狼王の森編 ユナ視点
1
「兄、準備でけた~」
戦闘服姿の三人が入ってくる。
「ユナ、これ渡しとく」
「うん? え!?」
何か驚くようなものがあっただろうか?
なんかめちゃくちゃ嬉しそうだな。
「ありがとう、大切にするね!!」
「お、おう」
聞いたことがある。
指輪は大切な人への贈り物だって、結婚するために送る物だって。
え、ここで!?
えぇ~!!
「あの、ユナさん」
「ん? 何?」
言いにくそうにレイルは黙っている。
あぁ、言いにくいのね。
こういう事は恥ずかしくて言いにくいんだろう。
「ユナ、それそこにはめる奴じゃない」
「……え?」
「それは全身防壁、死にそうな負傷から守ってくれる。 中指にはめないと上手く発動しない」
あ、そういう事かぁ~!!
「そ、そうだよね!! うん、わかってた!!」
勘違いしてて恥ずかしいぃ~!!
私は必死に弁明する。
そうしてレイルの案内の元、私達は狼王いるのファングスの森に近づく。
「ミリネ、クロナ、頼んだよ」
「任せて!!」「ん、任せる」
レイルの指示で前衛はミリネ、中衛にクロナ、後衛はユナという配置にになった。
基本的にいつもの二人の戦い方にすることにし、ユナを守るのを最善とすることにした。
歩いていくと、獣の断末魔のような声が鳴り響いている。
誰かが戦ってる?
「兄、助けに行くけどいい?」
「もちろん」
「狼達を拘束せよ、
クロナが詠唱を終え手を翳すと、手から複数の鎖が広がり何匹かの獣を拘束する。
それ以外は主にミリネが制圧し、こちらに向かってきた方はレイルが対応して全ての獣を制圧する。
相変わらず素早い。
白髪の子の綺麗な瞳はこっちを見る。
「くろな?」
その声はとてもつたない声だった。
それはまるでろれつがまだ回らない赤子の様だった。
「その声、ローナ?」
「うん!! あたし、ろーな!!」
嬉しそうにローナと名乗った女の子はクロナに抱き着く。
知り合いだったのか?
にしては声を聞くまでわからなかったような感じだ。
「くんくん……くろなのにおいだ!! くろなくろな!!」
「この子がローナ? 本当に?」
「うん? みりね? くんくん、みりねだ!!」
私の質問を無視して次にミリネに近づき匂いを嗅ぐとミリネと判断して喜んでいる。
「ローナなら聞きたいことがある」
レイルに視線を向けると、明らかに敵意をむき出しにした表情で威嚇していた。
レイルは呆れたようにクロナに言う。
「クロナ、聞いてくれないか?」
「ローナ、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「なに?」
あからさまだなぁ~。
ローナは月明かりに輝くほどの可愛らしい笑みを浮かべている。
こんな可愛い子が狼王なんて信じられないが、三人が言うからにはそうなのだろう。
「狼が村を襲ってる、ローナの命令?」
「うんうん。 あたし、そんなめいれいくださない。 みんなをきずつけたくないから。 よそからきたひとたちじゃないかな?」
「よそから来た人?」
「うん。さいきん、みたことのないのがあたしたちのなわばりをあらすの。 みんな、なんとかくいとめてるけど、じかんのもんだいだから、あたしがちょくせつくろなたちにおねがいにむかってたの、そしたらおそわれて……おねがいくろな、あたし、うんうん、みんなをたすけて」
要は村を襲って狼王自らレイル達に助けを求めに出てきたと、そういう事だった。
「兄、どうする?」
必死に助けを求めるローナにレイルは黙り込む。
多分だけど、私達、特に私を連れてる事の危険度を測っているのだろう。
「行こう、ユナもいいな?」
レイルは少しの沈黙の後、私達に問いかけると私含め皆頷く。
「私は構わないよ、貴方と一緒ならどこへでもついてく
「なら行こう、二人もいいね?」
「わかった」「了解」
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「くろな、そのこだれ?」
クロナの服を着ながら、ローナはユナの方を見る。
「私はユナ」
「ゆな?」
「そう、ユナ」
「ゆな!! ゆな!! あたしろーな、よろしく!!」
「よろしくねローナちゃん」
挨拶も済ませ、ローナの住んでいる狼の園へ向かう事にした。
「敵が多いな」
道中、鳥系や獣系、果ては粘液系の魔物まで出てくる。
それらをレイル達は蹴散らしていきながら、先に進んでいく
レイルに抱えられ移動すると、その後から溶解液がいた場所に落ちる。
「面倒だな」
レイルがそう言うと、クロナは詠唱を始める。
「我ら炎を纏いてあらゆる攻撃燃やし尽くさん、
クロナが詠唱を終えると、背中から紅炎を纏った翼が現れると同時にクロナの髪と瞳も紅く染まって優雅に舞い上がると手を翳す。
彼女の背中の紅炎の羽が一気に彼女の手に集まる。
「
瞬間、渦を巻きながら炎の弾は蜘蛛に向かって一気に襲い掛かる。
当然、蜘蛛は水色の何か放つ。
しかし、炎の弾の勢いが弱まることはなく、クロナの放った羽は攻撃を燃やし尽くし蜘蛛に直撃し、蜘蛛の身体は爆散した。
凄~!!
「このまま最小限に展開しながら進む」
彼女は羽を鳥のようにしまい先へ進んでいくと、ローナの村に着く。
「ローナ姉!! よかった!!」
ローナの顔を見てほっとするように六人が安堵の表情を浮かべた。
「てぃん・えりす・ふぃりす・りあ・にあ・ろろ、戻ったよ!!」
ティン・エリス・フィリス・リア・ニア・ロロというらしい。
「久しぶりだな、無事で何よりだ」
ティンとロロは涙を必死に抑え、残りの女性陣は涙を流す。
頑張って持ちこたえたのだろう。
そうしてそれぞれ落ち着くまで待つと、本題に入る。
「リア、状況を説明してくれ」
「わかった。 現在部下30匹が偵察に出て5匹が死亡、15匹が軽傷で残りが重傷という被害だわ」
レイルは村の現在の状況を事細かリアという女の子に聞いていた。
「私達が確認した強力な魔物は毒系の蜘蛛と翼竜があちこちにいるらしいわ。 他にも武装した人影を見たって言ってた」
「兄、どうする?」
そういうと、レイルは考え込むと再びリアに問いかける
「その人影は何処で見たかわかるか?」
「報告書に書いてあるから、後で印して地図渡すわ」
「助かる。 後、この中から数人借りたいんだが、いいか?」
「それは構わないけど、行ってくるの?」
「あぁ、偵察に行こうと思う」
「ならエリス、フィリスの二人を連れてってください」
翠髪の三つ編みのエリスと髪を横で結んでいるフィリスを見てそういうと、ローナが彼女の裾を引っ張ると「あたしはだめ?」とリアに上目遣いで意見を述べる。
「強い戦力を集中しすぎだわ、五人ずつが適任だと思うの」
ローナは元気一杯に「そっか、わかった!!」と返事をする。
可愛いな、この子。
「レウ兄もこれで大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫だよ」
「現場の行動はレウ兄の指揮に従って」
「りょうか~い」「りょっ」
エリスは「よろしくねぇ~、三人とも」と気怠そうに言うと、続いてフェリスも「よろっ」と片目を閉じ、元気よく言い放った。
「後、リア少しお願いがあるんだ」
「何かしら?」
「ユナを頼んでもいいかな?」
……まぁ、そうだろうねぇ~。
私はまだ足手纏いと、そういうわけだ。
腹立たしいが事実なので私はしたがう。
「ユナ、ここで癒し系の聖魔法を覚えて村の子達を治療してやってくれないか? 言い方は不謹慎かもしれないが、癒し系の聖魔法を覚えるのに最適な場所だ。加えて聖魔法は戦場より今回はこっちの方が心強い面があるからお願いできないかな?」
本当に不謹慎だなぁ~。
一緒に行きたかったな……と思ったが、必死に堪え「わかった」といった。
そうしてリアと作戦についての計画を話し終え、数時間後レイル達は任務に向かっていった。
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