第36話
次の日の放課後、何時ものように、5人で集まっていると、唯が唐突に何かを思い出す。
「そういえば昨日、杏奈様の妹に会ったんですけど、すごく可愛かったですねー!」
「えぇ!! 杏奈さんの妹に会ったんですか!? ずるいです!!」
智代は咄嗟に立ち上がって、机に突っ伏して、唯を追求する。
「はい! 会いましたよ!」
「そのお話もっと聞かせてください……」
鼻息を荒くしながら智代は、唯の隣に近づく。
そんな中、隣に座っていた亮と恵梨香は、仕舞ったと頭を抱えていた。
(口封じするの忘れてたぁ……)
今にも泣きそうになっている中、智代が亮の元にやって来て、隣に座る。
「ねぇ、杏奈さん……? その妹さんに会わせてもらえませんか?」
甘い声で懇願しながら、智代は亮の体に密着してきた。
「ちょ、智代ちゃん!?」
亮の体には、大きく柔らかいものが当たっており、亮の胸は高鳴る。
(なんで、この娘は、何のためらいもなく胸を押し当ててくるんだよ……)
どうやって引き離そうかと考えていたが、急に殺気を感じたので、はっとなって横を見る。
すると、恵梨香はまたかというような表情をしていて、麻奈美はかなり機嫌悪そうにしていた。
(やばい!!)
じりじりと気づかれないように、智代から離れようとすると、逃げられないように麻奈美が隣に座ってくる。
「麻奈美どうした?」
その後、無言で亮の腕にくっつく。
「え、えぇ!?」
急に抱き着いて来て動揺していると、逆側にくっついていた智代が何かを感づいた表情をして、ニコニコと笑いながら離れて行った。
「と、智代ちゃん……?」
「麻奈美さんの事大切にしないとダメですよ?」
「へ……?」
智代に耳打ちされた亮は正直訳が分からず混乱していた。
そんな事も気にせず、スイーツを食べていた唯は「そうだ」と声を上げて何かを思いつく。
「今度のお休みに杏奈さんの妹さんに、会いに行きませんか?」
「ご、ごめん! それはちょっとまずいかなぁ!!」
唐突な提案に、焦った亮は必死になって止める。
「申し訳ございません。今杏奈様は足を怪我して入院中なので……」
珍しく、恵梨香も間に入って懇願していた。
「あら、入院しているなら、お見舞いのために猶更いかなくてはならないじゃないですか」
「そ、そうですが……」
「それとも、こられたら何かまずいことでもあるのですか?」
断り続ける恵梨香に、智代はかなり不信感を覚えたのか、疑いの目を向ける。
「いえ、別にまずいことはないのですが……。少し確認してきます……」
「え?ちょ、ちょ!!」
恵梨香は亮を連れて、サロンルームの外へと出た。
「いきなり、何?」
「あのお二方を会わせるべきか、どうするべきだと思いますか?」
いつにもまして、焦った表情をしている恵梨香を見て、今起こっていることがかなりの非常事態だというを改めて認識する。
だが、亮の意見はもう決まっていた。
「いや、会わせるべきじゃないでしょう。バレる可能性大だよ?」
「そうですよね……私もそう思います」
「もし連れて行ってバレたら、今までの私の努力が水の泡になるんだよ?」
必死に亮が説明すると恵梨香は控えめに返事をする。
その後、しばしの静寂の後、恵梨香は大きくため息を付いてようやく決断する。
「会わせましょう」
「ま、まじ!?」
会わせないようにしようという流れだと思っていたのに、予想外の恵梨香の決断に亮は目を丸くした。
「口止めをしなかった、私のせいなので全責任は私が持ちます」
「ほ、本当に大丈夫??」
「まぁ……。このまま、断り続けても、智代様に怪しまれるだけですからね……」
「そ、それもそうか……」
苦虫をかみつぶしたような顔をしているところを見るに、恵梨香も亮と同じような気持ちなのだろう。
その後サロンルームに戻った恵梨香と亮は、唯や智代に妹からオッケーとの返事が来たと言う事を伝えると、大いに喜んでいた。
「やったー! また杏子
「日程は、今度の休みで良いかな?」
亮がそう提案すると、2人快く承諾する。
「何を持っていきましょうか?」
「杏子さんは、高級フルーツゼリーがお好きなようですよ?」
「じゃあ……それを買っていこうかな……」
2人で楽しく話している中、後ろにいた3人はお通夜ムードだった。
「本当に2人を会わせていいの?」
浮かない面持ちで、麻奈美は亮にそう聞いてくる。
「多分……恵梨香も会わせましょうって言ってるしね……」
「そうなんだ……」
その後、解散した後3人で近くの喫茶店に集まり、作戦会議をしようという事になったのだった。
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