第14話

「なぁんだ……そういう事だったんだ」


 後から入ってきた麻奈美に、先ほどの事を話すと何故かほっと胸を撫でおろした。


「な、なんでほっとしてるの?」

「てっきり、恵梨香ちゃんを怒らせちゃったのかと……」

「麻奈美様、流石の私でもそんなことはさせません」


 冷静にそう説明して、隣にいた彩香もうなずく。


「ま、まぁ、そうだよね……。というかこれ唯ちゃんが全部持って来たの?」


 机の上にある大量のスイーツを見て、麻奈美は驚いた顔をする。


「あ、は、はい! 沢山あるので皆で食べましょう」

「じゃあ、遠慮なくー」


 4人揃ったところで、いつものようにスイーツを食べながらだべり始めた。


 暫くだべっていたところで、麻奈美が何かを思いつく。


「私達、もっと親睦を深めたいよね……」

「たしかに」


 隣にいた恵梨香や唯も同調する。


「だから、何か、できないかなって思うんだけど……」

「あ、あの!」


 麻奈美が全員へ聞く前に、唯が手を上げた。


「唯ちゃん、何かしたいことある?」

「お、お泊り会とかしたいです!!!」

「いいね! それ。やろうやろう!」

「楽しそうー。やろうよ」

「私も賛成ですが、場所はどこに致しますか?」


 決まったのは良いが、場所の問題が浮上してしまう。


 やはりここはリーダーとして、自分の家を提供するかと思い、亮は挙手しようとすると、ある事を思い出した。


「そういえば、このサロンルームってお泊りもできるよ」


 後からもらった注意事項には担任に許可をもらえば、このサロンルームに泊る事ができるのだ。

 

 それを聞いた3人は「おー」と喜びをあらわにしながら拍手をする。


「じゃあ、日程は今週の土日とかどう?」

「はい! 予定はありません!」

「うん、私も大丈夫だよ」

「私も問題ございません」

「という事で、土日にここでお泊り会という事で、決まりね」


 こうして、休日にサロンメンバー4人でのお泊り会がをすることが決まった。







 お泊り会当日、亮と恵梨香は衣服などをカバンに詰め込み準備万端であった。


「楽しみだなぁ……お泊り会……」

「亮様、その事なのですが、1つ問題がございまして……」


 かなり恵梨香が深刻そうな表情をしているの見る限り、相当大きな問題のようだ。


「な、何?」

「お風呂はどうするんですか? まさかあのお三方と一緒に入るなんて言わないですよね?」

「あー……」


 その場のテンションで決めてしまって、自分が男であることを完全に忘れていたようだ。


 恵梨香や麻奈美は、亮が杏奈に扮していることを知っているが、唯は全く知らないわけで、バレればとんでもないことになってしまう。


 そうなってくると、女の子3人とお風呂に入るなんて自殺行為である。


「ま、まぁ麻奈美がなんとかしてくれるだろ!!」


 投げやりにそう言うと、恵梨香はため息をつく。


「これだから単細胞は……。いいです。私がなんとかします」

「本当か?」

「なので、すべて私に任せてください」


 太鼓判を押された亮は「分かった」と了承する。


(不安になってきたなぁ……)


 不安を抱えつつも、制服に着替えて、準備を終えた亮は恵梨香と共に学園に向かうと、門の前で麻奈美と唯が待っていた。


「あ、来た来た」

「お待たせ2人とも~」


 合流した4人は早速サロンルームへと向かうと、そこにかなりの数の女子生徒たちがいた。


「たくさんいますね……」

「あの娘たちもお泊り会をするのかな?」


 どうやら自分たち以外にも親睦会と称してお泊りをするサロンが多いようだ。


 自分たちのサロンルームへと入ると、唯や麻奈美がいつもとは少し違うスイーツを買ってきていた。


「唯ちゃんと一緒に駅前で選んできたんだ」

「私が良く買ってきてもらう、お菓子なんですがお口に合うでしょうか?」


 まず机に置かれたタルトを、亮は一口食べる。


「すごくおいしいよ」

「とても美味しいです」


 同じようにタルトを食べた恵梨香も、美味しそうに食べていた。


「お口にあって良かったです……。ほかにもあるので食べてください」


 こうして何時ものようにスイーツを食べながらだべり始めるが、やはりいつもやっていることなので、流石に飽きてきてしまう。


「うーん……。だべるだけじゃ、飽きてくるね……」

「それじゃあ、ババ抜きでもしようか」


 カバンから麻奈美は高級そうなトランプを取り出す。


「それも、普通のババ抜きじゃ物足りないから、罰ゲームつきで」

「ば、罰ゲームですか……!?」


 焦る唯を「大丈夫、大丈夫」となだめながら、トランプをシャッフルして4人に配っていく。


「で、罰ゲームの内容はなに?」

「うーん、そうだなぁ……。3人の言う事をなんでも1つ言う事を聞くと言うのはどう?」

「そ、それなら大丈夫かもです!」


 気合を入れながら、唯は配られたトランプを手に持つ。


「分かった。絶対私は勝つよ」

「私も絶対に負けません」


 こうして罰ゲームを掛けたババ抜きが始まるのだった。

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