ヒッチハイク。
Aさんが土曜日だったか日曜日だかの、昼前に出かけたときのこと。
とある道を車で走っていると、重たそうな荷物を背負った小さなおばあさんが歩道を歩いていたそうだ。
農作業をするときのような、着物とももんぺともつかない服を着たおばあさんだったという。
なんとなく視界に入ったおばあさんが気になって様子を見ていると、そのおばあさんが手を挙げた。
Aさんは車を停め、窓を開けたという。すると、
「○○市場まで乗せて行ってくれませんか?」
と
○○市場は、数十年前まではとても賑わっていた市場だが、今ではそうでもない。
そして、その場所から○○市場までは数十キロの距離。途中に別の、賑わっている大きな市場もあるのに? と少し不思議に思ったが、重たそうな荷物を持って遠くに行くのは大変だろうとも思ったので、Aさんはおばあさんを乗せることを了承した。すると・・・
「息子が遊びに来るから、今からこれを売って買い物に行こうね。たくさんご馳走を作らないとねぇ。○○まで歩いて行くのは大変だけど、今は車があるから便利だねぇ。昔は何十里も歩いて市場に行ったんだよぉ。乗せてくれてありがとうね」
という風なことを、方言混じりの訛りのキツい言葉で話していたそうだ。
そして、○○市場まで行く途中。喋っていたおばあさんが静かになったと思い、ふと後ろを見ると・・・
後部座席には、誰も乗っていなかったそうだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
観光客のBさん達三人が、土曜日だか日曜日だかの朝にレンタカーを借りて目的地へ行く途中。
路肩に車を停めていたときのことだったという。
コンコンと、窓が叩かれたそうだ。大きな荷物を背負ったおばあさんだったという。
訛りのキツい言葉でなにを言っているかはわからなかったが、○○という地名が聞き取れたので、おばあさんを○○まで乗せて行くことにしたそうだ。
○○までの距離は百キロ程。
おばあさんは、訛りのキツい言葉で「息子が遊びに来るからご馳走を作る」という風なことを言っていたらしい。
よくわからないながらも、Bさん達は
「○○って、結構遠いみたいですけど、近くのスーパーには行かないんですか?」
何気なくそう聞いたら、今まで隣に座って話していたおばあさんが、すぅっと目の前で薄くなって消えてしまったそうだ。
Bさん達は、とても驚いたという。
※※※※※※※※※※※※※※※
他にも、その○○市場に行きたいという消えるおばあさんを見た、車に乗せたという人達がいるらしい。
しかも、とても面白いことに同日同時間に、別々の場所でそのおばあさんを車に乗せたという人達がいるという。
「こないだ、こんなことがあってさ・・・」
と、Cさんが酒の席で話したら、
「自分もその時間に××でおばあさんを・・・」
Dさんからそんな話が出たという。
おばあさんの特徴、行きたい場所、そして目的地に着く前に消えたという共通点。
もしかして・・・それは、同じおばあさんなのでは? と、なったそうだ。
土日の午前中、ときに同時多発的に別々の場所に出るという、○○市場へ向かう消えるおばあさん。彼女はいつか、目的地に辿り着くことができるのだろうか・・・?
――――――――――――
土日の午前中、ヒッチハイクをするおばあさんだそうで、明るい時間帯にしか出ないそうです。
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