第45話

夕方になって、病院から出た一行は駅に向かって歩いていた。


「すごく楽しかったですねー。また来たいです!」

「そうですね。また来てもよろしいでしょうか?」

「う、うん大丈夫だよ……」


 本当は来てほしくないのだが、そんな事は言えず、亮は首を縦に振る。


「本当ですか!?」

「でも恵梨香とか私を通してね」

「そんなー、2人きりで話したいのにー!」


 智代は、悲しそうに投げていた。


 よっぽど杏奈と2人きりで話したいのだろうが、流石に2人きりにしたら何をされるかわからないので、絶対にしない方が良さそうだ。


「ところで、杏子さんはブリリアント学園には入学されないのですか?」


 ふと疑問に思ったのか、唯がそう問いかける。


「残念ながら、杏子様は別の学校へ通うことになりますね……」

「そうですかぁ……。退院したら、一緒にサロンで過ごしたかったなぁ……」


 質問に恵梨香がそう答えると、唯はかなり残念そうにしていた。


(大丈夫だぞ。もう少ししたら、一緒にサロンで過ごせるから……)


 亮は心中でそう思いながら、唯を温かいまなざしで見つめていた。


 暫くすると、一行は駅に到着する。


 既に迎えのリムジンが到着しており、唯と智代は颯爽と乗り込む。


「杏奈様。今日は、本当にありがとうございましたー」

「また誘ってくださいねー」

「うん、また皆で集まろうね?」

「はい! それでは皆さん。また学校でー」


 そう言って、2人が手を振ると、それを合図に、2人を乗せたリムジンは駅を出ていく。


「またねー!」

「お気をつけて!」


 リムジンの姿が見えなくなるまで亮と恵梨香は手を振っていた。


「「……乗り切ったー」」


 見えなくなった後、亮と恵梨香はその場に座り込んで安堵のため息をつく。


「もう、こんな事は二度と体験したくないね……」

「そうでございますね……」


 珍しく手を取りあい、もう二度とこんなことはやりたくないと心に誓った。


「2人共、今日はお疲れー!」


 何処か買いに行っていたのか、ペットボトルの飲み物を持って麻奈美が戻ってきて、2人に手渡す。

 

「ありがとう、麻奈美ちゃん……」

「ありがとうございます。麻奈美様」


 2人は水をごくごくと飲んで、気持ちを落ち着かせる。


 すると、亮はある事を思い出した。


「そういえば、麻奈美ちゃん」

「ん? 何? 亮君」

「智代ちゃんに抱き着かれるたび、麻奈美ちゃんはなんであんなに怒ってたの?」

「え……」


 亮が、麻奈美にそう質問した瞬間、周りが完全に静まりうかえってしまう。


「あ、あれ……?」

「帰る!」

 

 そう亮に吐き捨て、頬を膨らませ、顔を真っ赤にした麻奈美は駅の中へと速足で入って行ってしまった。

 

「え、恵梨香なんで?」

「亮様は、本当にデリカシーがないのですね。死んでしまえばいいのに……」

「え、え? ひどい!!」


 ゴミを見るような目で、亮に吐き捨てて、恵梨香までもが怒って駅の中へと入って行ってしまう。


「俺、そんなひどいこと言ってしまったのか……」


 デリカシーのない質問してしまったと、猛省しながら亮も駅の中へと入って行く。


 無事、バレずにサロンメンバーでバレずにお見舞いへ行くイベントは無事終了したが、この後とんでもない事となるのは誰1人として、思いもしなかった。

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