第49話 (11/30) 行動開始!

 そこで翔真は悪夢から解放され目が覚めた。


 なぜかほとんどの内容がくっきりと脳裏に残っている。今日、出発して地元に戻ろうというのに最悪の夢だ。


 翔真は、松山正という名と記事に出ていた居住地区を忘れないようにメモに書いた。


 そして空港へ行って地元まで飛行機で戻るまでの間中、向こうに到着してから何をすべきか考え、インターネットで検索を続けた。


 まず、絶対にさくらを朝の電車に乗せてはいけない。どう説明するかは難しいけれど、少なくとも明日からの三日間、電車は絶対だめだ。


 次に、松山正さんだ。きっと実在する。あんなに記事がはっきり見えた。予知夢なんだ。


 居場所を探し出そう。地区までわかっている。電話帳とかで探すか、市役所へ行くか、それとも警察で探してもらうか。


 おそらくどれも時間が足りない。今日夕方現地に着いてからでは役所や警察は無理だ。電話で聞こうにも緊急事態ということは到底理解してもらえない。


 インターネット、電話帳はもちろん、自治会とか聞き込みとかで探そう。


 翔真は現地に到着するや否や、まずさくらに電話をかけた。


「さくら、こっちに着いたよ」

「何で電話なの? ラインでいいよ。私まだ仕事中よ」


「いや、重要な話がある。少し時間いい?」

「え、何? いいよ。話して」


 翔真は一連のできごとを説明した。しかしさくらは信じられない。


「何? 大きな電車事故が起きる夢を見て、それが現実に起きる可能性が高いって?」

「そう。だから明日からしばらく、会社には電車を使わないで欲しいんだ」


「いえ、それは無理よ。車通勤はできない職場だし駐車するところが無い。バスも近くにルートが無いわ」

「タクシーだな。タクシーでたのむ」


「いえ、翔真。まずね。そんな事起こる訳ないでしょ。予知能力者じゃないんだから。起きるとしても、いつ起きるのかわからなければ永遠に電車に乗れなくなるよ」


「今週なんだ。明日から三日間のいずれかの日の朝に起きる」


「根拠は?」

「……ない。だけどほぼ間違い無いんだ。新聞に大きな記事が出るのを見た」


「その新聞の日付は?」

「見なかった」


「じゃ、いつ起きるかやっぱりわからないじゃない。起きる時間は?」

「それもわからない。だけど、さくらが怪我するから丁度通勤列車なんだと思う。今週はやばい。今週だけ気を付けてくれ」


「うーん。そこまで言うなら、翔真の気のせいだと思うけど、とりあえず明日はタクシーにするわ。そうだ。翔真レンタカー借りるんでしょ。翔真が送り迎えしてよ」


「ああ、そうしたいんだけど、事故そのものも防止したいから、車を運転する松山って人を探して止めようと思うんだ。だからたぶん明日は無理」


「わかった。でもね、翔真がその人を探し出したとしてもたぶん変人扱いされるから、気を付けてね。警察にあなたを迎えに行かなければいけないなんて嫌よ」


「大丈夫。じゃあ明日は電車NGでよろしく」


 さくらに話をつけてほっとすると、翔真はレンタカーの手続きを済ませ、松山氏の捜索を再開した。


 移動中インターネットで検索しまくり、そういう名前の人物が現実にいることがわかった。


 空港で市役所などあらゆる思いつく宛先に電話して所在を探ったが正当な理由もなく、個人情報を教えてくれるところは無かった。


 しかし、メモした地域が実際にあることはわかり、やはり松山氏は実在し事故が実際に起こることは確信していた。


 当該地域に車を走らせ、聞き取りを始めたが、一時間ほどしても有力な手掛かりは得られず、あたりはすっかり暗くなってしまった。


 あるコンビニでふと、とある地図メーカーが住宅地図を出していることを思い出し、インターネットとコンビニのコピー機で当該地区の住宅地図を購入しプリントアウトした。


 十五分ほどかけて該当地区のすべての住宅を調べた結果、ついに松山氏の住宅にあたりをつけることができた。さらに別途入手したこの町の電話帳を調べたところ、電話番号も分かったのだった。

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