第48話
放課後、サロンの中でも勉強会が開かれていた。
「杏奈様~。教えてほしいところがあるのですが~……」
杏奈に書いてもらったノートとにらめっこしているとそこに唯が、泣きついてくる。
「どこがわからないのかな?」
「えっとですねぇ……」
提示された場所を見ると、丁度麻奈美に間違えて教えた問題で、亮は杏奈に教えられた通り、唯に教え込む。
「なるほど~!! すごくわかりやすかったです! やはり杏奈様はすごいですね!」
「えへへ……」
「じゃあ杏奈様、ここも教えてほしいんですけど……」
「唯さん、あまり杏奈様の勉強の邪魔をしてはダメですよ?」
調子に乗ってもっと聞こうとした唯を智代は咎めると、素直に返事をして引き下がって行った。
「智代さんは大丈夫なの?」
「ちゃんと暗記しているので大丈夫ですよー」
唯がそう聞くと、智代は自信満々に言う。
そんな話をしていると、用紙を持った恵梨香がサロンの中に入ってくる。
「小テストを作ってきましたよ。皆さんでやってみませんか?」
「いいですねー!」
「うう……できるかなぁ……」
全員が賛同したので、恵梨香は小テストを配り始めた。
「では、制限時間は15分。始め!」
(やべーどうしよう……)
用紙をひっくり返して、問題を解いていくが、亮は不安でいっぱいだった。
ケアレスミスをよくしてしまうので、もし智代に負けてしまったら、学年1位の面目が立たない。
だが始まってしまったものは仕方がないと、すらすらと杏奈に教えられたとおり、問題を解いていく。
「そこまで!」
15分経って終わりの合図をして、恵梨香は用紙を回収していく。
「うう……あまりできませんでしたぁ……」
「私もー!」
唯と麻奈美は涙目になりながら、そう嘆いていた。
「採点終わりましたよー」
採点が終わった用紙を、見ると、亮はやはり杏奈に教えてもらったとあって満点でほっとする。
(良かったぁ……満点で……)
「あら……。1問間違えてたのですね……」
智代の点数を見ると満点ではなかったがかなり高い点数だった。
「そういえば、智代ちゃんってさ、入学試験は何位だったの?」
「私ですか?確か3位だった気がしますー」
「嘘!?」
思っていたよりも高い順位で亮は驚く。
「2位の桜さん? でしたっけ? あの人とは2点差でしたねー」
「そ、そうだったんだ……」
(アイツ、2位とそんなに実力差がないのに、あんなにいばってたのか……)
そう考えると、ますますぷりぷりしてて、可愛いなと思ってしまう。
「確か、その次は恵梨香さんでしたよね? で麻奈美さんという順番だったような気がしますねー」
「そうでしたね」
「え、私ってそんな順位高かったの!?」
今知った事実だったのか、麻奈美は目を丸くして驚く。
「ええ、私の記憶が正しければ……ですけど……」
「私って、そんな順位高かったんだ……」
少し嬉しかったのか、えへへと言いながらニヤついていた。
その後、解散の時間となって、唯や智代と別れ、恵梨香と麻奈美と一緒に昇降口へと向かっていた。
「それにしても、智代ちゃん頭良かったんだね……」
「流石、数々のデパートを牛耳る社長令嬢なだけありますね。それに比べて……」
「悪かったね!!」
いつものように、階段を降りようとすると目の前に行く手を阻むように瑞希達が現れる。
「どうしたの? 瑞希ちゃん?」
急な登場に驚く3人であったが、冷静さを何とか保つ。
「あははは……! 村上杏奈さんあなたに勝負を挑みますわ!」
高笑いをしながら、そう高らかに宣言する。
「どうせ私達が勝つに決まってるんだから、あきらめてね」
軽くあしらって帰ろうとすると、瑞希はにやりと笑う。
「村上杏奈さん、いや今は村上亮さん……でしたっけ?」
その名前を言われた瞬間、亮の背筋が凍りつくような感覚に襲われる。
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