第26話 (10/10) 人生は変わる! いじめっ子に負けるな
見習いが不意に言った。
「あ、言い忘れましたが、そこの陰で見ている翔真君がさくらさんの反撃を見て引いてしまいます。でも大勢に影響はありません」
「なにそれー 最初に言ってよ」
サラが恥ずかしがるが、もう遅かった。いじめられていた地上のさくらの顔が急に赤くなってきた。きっ、と
「なんだよその顔、お前文句あんのか?」
陽人がさくらの胸ぐらを掴んで引き寄せた。さくらはそれに動じず、陽人を睨み続けた。サラが懇願する。
「見習いさん、一旦止められない?」
「はい。一時停止!」
見習いが叫ぶとその場の時間が止まり、子供たちは凍り付いたように固まった。
「うわ。本当に一時停止した」
翔真が叫んだ。
「この間に、さくらさんの心に干渉することが可能です。早めにお願いします。長くは止められません!」
見習いが手早く言うとサラも叫ぶ。
「フェリン! さくらに、程々にするように言ってくれない? 野蛮な印象を周りの友達に与えないようにね」
「了解! すぐ行きます」
フェリンはそう答えて、さくらの方に飛んで行った。
しかし少し経って帰ってくると嘆いた。
「あの、説得しましたが、既にとても熱くなっていて、あまり聞き入れてくれませんでした。ただし相手の顔に手を出したり怪我をさせたりはしないように加減するそうです」
「ああ、そんな」
サラは嘆いた。見習いが皆を見回してから言う。
「再開しますね」
そして時間が動き出した次の瞬間、さくらは陽人の下腹部にきつい膝蹴りを入れた。
「うげっ」
陽人は予想もしない一撃に脆くも崩れ落ちた。
さくらはその隙に走って女の子友達のところに逃げた。
友達は口々に言った。
「すごーい。さくらちゃん」
「やっつけたね。あいつ」
陽人の取り巻きは茫然として、彼らのリーダーが情けなく屈みながらよろよろと退散していくところを見ていた。
「オメー覚えてろよ。くそ痛え」
さくらは元気に叫んだ。
「ごめんねー。また遊ぼうねー」
それを上から見ていたサラは真っ赤になって顔を手で覆った。
「なにあれえ。男勝りもいいところ。あんなの私じゃない」
ショウが隣で笑った。
「楽しそうじゃない。まるでかえでみたいに強かったけど」
確かに。さて、翔真はどうしているのか?
翔真は陰から一部始終を見ていて、最後に呟いた。
「さくらちゃん、強い……」
あんなに強気な性格だったっけ? 最初は泣き顔だったのに急変したよ。翔真は半分肝を冷やし、半分感心した様子でブランコの方へ向かって行った。
「はい。どうでしたか? うまく行きましたね」
見習いの言葉にショウが頷くとサラは反論した。
「ちょっと勘弁してよ。あれはやりすぎよ」
「いいえ。あれがさくらさんが本来持っている一つの本性です。今までああいう対応の仕方に慣れていなかっただけです。でもいきなりここまでストレートに出せたのは、子供のさくらさんの強い気持ちが、天界側にも響いたからです」
「気持ちが響いた?」
「はい。地上の人間が、自分の持っている純粋な気持ちや、強い心を持った時には、それが私たち天界にも共鳴して力が増大します。それはご自身に最も強く作用しますが、それだけではなく、周りの人達にも作用します。人が元々持っている生命力はとても強いのです」
見習いは、ここが重要とばかりに説明を続ける。
「生命力の強さは人によって違うのですが、それぞれの人が、その時の自分のキャパシティの何パーセントの心の強さを出しているのかが共鳴力を左右します。絶対値ではありませんよ。例えば赤ちゃんは、百パーセント全力で泣きますが、それは最大の効力を周りにもたらします。きっとお母さんは感じていますよね。さらにこの時ご先祖が赤ちゃんを守ろうとする力も最大になります。天界からのサポートも最大になるのです」
サラが頷いて聞いている。
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