第16話 調査報告会

ー 王宮 大会議室 ー


 事件発生から2週間後


 調査報告会の出席者は,以下のメンバーだ。


 国王,ナタリー最高顧問,尊師,国王秘書,カベール軍隊隊長(司会進行),軍隊副隊長,サルベラ長官(経緯説明の発表者),カロック衛兵隊長,現場調査官(現場状況の再現調査の発表者),検死官(死体調査の発表者),報告者B(被害女性の調査の発表者)


 国王「では,今から2週間前に起こったスリの犯人に向かった襲撃隊全滅事件の調査報告会を行う。


 では,カベール軍隊隊長,司会を頼む。

 カベール軍隊隊長「かしこまりました,国王。では,まず,この襲撃隊の派遣依頼を行った,サルベラ長官から経緯説明お願いします」


 サルベラ長官「では,派遣依頼の経緯をいたします。事のおこりは今から2週間前になりますが,繁華街でスリ事件が突発的に,多くなったことです。


 この報告を受け,私は,翌日から繁華街の衛兵員を50名から100名に増員させました。ところが,その日の夕方,スリの被害がさらに急増し,その被害金額は,前日の倍に達しました。それにも関わらず,犯人像の手がかりはまったくわからないという状況でした。


 そこで,一計を案じ,金貨に,位置発信の透明化魔法陣を構築してもらい,それをスリの犯人に盗んでもらうことで,スリの位置を特定できると判断しました。


 今回のスリの手口は,白昼にもかかわらず,まったく証拠を残さずにスリをしている点です。つまり,かなりの魔法の使い手である可能性がありました。


 そこで,翌日にこの作戦を実施して,うまく犯人の所在が特定できたら,襲撃隊にお願いして,犯人を逮捕してもらうのが目的だったわけです。以上です」


 カベール軍隊隊長「はい,経緯がわかりました。では,ひきつづき,事件当日の状況を詳しく説明お願います」


 サルベラ長官「ではひきつづき,事件当日の状況を説明します。位置発信の透明化魔法陣を構築した金貨は,200枚。200名の隊員の家族の方に協力お願いしました。10時に,時計台に集合し,繁華街をぶらぶらしてもらい,一時間後に全員,時計台に戻ってもらいました。すると,この一時間で全員の金貨がスリの被害にあっていました。これは驚くべきことでした。羅針盤をみると,反応は1点しかありませんでした。199枚が反応していなかったのです。たぶん,亜空間領域魔法陣を構築できる上位の魔法士であると予想しました。私は,部下を連れて,金貨の場所に行き,犯人を特定しました。仮面をした若い女性でした。


 その時は,レストランで一人で食事していました。共犯者がいると予想し,そのまま彼女の動向を注視しました。彼女が動いたのがちょうどお昼の12時でした。同じレストランにいた若い女性に声をかけて,お金を渡したようです。その後,2名は,斜め向かいの例の旅館にいきました。われわれは,部屋の番号をつきとめました。泊っているのは,若い男女2名。男は眼鏡をして15,16歳くらいだとのことです。


 その後,すぐ,眼鏡の男性が旅館にもどってきました。そこで,襲撃隊に状況を説明して,出動してもらったという訳です。私たちは,時計台で待機していました。


 20分後に,旅館から殺人,殺人,という声がしました。現場に行ってみると,旅館の中庭に,剣士5名,魔法士5名の首が胴体から離れていました。4階の事件現場では,廊下に剣士10名,魔法士10名の首が胴体から離れていました。犯人がまだ現場にいる可能性を考えて,すぐに王宮にもどり,国王に軍隊の派遣をお願いした次第です」


 カベール軍隊隊長「サルベラ長官,ご苦労様でした。その後,われわれが現場に急行し,旅館に突入したのですが,犯人はもういませんでした。また,被害女性が重体でしたが,まだ生きていましたので,回復魔法で治療しました。また,魔法士らに,現場の調査を実施してもらいました。

 では,その調査結果を現場調査官から報告してもらいます」


 現場調査官「はい,では,現場の調査結果を私から報告します。現場の魔法陣の痕跡の調査から,その現場の状況を再現いたします。


 襲撃隊は,犯人のいる部屋の壁6面に転移防止結界を構築しました。15分くらいかかったと思われます。このように犯人を逃げれないようにしてから,ドアを壊して突入しようとした。


 しかし,ドアには,なんと,魔法攻撃無効化結界が張ってあった。通常では,こんな無駄な魔力の使い方はしません。


 その疑問はここでは省きます。襲撃隊は,当然,この魔法攻撃無効化結界は,1分もかからずに,消滅すると思ていたでしょう。しかし,10分経ってもこの結界は消滅しなかった。襲撃隊は,異常事態だと気が付いたはずです。


 われわれは,最悪になる結果を知っていますから,ここでなぜ撤退しなかったのかと,疑問に思うのですが,現場では,スリグループはたったの2人なので,多少の異常事態があったとしても,撤退するまでもない,と判断するのも頷けます。


  さて,スリグループは,ドアの魔法攻撃無効化結界が攻撃されていることを知った。そして,その時は,すでに6面に転移防止結界のあることも知った。犯人は,とても慌てたことでしょう。もう逃げれないとわかったのですから」


 ナタリー最高顧問と尊師は,クスっと笑った。


 国王「ナタリー,尊師?何がおかしいのだ?」


 ナタリー「いえいえ,すいません,どうぞ説明続けてくだい」

 尊師「国王,すいません」


 笑い上戸のナタリーは,口に手をあてて笑いをなんとかこらえた。


 現場調査官「こほん。では,続けます」


 国王は,ムスっとしたが,何もいわなかった。


 現場調査官「こほん。こほん。 犯人は,急ぎ,6面にある転移防止結界の解除をおこなった。ですが,なぜ6面だったのでしょうか?逃げるなら,1面だけに集中して解除すればいいのにです。それに私の知る限り,この魔界で,10分で6面の結界を解除できるものは知りません。その点については,あとで,尊師とナタリー最高顧問のアドバイスがほしいところです。説明続けます。


 犯人は,ともかく,6面の結界解除を10分で成功した。その後,ドアの外に転送して,襲撃隊を全滅した。次に,敷地に転移し,残りの襲撃隊を全滅させて,逃走に成功した」


 国王「私から質問していいか?」


 現場調査官「もちろんでございます。国王」


 国王「襲撃隊がドアの結界を破るのに,なんで10分もかかっても解除できなったのだ?われわれの魔導士はそんなにレベルが低いのか?」


 現場調査官「残念ながら,われわれが現場に出向いた時には,魔法陣の残留がわずかしかなく,その時には,どのような状況か詳しくわからなったというのが正直なところです。


 そもそも,魔法攻撃無効化結界は,数秒程度しか発動させない事が多く,これまで,この結界を解除する必要性がなかったのです。

 ですから,解除するノウハウがわれわれにはないというのが正直なところです」


 国王「数秒しか発動しない結界が,何で10分も持続したのだ?」


 現場調査官「残念ながら詳しいことは分かっておりません。ただ,予想できる手がかりが1つありました。

 

 幸いなことに,この魔法攻撃無効化結界の痕跡が消える前に,その図柄の一部の映像を記録することができました。専門チームを組んで解析してみました。すると,われわれが使う結界ではなく,古代の結界の可能性がでてきました。古代魔法陣の書籍は,コピー本がほとんど出回っていません。彼らがどの古代魔法陣の書籍を見て構築したのか,調べるのにしても調べようがありません。今はここまでしか調査できませんでした。


 このことから,予想しますに,われわれの知っている魔法攻撃無効化結界ではなく,古代の,つまり,まったく別の魔法攻撃無効化結界であった可能性が浮上してきました。そのため,少ない魔力でも10分も持続させることができたと予想することができます。


 国王「なるほど。犯人のレベルが高かった,ということだな?」

 現場調査官「端的に言うと,そういうことになると思います」


 国王「犯人のレベルが高いことは分かった。もっとも,そんなこと,30人を2人で全滅させたんだから,詳しく説明を聞かなくてもガキでも分かる。もうくだらん説明はよい。犯人逮捕できるかどうかだ。サルベラ長官,今後,犯人を逮捕できる見込みはあるのか?」


 サルベラ長官「現在,2つの方面で,犯人の追跡をおこなっております。犯人は,男女の若い2人組。特徴があります。全旅館に指名手配をしております。その他,食堂,繁華街などに,ビラを配っており,民間からの情報を集めております。日に5,6件くるのですが,これまで,全部該当しませんでした。


 位置発信の透明化魔法陣を構築した200枚の金貨の行方のほうも,24時間,羅針盤を観察させております。


 そのうち,1枚は,被害者の所持品から見つかりました。ですが,残りの199枚は,あれから羅針盤にもいっさい映っておりません。今後,亜空間の収納場所から出したときに,反応するはずです。万が一すぐに金貨の魔法陣を解除できてたとしても,金貨を調べる時に,亜空間から出す必要があるからです。遅かれ早かれ犯人の所在がわかるはずです」


 国王「犯人の所在が分かったとして,逮捕できるのか?だれが逮捕,いや,殺すといってもいいが,だれが犯人を殺せるのだ?教えてくれ」


 カベール軍隊隊長「国王,犯人の所在がわかった場合は,わたくしが責任をもって犯人を討伐します。私の管理する軍隊2000人をもってすれば,充分に可能だと考えています。その内,S級とSS級の構成は,SS級1名,S級30名の魔法士,SS級2名S級40名の剣士ですので,余裕で討伐できると信じております」


 国王「そうか。その場合,隊長にまかせていいのだな?」


 カベール軍隊隊長「はい。おまかせください。責任を持って討伐いたします」


 国王「ナタリーよ。先ほどから,嬉しそうな顔して,何かいいたいことがあるなら,わしに遠慮せんでいいなさい」


 ナタリー「はい,では,お言葉に甘えて私の考えを申し上げます。尊師と相談したわけではありませんが,私の言葉は,尊師も同意見であることをお含みください。


 まず,今回の事件の発端は,スリの被害です。スリの犯人は,もともと人殺しをしていませんでした。では,なんでこんなひどい状況になったのでしょう。答えは簡単です」


 ナタリーは,間をおいて言った。


 ナタリー「決して,歯向かってはならない相手に牙を向けたからです。事件の部屋にいた被害者は重症でした。もし,あの部屋を襲っていなかったら,被害者は,回復魔法で治療されて,傷ひとつ残らないで解放されたでしょう。それは,前日の女性の例からも明らかです。


 もし,今後,犯人が見つかって,そこに総攻撃をカベール軍隊隊長がすることになるでしょう。そのことに,私や尊師がとやかく言う権利はありません。どうぞ好きにしてください。


 ですが,総攻撃した結果は,私たちは明確に予想できます。首が胴から離れた死体が,2000体になるだけです。あの事件現場の殺し方をみればわかります。


 スリグループは逃げるだけなら,襲撃隊を殺さずに余裕で逃げれたはずです。


 ですが,襲撃隊は,廊下側と敷地に分かれていたにもかかわらず,全員皆殺しです。そして,可能性は低いでしょうけど,襲撃隊を総監督する国王の命さえもあやうい状況です。


 もし,彼らが国王を狙うと決めたら,国王を守れる人は,我々含めて,この魔界にはおりません。


 彼らのスタイルは,攻撃されたら皆殺しすると判断されるからです。


 彼らは,もともとこの王都では人殺しをするつもりはなかったでしょう。スリはしたでしょうけど。


 私の結論としては,今後一切,彼らには,一切かかわらないことを提案します。それが,国王のため,この王国のためだと考えます。それだけです」


 国王「なるほど,ナタリーの考えはわかった。尊師よ,ナタリーは尊師と同じ意見だと申したが,誠か?」


 尊師「はい。まったく同意見です。もう少し,わかりやすい例えを言いましょう。極端な例の方が,いいでしょう。


 われわれはミツバチです。国王は,女王バチになります。魔法士,剣士は,働バチに相当します。


 そして,スリの犯人は,人間と考えればいいでしょう。スリの犯人,人間は,ときどき,蜜を奪っていきます。決して,ハチを殺したりしません。


 でも怒ったミツバチは人間を襲いました。でもその人間は,防護服を被っていました。いくら針をさしても痛くもありません。刺したハチは自滅するか,必ず人間に殺されます。例外なく。人間は腹をたてて,そのハチの巣を駆除してしまうかもしれません。その時は王国の終わりです。


 いままでの話を聞いて,そのように感じました。そして,ナタリーもですが,私は,たとえ国王の命令でも,かれらの討伐に参加しません。死にたくないからです。絶対死ぬと分かって,討伐する人はいません。以上です」



 国王「そうか,,,それほどの敵か,,,,,まだ検死官の報告が残ってたな」


 検死官「では,私から説明します。死体を詳しく調査しました。首が切断された以外,まったくの外傷はありませんでした。あたかも無抵抗状態で刃物で切断さたかのようです。彼らが反撃した形跡はまったくありませんでした。


 このことから,廊下にいる20名は,剣や魔法を扱う間のなく殺されたことになります。つまり,わずか,1,2秒で20名が全滅したと考えるのが理論的に導かれます。もはや人間の速さではありません。SS級の剣士であれば,5倍速は可能ですが,それ以上の速度で動いたこと思われます。おそらく10倍速か20倍速かもしれません。


 敷地にいる10人も同様です。たぶん,1秒で全員が全滅したと考えるのが理論的に正しいと思います。


 このことから,犯人は,人ではないと判断したくなりました。悪魔です。化け物です。


 さきほどナタリー最高顧問がおっしゃいましたが,2000名で総攻撃したら,確実に首が胴から離れた死体が2000体できると。私もまったく同意見です。相手は,肉眼で見えるスピードを超えて行動できる怪物だと判断されるからです。


 そして,ナタリー最高顧問と尊師の意見に私は体が震えました。現場の状況と死体の結果から導き出されたわたしの推論,つまり,『この犯人には決して触れてはならない化け物である』という,自分の荒唐無稽な愚かな考えが,ナタリー最高顧問と尊師の意見にぴったり合ったからです。


 現場も見ていない,死体も見ていない,ナタリー最高顧問と尊師にはほんとうに敬服いたします。いままでの話から,このようなご意見を出されるとは,わたしは,これまでも尊敬していましたが,ますます尊敬するようになりました」


 ナタリー最高顧問と尊師は,ニコッとほほえんだ。


 国王「そうか,困ったのう。つまり,こうか?つっつけば,その分,こちらの被害が出るだけ。ほっとけば,スリ被害ですむと」


 誰も返事しなった。


 国王「国としての威厳も何もないな。もういい!会議は,ここまでだ」

 カベール軍隊隊長「国王,すいませんが,被害者の状況説明の報告が残っているのですが」


 国王「もう,細かな解析の話はよい。耳が痛いわ!」

 国王秘書「国王♡」


 女性特有のあまい声でいった。

 

 国王秘書「報告者も,王様に報告するために,徹夜でがんばったのだと思いますよ。機嫌なおして,5分だけでも時間あげたら,もっと王様を尊敬しますし,私もとてもうれしいですわ」


 国王「そうか♡ じゃあ,わかった,わかった。さっさとやれ」


 報告者B「国王さま,貴重な時間いただきまして,ありがとうございます。手短に簡潔に説明いたします。


 被害者は,われわれが来るまで,しばらく放置されていたため,瀕死の状態でした。急ぎ,止血と体力の回復を図る回復魔法を行いました。その後,針が何本も胸に貫かれていましたので,一本一本引き抜いて回復魔法をかける,という地味な作業を行っていました。

 4名のS級魔法士が回復魔法をかけていたので,針を除く作業以外,10分で終わると思っていました。しかし,なぜか1時間以上もかかってしまいました。


 命に別状がない状態になったので,いったん,彼女を廊下にまで移動させて,王宮の総合病院に転移させました。部屋からだと,解除されたとはいえ,転移防止結界の悪影響があるかもしれないと考えたからです。


 幸い,被害にあった女性は,一命を取り留めました。その後,3日ほどで退院しました。 


 実は,女性の延命措置に夢中になっていて,すぐには気づかなかったのですが,女性が寝ていたベッドには,何時間も持続可能な,低レベルの魔法攻撃無効化結界が張ってあったのです。


 国王「何?何時間も持続するだと?」

 報告者B「はい,延命措置にあたった魔法士らが,回復魔法の効きが悪かった,と愚痴っていたのですが,それが,1人ではなく,あのベッドで行った魔法士全員がそのように感じていたことが判明しました。そこで,もしかしたら,未だに有効な魔法攻撃無効化結界が残っている可能性があると思って,急ぎ,そのベッドの周囲で結界を探しました。


 すでに,事件発生から3時間が経過していましたが,なんと,結界が残っていたのです!」


 国王「3時間も持続するのか?魔法石も何もないのにか?」

 報告者B「はい,いえ,正確には,完全な結界ではありませんでした。どうも,魔力が使われると,その時だけ起動する,という結界でした。これを発見した時は,びっくりしました。こんな高等な魔法陣を構築できるのは,尊師かナタリー最高顧問くらいしかいません。


 一瞬,彼らが犯人ではないかと疑ったほどです」


 尊師「こほん,こほん」


 報告者B「尊師,ナタリー最高顧問,疑って申し訳ありません。


 報告続けます。そこで,急ぎ,その魔法陣の図案を記録しようとしたのですが,記録するためには,魔力を放出して,結界を反応させなくてはなりません。ですが,記録魔法陣も効力を弱められてしまい,充分に記録できませんでした。そうこうしているうちに,この結界は消失してしまいました。


 もう少し早く気が付けばよかったのですが,残念です。


 でも,現象面から考えて,通常の魔法攻撃無効化魔法陣の魔力を温存させるため,魔力にだけ反応するような低消費型の魔力感知魔法陣のようなものが組み込まれているのではないかと予想しました。


 そこで,記録が不鮮明な図案でしたが,解析を試みたところ,やはり,魔法攻撃無効化魔法陣とは別のもうひとつの魔法陣が連結してありました。


 歯抜け状態な図案なので,もともとどのような図案だったのか,復元するのは無理でした。それが悔やまれます,,,」


 国王「まあいい。被害者が助かったのだ。それでよしとすべきだ」


 報告者B「ありがとうございます。ですが,われわれは,現場調査官,検死官,ナタリー最高顧問,尊師の話から,今なら,相手がわれわれの手の負えない化け物だと理解できるのですが,現場では,そんな化け物がこの世にいるという発想はなかったと思います。


 この世に化け物は存在するという考えが少しでもあったなら,ドアの結界が異常事態だと,気が付いた時点で,相手は手に負えない化け物だという考えに到達していてくれたなら,すぐに撤退する,という判断ができたのかもしれません,,,


 ・・・・・


 あのような最悪な結果に終わったのがつらいです。私の兄も,あの襲撃隊のメンバーでした。 以上です」


 国王「そうか,,,わしとしても,なんとか犯人を討伐して,うらみをはらしてやりたい。


 サルベラ長官,とりあえずは,あれだ,これまでどおり,スリの犯人捜しをしてくれ。もし,犯人の場所が特定できたら。すぐに報告せよ。


 カベール軍隊隊長,これまでの議論を踏まえて,一ヵ月以内に,犯人を確実に討伐できる方法を,3通り考えて私に示しなさい。その案の実効性について,ナタリーと尊師の意見を参考にして,最終的に,その案を採用するか,もしくは,何もしないか,その時に判断する。


 ほかに何かいいたいものはおるか?ないか。では,解散とする。ただし,ナタリーと尊師は,このままここに残りなさい」


 その後,大会議室では,国王とナタリー,尊師の3名だけになった。


 国王「ナタリー,尊師よ。お前たち,スリ犯人が誰か知っているな?そうでなければ,あの検死官と同じ結果になるわけがない。


 秘密のこともあるかもしれんが,わしがもっと正確に判断できるように,追加説明してもらうといいのだが」


 ナタリー「国王の立場からすれば当然かと思います。わたしからは,なにもいえません。尊師の判断にまかせます」


 尊師「国王,ここだけの話にしていただきたくお願い申しあげます。わたくしも宣誓魔法陣で契約している身であり,どうぞご理解ください」


 尊師は,宣誓魔法陣を出すことによって,言葉を濁すに足る公明正大な根拠を示した。


 国王「わかった。約束する」


 尊師「まず,1点目,このスリ事件は,いまから6カ月に以内に終わりをつげます。確実にそうなります。これ以上説明することは契約上できません。おゆるしください。


 2点目,襲撃隊を全滅させたのは,2名ではありません。1名です。1名であの結果になったのです。


 3点目,6枚の転送防御結界を10分で解除したとの説明がありました。それも間違いです」


 国王「なんと。10分ではないと?」


 尊師「はい。あの程度なら,犯人は6枚の結界を5秒もかからず解除したでしょう」


 国王はびっくりして立ち上がった。「なに?」


 尊師「あの犯人に結界は意味がないのです。


 4点目,犯人は,人が目で追うことのできない速さで移動できます。この王国の軍隊をだそうが,意味がありません。検死官の予想は見事でした。逆に,私が検死官の予想を尊敬します。


 ですから,わたしがもっと正確に提案するとすれば,犯人の場所がわかったら,6ヵ月間の生活費を与えて王都を出てもらうのがいいでしょう。それで被害はおさまります。


 こんな事件がなかったら,王宮に招いて,剣技や魔法の指導を仰いでもよかったでしょう。でもそれも今の状況ではもうだめでしょう。ちょっと残念です。


 契約上のしばりがあり,わたしがぎりぎり言えるのは,ここまでです。ご容赦ください」


 国王「わかった。よくここまで言ってくれた。感謝する。これで,わしも正確に判断できるというものだ」


ーーー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る