第23話

次の日の放課後、亮は麻奈美と一緒にいつものようにサロンルームへと向かう。


「杏奈、今日は何をしようか?」

「うーん……そうだなぁ……」


 そう2人で喋りながら歩いていると、廊下にキラリと光る何かが落ちてるのに気が付く。


「あれ、なんだろう?」

「落とし物かも……」


 近づいて拾ってみると、どうやらネックレスのようで、銀色のチェーンに小さいダイヤモンドがついていた。


「これ、ダイヤモンドのネックレスかな? なんでこんな所に」


 流石お嬢様学校、落とし物も規格外である。


「落とした人、相当困ってそう……」

「私、職員室に届けてくるね。麻奈美ちゃんは先にサロンへ行ってて」


 そう言って亮は、サロンルームの鍵を麻奈美に手渡す。


「わかった。先に行ってるね」

「うん。よろしくー」


 サロンルームへと向かう麻奈美の背中を見送り、1人亮は職員室のある教員棟へ向かった。







 教室のある教室棟から歩くこと数分、亮は職員室のある教員棟へと到着する。


「失礼します」


 職員室に入ると、佳苗とは別の女性教師と話していた金髪の女の子が入ってきた亮の方を振り向く。


「あ……」

「あぁ!! この前の!!」


 なんとそこにいたのは、昨日デパートで出会った金髪の女の子だった。


「同じ学校だったのですね」

「うん。そうだね」


 そう言いながら女の子は、笑顔で亮の前へと近づいてくる。


「ところで、姫君はなぜここに?」

「えっとね。忘れ物を届けに……」


 ポケットから、ダイヤモンドのネックレスを取り出すと女の子目を丸くした。


「これ、私のネックレスです! どこに落ちてましたか?」

「え、えっと……。教室棟の廊下に落ちてたよ」


 ダイヤモンドのネックレスを女の子に手渡すと、また昨日と同じように手を握られてしまう。


「本当にありがとうございます! ありがとうございます!!」

「い、いや。見つかって良かったね……」

「二度も助けてもらった貴方とは、同じ学校でしたし、もしかすると貴方は運命の人かもしれません……」

「は……はいー!?」


 吐息を荒くしながら、顔を近づける女の子にまた恐怖を感じた亮は、手を振り払って逃げるように職員室後にして、急いでサロンルームへと逃げ込んだ。


「ど、どうしたんですか? 杏奈様!?」


 急いで入ってきた亮に驚いた3人は亮の元へと近づいてくる。


「どうしたのですか? 安奈様? まずは落ち着いて水をお飲みください」


 恵梨香から差し出された水を飲みまずは落ち着き、先ほどあった出来事を話した。


「な、なんかすごい女の子に目を付けられちゃったね……」

「やはり、同じ学校でしたか……。杏奈様危険なので、1人で行動しないでください」

「そ、そこまで!?」


 麻奈美や唯も同じようにうんうんと頷く。


「もし、危険な人だったらどうするんですか?」

「い、いや……流石にこの学校にいるお嬢様は良い人でしょ……?」

「そうとは限りません。あのようなお嬢様は内心、何を考えているかわかりませんよ」


 確かに恵梨香の言う通りかもしれない。


 美しい薔薇には棘があるとも言うし、もしかすると学校では優しいお嬢様を演じていて、学校を出れば豹変すると言うのもあり得る話だ。


「わかったよ。恵梨香の言うとおりにする」


 こう頼まれてしまっては、鵜吞みにしないと後で何を言われるかわからない。


 渋々亮は首を縦に振った。


「あ、あの……ちなみにその娘どんな感じの女の子ですか?」

「えっと……、金髪で……セミロングの女の子で……ちょっと可憐な雰囲気の娘だったかなぁ……?」


 そう説明すると、恵梨香は心当たりがあるのか「あー」と呆れたような声を出す。


「その娘、私の知り合いで名前は栗花落智代つゆりともよちゃんって言うんです」

「そうなんだ、唯ちゃんの力でなんとかならない?」

「一応、たまにパーティーとかでよく仲良く話すので、明日なんとか話をつけて見ます!」

「わかったよ」


 唯はそう言いながら、任せてくださいと言わんばかりの顔で鼻息まで鳴らしている。


 何とはともあれ、これでなんとかなりそうだと、亮は安堵のため息を付いていたのだった。

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