチャイチャ! し過ぎ! なのっ! 人前でキスするだなんて本当に何を考えてるの!? キスっていうのは静かにこっそりするから楽しいのっ! 2人だけの世界に浸るのが好きなのっ! そういうのが私は好きなのっ! 人に見られながらキスを無理矢理するだなんて意味分かんないっ! 頭おかしいのっ!?」
「そう言う先輩ですけど、何だかんだで人に見られながらするキスも気持ちよさそうでしたが。あれは俺の見間違いでしょうか」
「……気持ちよかったけどぉ……! 本当にキスが上手いね後輩くんは……!?」
「先輩の為に毎日毎日さくらんぼのヘタを舌で結んでます。1日10回は練習してます」
「いつもいつも無表情のキスで私を無理やりに気持ちよくさせるよね……! 今日もその無表情が憎たらしいっ……!」
「そういう顔ですので。先輩は俺の顔は嫌いですか?」
「…………嫌い、じゃない…………」
「なら、いいじゃないですか」
「…………この、ドSっ…………!」
「先輩がドMなだけですよね?」
「ち、違うからっ! 私、そんなので気持ちよくなる訳ないからっ! そんな見当違いな事を言うのなら……決めた、うん決めた。いい⁉ 覚悟してね!? いつの日か! 絶対に! 後輩くんの無表情を羞恥の表情一色に塗り潰して、今まで生意気な事をしてごめんなさいって言わせてやるからっ!」
「そうですか。無理でしょうけれど頑張ってください。応援してます」
――そういう訳で。
これは冴えないモブである俺をからかって恥ずかしがらせたい学校1番の美人先輩 が、必死に頑張って彼氏を辱めようとするも無惨にも返り討ちに遭って学校で1番に辱められる話である。
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