第1節 千雪が行く! ー 魔大陸編 ー

@anyun55

第1章 修行時代

第1話 魔王召喚と修行


 ここは,日本ではない。日本と似ている月本という国だ。でも,社会体制は,日本に似ているが,総理大臣ではなく,代わりに大統領がいるという国だ。


 この月本国の首都,東都の外れにある民家に,一人の少女がいる。


 彼女の名は,早乙女千雪,15歳,高校1年生。親は海外で生活している。彼女は現在一軒家でひとりで生活中だ。


 千雪は高校を行かなくなった。理由は簡単だ。千雪が美人だったからだ。いや,絶世の美人と形容してもいいのだが,その美をうまく胡麻化そうと努力してきた。それでもその美を完全に隠せなかった。


 そのためストーカーなどの被害にあったり,クラスの女性にいじめにあったりしたのが原因だ。今は,無理やりソバカスを作ってブス化した。


 学力の面では,記憶力は比較的いいほうだったためか,高卒認定試験は軽くクリアできるレベルだ。だが,大学に行くつもりはないので,受けるつもりはない。


 彼女の愛読書は,魔法関連の本,占い,占星術,中国の八卦,西洋魔術などだ。将来は,占い師,未来の予言師、悪魔祓い,除霊師になって,インスタやユーチューブなどで有名になって,生活できればいいと漠然と考えている。いずれは,彼女の目の前に,きっとすてきなイケメンの男性が現れて,恋に落ちて,家庭をもって,幸せな一生をおくる,ということを夢見ている。


 ここ数ヶ月は部屋に引きこもって,ネットと占いの本ばかり読む日々だ。そんな折,ネットで悪魔召喚のホームページを見つけた。その召喚の具体的な方法が詳しく記載されていた。


 『乙女たちよ。魔界の魔王を召喚せよ。さすれば,魔法をしんぜよう。世界の富,栄華を得ることができるであろう。ただし,対価を払ってもらわねばならぬ。魔法の習得ができたら,われに半年間下僕として仕えることを課す。

 以下の魔法陣に,真夜中の0時ちょうどから5分間,強くわれの召喚を念じるだけでよい。念が弱いと,召喚は失敗する。召喚が成功次第,このページは消滅する』


 千雪はまったく疑うことをしなかった。どうせ高校もいかないし,半年間,魔王の元で働くのもいいかなぁ,と軽く考えた。それに,魔法が使えるようになるなんて,なんてすきなことなんでしょう,と期待と夢が膨らんだ。


 真夜中の0時。


 冗談半分で,5分間ほど,声を上げて,モニター画面の魔法陣に向かって語った。


 千雪「魔王さん,ぜひここに来てくだい。魔王さん,私の願いを叶えてください。私に魔法を与えてください。ここに書かれてある条件は,すべて同意します。半年間,魔王様の下僕として働きます」


 すると、画面の魔法陣が光りだした。そして,さらに一層強く光だし,目が開けていられないほどだった。光が止み,目をあけると,そこに、一人の男性が立っていた。


 黒のマント姿で,中肉中背の,いかにも魔王というイメージ通りの姿がそこにあった。年齢は16歳前後。髪はややぼさぼさ頭で,見だしなみにあまり気をつかってないようだ。キリッと鼻筋の通ったイケメンであり,千雪の好みの顔だ。


 魔王「私を召喚したは,あなたか?」

 ちょっとぎこちない月本語をしゃべりだした。

 千雪「魔王様ですか?私、早乙女千雪です。千雪と呼んでもらうと嬉しいです。15歳です。とても健康です。かなりソバカスがありますけど,かなりの美人だと思います。半年間,魔王様の下僕として働くことも納得しています。今すぐにでも働けます。どうか,魔法をお与えください」

 魔王「千雪というのか。良い名前だ」


 魔王は,ところどころ傷があって,一部分が欠けていて,ぼろぼろの指輪を取り出した。


 魔王「この指輪は,魔界では,古来から伝わる伝説級の指輪だ。これを入手するため,幾多の血が流れたことか。これを今,千雪に与える」


 魔王は千雪の左手を握り,その薬指に指輪をはめた。千雪は,この指輪があればすぐ魔法が使えると思って感激した。


 千雪「この指輪がとても貴重なものだということはわかりました。魔王様の元で,一生懸命務めさせていただきます」

 魔王「あなたはこれから魔法を習得するために,修行をしなければなりません。その修行を指導するのは,私ではありません。どのくらいの期間で魔法を習得できるのかは,あなたの指導者に聞いてください」


 千雪はちょっとがっかりした。指輪をもらったら,すぐに魔法が使えると思ったからだ。


 千雪「すぐに魔法が使える訳ではないのでか?なんか,ちょっと残念です,,,」


 魔王は,千雪の言葉に反応せず,肌色のブレスレットを取り出して,千雪の左腕につけた。


 魔王「これは一定の魔力が身についたら、その魔力に反応して、自動で私の元に転移する魔道具だ。これを肌身離さず身につけなさい。私がどこにいようと、魔道具が導いてくれる。それまでは,魔法の習得に専念しなさい。下僕になるのは,私の元に来てからでよい」

 千雪「魔王様,ブレスレッドの方はわかりましたけど,指輪の使い方がわからないのですけど」

 魔王「何もしなくてもいい。自ずとわかるはずだ。なにか質問はありますか?」

 千雪「はい。なんか,いろいろ聞きたいのですけど,ちょっと頭が混乱していて。あの,魔王様の元に転送される前に,魔王さまと連絡とる方法ってあるのですか?」

 魔王「連絡は不要だ。魔法の習得はかなり厳しいと聞きている。千雪よ,あなたとは,今日が初対面だ。だが,私は確信した。一目みて,千雪には,その試練に耐えるだけの力があると。どうか,私の期待に答えておくれ」


 千雪は嬉しくなった。


 千雪「はい,魔王様。ご期待に答えたいと思います」

 魔王「そうか。よかった。では,私はもう戻ることにする。ではさらばだ」


 魔王は自分のブレスレットを触り,時空亀裂魔法陣を起動して自分の世界に戻った。


 千雪はなんか幸福に包まれたような感じがした。


 千雪は『はい,魔王様。魔王様のために、身も心も捧げます。この身は魔王様のものです』と独り言をいった。そして,ベッドに潜り込んで,ぼろぼろの指輪とブレスレットを眺めながら,そのまま寝入ってしまった。


 しばらくすると,指輪から勝手に時空亀裂魔法陣が起動した。そして千雪の体は,その魔法陣に吸い込まれて,異空間へと転送された。



 ーーー

  千雪が目覚めると,そこは見たこともない部屋だった。木目板の壁,ベッドも木製で,机がぽつんとあった。


 千雪は,ここは夢の世界か,異世界の世界かよくわからなかったが,そのどちらかであることはわかった。


 机の上に,一枚の紙が置いてあった。それには,こう書かれていた。


 『この部屋は自由に使ってよろしい。明日の朝から修行を始める。ジャージに着替えて道場に来るように』


 この紙を読んで,千雪は異世界に転送されたと納得することにした。


 ジャージはベッドのそばに数着あった。2LDKの一軒家で,温水,風呂,水洗トイレなど,元の世界と変わらない環境が整っていた。冷蔵庫,空調も完備している。ただ,その熱源なり水源は,どれも固定式魔法陣が使われている。隣の部屋を開けると,古書が棚一杯に並んでいた。どれもまったく読めない文字だ。魔法陣が描かれているので,魔法書だということはわかる。この本が読めるのに,どれだけ時間がかかるのだろう?


 ジャージを着るにも,下着がまったくない。その辺は,おいおい問題解決していこう。タオルが多めにあったので,タオルを切り裂いて,サラシ風にして,運動しても胸が揺れないようにした。でも,もともとBカップなので,なくてもいいのだが。テレビやインターネットはないが,CDプレーヤー,カセットテープデッキ,魔法陣式湯沸かし器,炊飯器具はある。食材も数日分はあるようだ。


 部屋から出てみると,緑豊かな高原地域の感じで,遠くの山々には,雪渓が残っていた。周囲に自分が寝ていた一軒家以外には,道場とおぼしき,やや大きな建物があるだけだった。

 千雪はその建物に入ることにした。 


 千雪「失礼します。お邪魔します」


 道場らしき建物に入ると,30歳くらいで,やさしい感じのジャージ姿の男性が座っていた。


 男性「入りなさい」


 千雪はその男性とやや距離をとって,同じく正座ですわった。そして,千雪は自己紹介をした。


 千雪「私は早乙女千雪,15歳です。魔王様に指輪をいただいて,魔法を習得しに来ました。机の上に紙が置いてあって,それには,明日から道場に来なさいと書いてあったのですが、ここでよろしいのでしょうか?」


 千雪の自己紹介を聞いたその男性は,ゆっくりと口を開いた。


 男性「千雪と申すのか。だが,ここでは別の名前を使いなさい。一般的な名前がいい。例えば,サリーという名前はどうかな?」

 千雪「はい,わかりました。では,サリーと名乗りましょう」

 男性「ではサリーと呼ぶことにしよう。私のことは師匠と呼びなさい。ここが道場だ。明日の朝8時にはここに来なさい。午前中4時間,午後4時間の合計8時間程度を肉体改造,つまり武術の修練にあてる。その成果をみて,次のステップ,魔法の習得に移るかどうかを決める」

 千雪「師匠,わかりました。明日からよろしくお願いします。私が寝泊りする家には,魔法書があるのですが,読み方を教えてもらえますか?」

 師匠「あれは古代魔族文字で書かれている。月本語から直接調べる辞典はない。現代魔族語古代魔族語対比辞典、現代魔族語発音辞典、魔族語の日常会話集は,すでに準備してある。そして,私が月本国で生活している間に作った自作の月本語現代魔族語対比辞典がある。明日用意してあげるので,それらを使って独学で調べてみなさい。会話集もあるから,まずは,現代魔族語を覚えなさい。わからないところがあれば,その都度質問しなさい。基本的な文法は,月本語と同じなので,単語さえ理解できれば,さほど読むには苦労しないと思う。おいおい私たちの会話は魔族語で行うようにする。近くの村では,魔族語しか通じないので,一ヶ月くらいで簡単な魔族語を話せるようになりなさい。日用品の補充は,いずれは,すべて自分で行うようにしなさい。その他,わからないことは,都度聞きなさい」

 千雪「あの師匠,なんで月本語がペラペラなんですか?」

 師匠「サリーのしている指輪は,精霊が宿っている。その精霊様の予言があった。ここに,サリーが現れると。それも,10年も前にな。私は,精霊様の命を受けて,10年前に地球界の月本国に転移して,こっそりと月本国人に紛れて生活してきたのだ。そして私も1ヵ月前,月本国からここに帰ってきたばかりだ。すべては,サリー,お前のためだ。お前を育てる環境は,すでに10年前から整備されていた。その期待に答えてみなさい」


 千雪「えーーー!!!」


 千雪は,びっくりして,思わず声を挙げた。

 さらに,師匠から大きな旅行かばんを渡された。そこには,当面の生活必需品が詰められていた。女性物の下着類,生理用品,サラシ,運動靴などが詰まっていた。当面はこれで生活できそうだ。それにしても,大の男性が,このような女性物の備品を準備するのは恥ずかしかったに違いないと,クスッと笑った。


ーーー

初日の訓練が始まった。


 師匠「魔法を習得するには,強靭な体と体力が必要となる。まず,体つくりから始める。格闘術の8種類の連続技を6回繰り返す一連の演舞,名付けて『48式』を覚えなさい」


 師匠がこの技の見本を示した。


 1式の動作は,右手正拳,左手正拳を2回繰り返し,右肘および左肘による真横への攻撃,右脚による後ろ中段蹴り,一歩下がって,左脚による上段蹴り,というものである。この8種類の連続技の動作全体で一つの式だ。その連続技が8種類あり,それを6回繰り返すので48式と呼んでいる。

 一式の動作は約10秒かけて行う。48式をすべて演舞するのに8分かかる。その後,2分間呼吸を整える。その繰り返しを行う。


 午前中の4時間は,この単調な動作を繰り返すだけだ。昼休みは2時間とる。午後2時から6時まで,また同じことを繰り返す。


 ただし,1時間ごとに10分休息をとる。その方法は,あぐらをして瞑想を行う。下腹部の位置にピンポンの玉のような核を感じるように努力する。


 しかし,最初の頃は何も感じることはできない。師匠の説明では,気を感じるというイメージらしいのだ。今はイメージトレーニングだけでいいそうだ。気を体内に循環させるというイメージだ。下腹部から,胸,首,頭,肩,腕,手,指,腰,脚,足,足の指,背中へと移動して,体内から体表面へ,さらに体表面から5cm離れた空間面へと気の流れをイメージしていく。最初はゆっくり,そしてだんだんと速く気の流れを循環させる。


 このように,休息時間はイメージトレーニングにあてられた。イメージだけでいいので簡単だ。


 千雪は48式を覚えて,修練を開始した。千雪は師匠にあれこれと質問したかったが,当面は言われるまま従うことにした。


 午前中の修練が終わると,汗だくになり,サラシや下着は汗を大量に吸ってしまう。お昼休みに部屋に戻って,いったん軽くシャワーを浴びて,汗を流し,乾いたサラシと下着に着替えて,午後からまた同じ48式を繰り返し行った。


 夕方は,魔族語会話集で,魔族語の勉強をした。師匠が気をきかして,近くの村の子供と会話する機会をときどき与えてくれるので,いい刺激になった。


 食材は、3日に1回程度,近くの村から運ばれてきた。その都度,師匠がお金を支払った。師匠はどこからお金を稼ぐのか疑問だった。


 1周間が経過した。


 少し慣れた頃,師匠は一言,8分かけて行っている48式を7分に短縮しなさい,と命じた。休息時間は3分に増える。

 しかし、これは千雪にとっては,かなりきついことだった。師匠は,何度も千雪の動作の切れが悪い,と注意した。ケリの角度、突きの形など,時間が短くなると,ぶれてくるのが千雪でもわかった。それを修正しつつ,7分で48式を演舞するのだ。

 

 千雪は,黙々と修練の日々をこなしていった。


 ーーー

 修練を続けて,1ヶ月が経過した。その間,千雪がいるこの世界がどのようなものかが,少しだけわかった。

 この大陸は,魔大陸と呼ばれ,ここの人たちは,人間と同じなのだが,魔法を使うため,『魔族』と呼び,この世界を『魔界』と呼ぶようだ。


 1ヶ月経過したころから,師匠からもらった日用品が底をつきはじめた。1週間に1日だけ、休みの日がある。今日は,初めて師匠と一緒に村に行って,買い出しをしにいく日だ。師匠からお金をいくらかもらっているので,自分で初めて魔族語による実践会話練習ができる。

 石鹸,衣類,果物など,順調に購入できた。ただ,この場末の村で,若い女性が片言の魔族語を話すのは,ほんとに珍しく,すぐに有名になってしまった。


 お店のおばさんが,千雪に声をかけた。


 おばさん「あら?どこの奴隷の子かしら?かわいそうにね。いじめられたら,ここに助けに来ていいわよ」


 千雪は,まったく聞き取れなかったので,師匠に何を言っていのるか聞いた。師匠は,ニコッと笑って返答した。


 師匠「私が,ハンサムな師匠なので,弟子は幸せだ。しっかりと師匠孝行をしなさい」


 それを聞いて,千雪はおばさんに魔族語で返事した。


 千雪「いろいろとアドバイスありがとうございます。そのようにしますね」


 その後,村で仕事を斡旋する仕事紹介所や,レストランなどの場所を教えてもらった。今の千雪の語学力では,生活するにも不便を感じるが,2ヶ月後には,そこそこコミュニケーションがとれそうだと感じた。


 魔法の修練では,この1ヶ月が経過した頃から,48式を7分から6分に短縮し始めた。休息時間は4分となった。


 だいたい,人間がいくら修練しても,動く速さには限界がある。48式を演舞するのに,この6分で行うのが限界だ。


 この限界を超えるのが,この修練の目的だ。


 師匠「サリー(修練時代の千雪の名前)よ。この調子で,修練していくと,魔法が使えるようになるには,10年くらいかかってしまうだろう」

 千雪「えーー?なんと!10年ですか!長いですね。今,15歳だから,25歳になってしまうのですね」


 千雪は,かなりショックを受けた。だが,いまさら,止める訳にもいかない。意気消沈した声で言葉を続けた。


 千雪「でも,でも,はい,わかりました。なんとか,ギブアップしないで,がんばってみます。でも,すぐに魔法が使えると思っていたので,なかりショックでした」

 師匠「まあ,そう,がっかりするな。この魔界で行っている魔法の修業は,サリーがいま行っている方法とはまったく異なるものだ」

 千雪「そうなんですか?」

 師匠「そうだ。サリーは,今,気の流れをイメージして修練している。この気の流れを実際に感じることができるには,才能があるものでも10年はかかってしまう。私は,この『気』を『霊力』と呼んでいる。霊力を感じることができれば,それからの魔法の習得は容易だ。だが,魔族が習得する方法とは異なるものだ」

 千雪「あの,魔族の方が習得する方法は,簡単なのですか?」

 師匠「魔族が習得するのは,『魔力』だ。霊力とは異なる。魔族は,もともと魔力を持って生まれるから,魔力を習得しやすい。才能のあるものなら2,3年で習得できてしまい,初級レベルの魔法が扱えるようになる」

 千雪「私も,魔力を習得したいです。10年よりも2,3年の方がいいですから」

 師匠「それは無理だ。サリーは,地球界生まれだから,魔力は生まれつき持っていない。それなら,霊力を習得するほうがいいだろう」

 千雪「そうなんですね」


 千雪は,またがったりした。


 師匠「サリーは,10年かけて霊力を実際に感じ,かつ下腹部に霊力の核を形成させることが必要となる。だが,才能のないものでは一生かかっても無理だ」


 ここで,師匠は,一息ついて,言葉を続けた。

 

 師匠「サリーよ。心配することはない。サリーには,類まれな才能がある。霊力の才能がある」

 千雪「どうして私に才能があるって,わかるのですか?まだ,修練初めて1ヶ月しかたっていませんけど,,,」


 師匠は,ニヤッと笑って言った。


 師匠「ふふふ。そのボロボロの指輪を見なさい。その指輪は,『霊珠の指輪』という。そして,その指輪には,精霊様が宿ってる。その精霊様が言ったのだ。サリー,あなたには才能があると。サリーは,精霊様に選ばれたのだよ」

 

 千雪は,精霊様と言われても,よくわからなかった。


 千雪「精霊様って,何ですか?よくわからないのですけど」

 師匠「今は,よくわからなくてよい。人間と神の中間的な存在,とでも考えておきなさい。地球界では,『天使』に意味的に近いかもしれん」


 千雪「精霊様って,天使なんですね。天使が何かはよくわかりませんけど,なんとなくイメージがつきました。でも,この霊珠の指輪は,なんで,こんなにボロボロなんですか?」


 師匠「そうだな。では,その指輪にまつわる話をするとしよう。精霊様から聞いたことだが,今から11年前,先代の国王が霊力の修練という,非効率的な方法に腹を立て,その指輪を粉々にして,近くの池に捨てた。だが,それでも精霊を宿す指輪は,死ぬことはなかった。1年ほど時間をかけて,見かけはボロボロでも,なんとか指輪の形に修復した。私は偶然その修復中の,ボロボロの指輪を10年前に拾った。それが精霊が宿していると分かったので,それを指にはめて自分のものとした。精霊を宿した指輪をしていると,何かしらの加護を受けられるからね。


 私はその後すぐ地方豪族の反乱鎮圧のため辺境に出向かなければならなかった。だが,その地で敵の罠にかかり,絶体絶命の危機に陥ってしまった。

 その時だ。その指輪の精霊が私に取引を持ち掛けた。10年間,精霊様の言うことを聞け。そうすれば,この危機から救ってあげると。


 私に選択の余地はなかった。精霊様の提案に同意した。精霊様の約束に従い,私はその後まもなく,時空亀裂魔法陣を起動して月本国に来た。月本語を覚えるため,そして,月本国に来てから,精霊様の指導の元で,霊力の修練を開始した。ゼロからのスタートだった。月本国に来て10年後,やっと,霊力の核をある程度の大きさに形成できるようになった。そして,1ヵ月前に,サリーがこの魔界に転送されると同時に,私もここに転送してきた」


千雪「そうだったのですね」



ーーー

 師匠「サリーよ。今から10年も修練するのはつらかろう。その10年分の修練の成果を今からお前に渡す」


 千雪「えー!!ほんとうですか!師匠,そんなことできるのですか」

 師匠「私は,もともと霊力ではなく,魔力を使って魔法を行う。この10年間に私が創った霊力の核は,もともとサリーに渡すためのものだ。それも精霊様からの指示だ。精霊様に感謝するのだな。まだ会ったこともないと思うが」


 千雪「はい,まだ会っていませんけど,この指輪の精霊様に感謝します」

 

 千雪はそいういって,このボロボロの指輪にキスした。


 師匠「では,転送の準備を行う。下腹部に魔法陣を構築しなければならん。恥ずかしいかもしれんが,全裸になってもらう」


 千雪「はい,わかりました。師匠を信じていますから,大丈夫です」


 千雪は,服をすべて脱いで,全裸になった。顔や体全体にソバカス状の赤いボツボツがあった。それが,絶世の美人で抜群のスタイルを台無しにしていた。


 師匠「そのソバカスは,わざとにつけたものか?」

 千雪「そうです。日本にいるとき,ストーカーや,痴漢に何度も会ってしまって,レイプもされました。幸い未遂でしたが。もう男嫌いになってしまいました。だから,男に勝てる力が欲しかったのです。でも,すぐには無理なので,自分の容姿を醜くすることから始めました」


 師匠「美人で容姿端麗で生まれてくるのは,必ずしも幸福なことではないのかもしれん。そこに仰向けにして横になりなさい」


 千雪は,言われた通りにした。師匠は,下腹部に,授受側の霊力転送魔法陣を構築した。師匠は,あぐら姿で服を脱ぎ,下腹部に,放出側の霊力転送魔法陣を構築した。そして,師匠の霊力の核から流れ出る霊力を,千雪の下腹部に吸収させていった。


 千雪の下腹部には,すでにイメージ訓練で架空の『霊力の核』ができていた。そこに霊力が流入して,徐々に架空の『霊力の核』から現実の『霊力の核』に変化していった。


 10分が経過した。


 師匠「終了だ。サリーよ。服を着なさい。私は,この術をつかったのは始めだ。サリーの霊力の核が安定するのに,どれくらいの時間が必要なのかもかわからん。でも,1週間もすれば,安定すると思う。その間,イメージ訓練は中止とする」


 この1週間,千雪はおもに魔界語会話と魔法書の読解に集中した。ときどき,近くの子供たちと会話練習をして過ごした。


 1週間が経った。


 師匠から,全裸になって,あぐらの姿勢になりなさいと言われて,千雪はその通りにした。


 師匠「両の手のひらを腹部に当てなさい。そして,おへその部分にある霊力の核を感じなさい」

 千雪「はい」


 千雪は,その通り行った。


 千雪「師匠,何か感じます。暖かく,いや,熱いぐらいです。でもとても心地よいです。

 師匠「それが,サリーの霊力の核だ。そこから霊力が流れる。それを,体表面全体に流すようにしなさい。手のひら,指,その一本一本まで,しっかりとイメージして,そのイメージ通り,霊力が流れるようにしていきなさい。最初は,手のひら,手の指からだ。それができたら,腕,肩,首,頭,胸,背中,腹部,両足,足の指,足の裏,どの体の部位でも,即座に霊力を流す訓練をしなさい」

 千雪「はい」


 師匠「その間,48式を,これで通り6分で行い,一日,10回程度の練習でよい。また,あぐらの姿勢で霊力の流れを感じれたら,立っている姿勢,寝ている姿勢など,あらゆる体勢でも霊力を流せるようにしていきない。それができたら,後は,自分で計画的に修練していくように。これからの3週間で,なんとか霊力をスムーズに流すようにすることを優先しなさい」

 千雪「はい,わかりました」


 千雪は,この3週間,霊力をイメージ通り流す訓練に集中した。ときどき,師匠にアドバイスを求め,適切なアドバイスをしてもらった。だが,師匠にはもう霊力はないため,実演してもらうことはできない。そのたびに,師匠には申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


 ーーー

 2ヶ月が経過した。


 師匠「サリーよ,これから,本格的な訓練にはいる。全裸になりなさい。服がすぐぼろぼろになってしまう」

 千雪「はい」

 千雪は全裸になった。

 

 師匠「では,両足の筋肉に霊力を満たしなさい」

 千雪「はい,満たしました」

 師匠「さらに,両腕の筋肉にも霊力を満たしなさい」

 千雪「はい,満たしました」

 師匠「よし,その状態で,48式を,できるだけ早く演舞してみなさい。私は,時計で時間をはかる。では,はじめなさい!」

 千雪「はい,始めます」


 千雪は,体に染みついた48式をできるだけ早く演舞してみせた。

 師匠「よし,そこまで。4分ちょうどか。千雪の限界のスピードが6分だから,だいたい1.5倍速の速さで行動できたことになる。いい傾向だ。まだ霊力が不安定だが,時間とともに安定するだろう。次の段階に入る。

 霊力の強みは,その防御力にある。腕を合わせて体をガードする体制にして,腕の表面部分に,霊力を集めて、霊力の層を作るイメージをしなさい。それができたら,私がそこに,初級火炎魔法で,火炎を発射する。防御をうまくしてみなさい」

 千雪「はい。イメージしました」


 師匠は初級火炎攻撃を千雪に発射した。火炎は,腕を焼くことはなかったが,火の粉が髪について,髪をかなり焦がした。


 千雪は髪が燃えても,全然慌てなかった。落ち着いて,両方の手の平で,火の粉を消した。


 師匠「そうか,今度は,髪も含めて,ガードしないといけないな。今度は,仁王立ちで,体全体の表面を霊力の層で覆うイメージをしなさい。強くイメージしなさい」

 千雪「はい,できました」


 師匠は,初級火炎攻撃を千雪の腹部めがけて発射した。火炎は,一瞬,千雪の全体を覆ったが,すぐに消滅した。千雪に外傷や火傷はなかった。

 

 師匠「サリー,どうだ?熱さは感じたか?」

 千雪「いえ,ぜんぜん感じませんでした」

 師匠「そうか。今が一番大事なときだ。ゆっくりと,確実に修練せねばならん。次に,こぶしを作り,そこに霊力を集めて,鋼の硬さをイメージしなさい。ここに,庭から持ってきた岩がある。それができたら,48式のうち,もっとも適当と思う型で,この岩を攻撃してみなさい。また,岩石の破片が飛んで体を傷つける恐れがある。攻撃するときは,常に体全体を霊力で覆ってからにしさない」

 千雪「はい,できました。岩を攻撃します」

 千雪は両腕の正拳突きで,岩を攻撃した。


 ダーーーン。


 岩は音を立てて砕けた。その勢いで破片が千雪の裸体に当たったが,霊力の層で弾かれた。


 師匠「見事だ。だが,まだまだ霊力を覆うのに,時間がかかりすぎる。でも,ここまでできれば,たいしたものだ。では,1日のこなす訓練内容をいう。霊力を瞬時に体のあらゆる部分に集積させる訓練,そして,あぐらの姿勢で霊力をゆっくりと体中にめぐらして,霊力を養う訓練をそれぞれ30分ずつ,1日3回繰り返しなさい。次に,48式を1日20回,そして,霊力を,鋼,刃,火炎,氷結のイメージで,体のどの部位でも帯びさせる訓練を1日3時間,かつ,その動作を一瞬で行うように常に意識して行いなさい」

 千雪「はい,わかりました」


 師匠「これから毎日,朝,昼,晩の3回,種々の攻撃魔法を受けてもらう。今から,1週間は,初級レベル。2週間後から中級レベル。3週間後から上級レベル。1カ月後には,できればS級レベルを防御してもらう。こんなにズムーズにいくとは思えんが,真摯に訓練すれば,達成可能だと思う。霊力というものは,最初の10年が大変だ。でも,その後の進歩は早いはすだ。真摯に修練しなさい」

 千雪「はい,師匠。師匠の貴重な10年間を,私のために費やしてくれたこと,ほんとうに感謝します。その恩に報いるためにも,全力で修練に励みます」


 千雪はまじめに修練に励んだ。2週目からの中級レベルの攻撃をすべて防御し,3週目からの上級レベルの攻撃もすべて防御した。上級レベルからは,道場の外で実施した。裸体を隠すため,霊力に色を帯びさせた。全身を緑,茶,その斑模様など徐々に複雑な模様もできるようになった。


 千雪は修練の傍ら,近くの子供たちと,蹴鞠のゲームとか,ドッチボールなど,月本国のゲームを教えたりして遊んだ。また,子供たちから,魔族語の絵本や簡単な読み物も借りて,魔族語がほぼ理解できるようになってきた。


 また,魔族語が理解できるようになると,古代魔族語辞典をなんとか使えるようになり,古代魔法書の文章を読むスピードが早くなった。この時間は,千雨にとってはリラックスタイムだ。ついつい,寝る時間を惜しんで辞典を引く作業に費やした。


 ただし,古代文字が読めても,内容を理解できないと解読とは言わない。尊師でさえ,1ページを読解するのに,数週間,場合によっては数ヶ月かかってしまう。その意味では,千雪にその読解を期待するのは無理がある。尊師としては,千雪に『魔法』の雰囲気を味わうだけでいいとの判断だった。


 ーーー

 千雪が魔界に来て3ヵ月が経過した。この日は,S級レベルの攻撃を防御する最初の日だ。


 師匠「サリー,最初から裸の恰好をしているな」

 千雪「はい。できるだけ外の色と保護色となるように努力しているのですが,今はまだこの辺が限界です」

 師匠「よく見れば,区別はつくが,意識していないと見失うレベルだな。よし,今日からは,S級レベルの攻撃を防御してもらう」

 千雪「はい,いつでもどうぞ」

 師匠「よくいった。では,参る!火炎S級!」


 師匠のS級火炎攻撃が背景の色とほとんど変わらない千雪の裸体を攻撃した。


 ゴーーー!ゴーーーー!


 千雪は全身の霊力を氷結状態に変化させて防御した。


 師匠「氷結の矢!」


 ピューーー!ピューーー!


 千雪は瞬時に,氷結状態から鋼鉄の層に変化させて,氷結の矢の攻撃を防いだ。


 師匠「氷結の剣,連弾攻撃!!」

 師匠は大きな魔法陣から氷結の剣を連続で発射させて,千雪を襲った。

 千雪はすでに鋼鉄よりも硬いダイヤモンドのイメージの訓練で,霊力の層をダイヤモンド相当に変化させることに成功していた。


 千雪「最強防御!!」


 これが千雪の現在とりうる最強の防御層だ。全身の体表に沿って,ダイヤモンド相当に硬い層を瞬時に形成させた。そこに,氷結の剣が続けざまに5本,千雪の胸に向かって高速で激突した。


 ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!


 千雪の最強防御は優秀だった。なんと,3本もの氷結の剣を退けたのだ。だが,そこまでだった。あとの2本は,最強防御を貫き,2本の刃は,両の乳房を切り裂いた。


 スパー!スパーーーー!


 千雪はその場でうずくまった。Bカップの可愛い2つの乳房は,斜め一文字に切り裂かれた。血は出なかった。硬化した霊力の下側にも,霊力を流すことによって,出血を抑えていた。


 師匠は慌てなかった。想定の範囲内だ。

 師匠「サリー。見事だ。よく,3本も防いだ。2本は胸を割いたが,よくその傷程度で済んだ。回復魔法をかける。仰向けになりなさい」

 千雪「はい,師匠,仰向けになります。私もまだまだですね。もっと,防御力を強化しないとだめですね」


 師匠は,回復魔法を胸にかけながらいった。


 師匠「サリーの進歩はとても速い。私もびっくりするくらいだ。あと1カ月もすれば,サリー一人でも,ある程度,危険な仕事もこなせるかもしれん」

 千雪「じゃあ,来月から町で仕事探してもいいのですか?」

 師匠「ああ,そうだな。だが,その時は,S級レベルの攻撃をすべて防御できたらの話だ」

 千雪「はい。がんばります」

 師匠「サリーの胸は回復した」

 千雪「あ,ほんとだ!! 回復魔法って,すごいのですね。師匠,このお礼に,おっぱいでパフパスしてあげましょう」


 千春は,冗談で,おっぱいをもみもみさせて,師匠をからかった。

 師匠「こら,こら,師匠をからかうものではでない。私にはナタリーというフィアンセがいる。挑発しないでくれ。もし,ナタリーに知れたら,私は殺される。彼女は魔界No.1の魔法士だからな」

 千雪「師匠にはフィアンセがいたんですか。がっかりです。でも,ごめんなさい。もうしません」

 師匠「よし,元気になったら,48式の時間を計る」

 千雪「はい,もう大丈夫です。充分に休息できました。いつでも始められます」

 師匠「よし,はじめさない!」


 千雪は瞬時に,両足,両腕の筋力に霊力を流して活性化させ,高速で48式を演舞した。


 師匠「よし,そこまで。2分55秒,約3分だな。サリーの限界スピードが6分だから,2倍速の速さで動けるようになったことになる。順調な仕上がりだ。だが,まだ足りん。あと1ヵ月で,5倍速までもっていきなさい」

 千雪「はい,必ず達成してみせます」


 千雪は,それからも精力的に修練を続けた。もう少しで,一人で外に出歩けるのだ。当然,修練にも力が入るというものだ。


 ーーー

 そして,一ヵ月が経過した。千雪が,魔界に来て4ヶ月目だ。今日は,一人で外出していいかどうかの最終試験日だ。

 千雪は裸体だが,みごとに,背景色に溶け込んでいた。よく探さないと,どこにいるか,わからない程度だ。


 師匠「今から,何もいわずに,あらゆるS級レベルの魔力攻撃を行う。瞬時に判断して,適切な防御態勢を取りなさい。魔界の魔法士は,基本的に火炎攻撃が得意だ。しかし,魔法陣を構築すると,あらゆる種類の攻撃が可能となる。見ての通り,私もすでに,複数の魔法陣を構築した。いつでも攻撃できる体勢だ」


 千雪「はい,いつでもどうぞ。必ず防御してみせます」


 師匠は,火炎攻撃から始まり,氷結の矢の連弾,雷撃,そして前回防御できなかった氷結の剣の10連発をわずかな時間差をおいて連続的に発射した。どれもS級レベルだ。


 ゴーー,ヒューー,ゴゴゴゴ,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー,ピュー。


 千雪は,すべてそれらを受けて防御しなくてはならない。逃げることは許されない。当然,全弾,命中した。それらは,千雪の体に当たって,いずれも鈍い音を立てた。


 ボォーーー,ドス,ドス,ッガガ,コッ,コッ,コッ,コッ,コッ,コッ,コッ,コッ,コッ,コッ。


 千雪は耐えた。耐えることができた。この1ヵ月間,真摯に修練した賜物だ。千雪の体は無傷だった。これだけの攻撃を受けて,無傷とは,正直,師匠も少しびっくりした。今の一連の攻撃なら,へたすれば,魔法攻撃無効化結界でも破壊してしまいそうな勢いがあったからだ。


 師匠「サリー。よくぞ頑張った。これが霊力を操る,ということだ。魔法,つまり現代魔法とは根本的に違うところだ」

 千雪「はい,ありがとうございます。ですが,霊力と現代魔法とは,なにが違うのでしょう?」

 師匠「現代魔法は,魔力を使う。魔力は,飛びやすい性質がある。それ故,攻撃に向く。だが,霊力は飛ばない。だから防御に向く。今は,それだけ覚えときなさい」

 千雪「はい。よくわからないけど,わかりました」

 

 師匠「よし,次は48式だ。始めなさい」


 千雪は,48式を演舞した。いくつかの訓練の中でも,目標設定がはっきりとわかる項目だ。


 師匠「1分10秒か。5倍速を達成したな。まさか,ほんとうに達成するとは驚きだ」

 千雪「へへへ。そうでしょう。一人で外出したくて,がんばったんですよ。師匠ーーー」


 師匠「そうか。わかった。では,明日から,午後は,完全な自由行動を許可する。仕事紹介所で仕事するのもよしとする。いろいろと経験を積みなさい」

 千雪「はい!ありがとうございます」


 師匠「しかし,注意事項がある。しっかりと聞きなさい」

 千雪「はい。しっかりと,聞きます」

 師匠「よし。いろいろと活動すれば,当然,危険な目にあうこもある。私は傍にないから,千雪が自分自身で身を守る必要がある。これまでの訓練の成果を忘れないこと。また,将来,誰が敵となるかわならない。だから,自分の能力は隠すこと。そして,いったん敵を倒すと決めた以上、殺すことをためらってはいけない。ここは,魔族社会だ。サリーのいた月本国の社会ではない。サリーからみれば,魔族は,皆,ゴキブリだと思って踏みつぶしなさい」


 師匠は,一息入れて続けた。


 師匠「いいか,けっして,人間と思って,殺すことをためらうな。サリーの5倍速で,霊力を流して手を手刀に変化させれば,一瞬で首をはねることは容易なはずだ。今の千雪に勝てる魔法士や剣士は,そうそういるものではない。謙虚に行動し,かつ戦うと決めたときは,大胆に行動しなさい。以上だ」


 千雪「はい,わかりました。殺すと決めたら,ゴキブリを殺すと思って対処します」

 師匠「よし,その気持ちがあれば,サリーは,この魔界でも生きていける」


ーーー

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