妹の代わりに女装して学園に行ったらハーレムが出来た件
Y0324
第1話
それは突然の出来事だった。
妹の
病室の中に入ると、ベッドの上に足をギブスで固定された、長いストレートヘアーの妹杏奈が横たわっていた。
「杏奈!? 大丈夫か?」
「お兄ちゃん! 大丈夫だよ。足を骨折しちゃったけど命に別状はないみたいだよ」
兄の到着に嬉しそうな表情を浮かべて起き上がる。
「良かった……」
そう聞いて亮はほっと胸をなでおろすが、杏奈はため息をついてがっかりした様子だ。
「でも、全治2~3か月だって……。せっかく入学式で新入生代表挨拶を読んで人気者になるはずだったのにー!」
杏奈は頭脳明晰で超難関の聖ブリリアント学園に首席で合格していて、入学式は入学制代表として挨拶を読むはずだった。
だが、足を骨折してしまっては入学式どころか、学園にすらまともに行くこともできないだろう。
「しょうがないよ。今はけがを治すことに専念しような?」
「うん……わかった」
落胆とする杏奈の頭を亮は慰めるように撫でてあげるが、いつもだと撫でたらご満悦そうに笑うのに、今回はまだ引っかかることがあるのか神妙な面持ちだった。
「どうした?なんか悩みでもあるのか?」
「うん……。もしさ2~3か月も入院したらさ……。一緒に入学した娘は、もう皆友達を作ってしまってるかもしれないじゃん?」
「お、おう……」
「そうなったら私……友達も作れなくて1人ぼっちになるんじゃ……」
そう告白しながら、布団の上に涙をこぼす。
「いや流石に大丈夫だと思うけど……」
「いえ、そうとは限りませんよ?」
不安になっている杏奈を安心させてあげようとしていると、近くで花瓶を受けていた黒髪で短髪のメイド服を着た少女、
「なんでそう言えるんだよ、恵梨香」
「あの学校にはサロンと言う部活のような集まりがあるのです。そのサロンへ早期に入っておかないと、完全に孤立してしまうのです。パンフレットに書いてあったでしょう?そんなこともわからない脳みそが鶏以下の人間なのですか?」
そう何時ものように理不尽に罵倒を織り交ぜながら恵梨香はサロンについての説明をする。
昔から恵梨香は亮に対してだけは、このように何故だか知らないが罵倒を浴びせることが多い。
もう浴びせられ続けて、慣れてしまってはいるが……。
「え? そうなの? てか最後の余計だよ」
入学パンフレットに、書いてあったのは覚えているのだが、ざっとしか見ていないのであまり気にもしていなかった。
(確かに、月日が経ってから入ってももうグループは形成されてるし手遅れかもなぁ)
「うわあああん!! 本当にどうしよう!! 私の学園ライフがぁ!!」
泣きつき杏奈を優しく慰めることしかできなかった。可愛い妹のためにどうにかしてあげたい。
だけどどうすれば良いんだろう? そう悩んでいると杏奈は何かを思い付いたのか「そうだ!」と声を出す。
「お兄ちゃんが私に扮して、学園に通えばいいじゃん!!」
「はぁ!? お前何を言って……」
突然の提案に亮は困惑する。
確かに亮は杏奈と似て中性的な見た目をしていて瓜二つな見た目をしているが、杏奈に扮して学園へ通うのは無理があるのではないかと思う。
「それは名案ですね……」
恵梨香もノリ気の様子だった。
「ねぇ~お兄ちゃん~一生のお・ね・が・い!!」
「そ、そう言われても……」
甘えた声で誘惑するように杏奈は懇願する。
杏奈は、毎回お願いする時はこのようにあざとく甘えた声で誘惑してくる。いつもの亮ならこれで一撃ノックアウトしてしまうのだが、流石に今回はまだ渋っていた。
「ねー、恵梨香も手伝ってよ~」
そう言われて、痺れを切らした恵梨香は舌打ちをして口を開く。
「毎日部屋で引きこもってるくせに、たまには妹のために部屋から出ろ」
「わ、わ、わかりました!! 安奈の代わりで学園に通います!!!」
2人からのそれぞれ違う圧に耐えかねた亮は首を縦に振る。
「やったぁ! お兄ちゃん大好きー! いたたた!!」
「お、おい大丈夫か?」
喜んだ杏奈は抱き着こうとして、固定されていた足を動かしてしまい悶絶する。
だが、こんなに喜んでくれたなら承諾して良かったと改めて思っていた。
後の世話を、恵梨香に任せた亮は帰宅する。
村上家は豪邸という訳ではないが、周りに建っている民家と比べれば豪華な作りだ。
両親は外国の少し大きな企業で働いているので、亮と杏奈と恵梨香の3人で暮らしている。
少し奥まった自分の部屋に入ると、ハンガーにかけてあった可愛らしいピンク色の衣装を着て、金髪のウィッグを被りPⅭの電源を付け、配信開始ボタンを押す。
「皆~!! こんあんな~! 元気してた~?」
そう挨拶するとコメント欄には「こんあんな~」や「待ってた」などのコメントが飛び交い、始まってから5分で視聴者数は1万を超えていた。
中学校を卒業した後、亮は高校にはいかずストリーマー
配信サイトの人気ランキングでも1位だという人気ぶりであり、生活費もこの配信サイトの収益やリスナーからの投げ銭でまかなっている。
歌を歌ったり、リクエストに応えたりしていると、コメント欄の盛り上がりは最高潮に達し、大量の投げ銭が飛び交う。
「いぇ~い!! 皆ありあんな~!!」
そんな時、近くに置いてあったスマホに通知が入る。
この時間なら、おそらく恵梨香から晩御飯の完成を知らせるメッセージだ。いつもは配信が終わってから食べるので、向こうもわかっているだろうと無視をする。
だが、今日はいつも違った。
無視をして配信を続行していると、スタンプを連打しているのか通知音が何度も何度も鳴り響く。
(なんだよー。今いいとこなのに!!)
「ごめんね、ちょっとスマホの通知がうるさいから見てくるね……」
メッセージアプリを開くと、やはり晩御飯の完成を知らせるメッセージと早く来いというスタンプが何個も並んでいた。
すかさず亮は『今は無理』と打ちPCの前へと戻るがそれでも、スタンプ連弾が止まらなかった。
コメント欄をちらっと見ると「彼氏……?」や「まさか杏奈ちゃん彼氏持ち?」などの阿鼻叫喚のコメント並んでいた。
「ち、違うよ? お兄ちゃんからだよ?」
そうあざとく断言すると「なんだお兄ちゃんか」や「いつも杏奈ちゃんがお世話になってます」と阿鼻叫喚のコメントは消えて事態を収束させることに成功する。
ほっと一息ついて、スマホの画面を見るとまたメッセージが届く。
『このまま無視を決め込むなら、ドアを叩いてお前が男だって叫んでや』
(あわわわわ!!!)
「ご、ごめんね皆! 少し早いけど用事ができたから今日はこれで終わるね! おつあんな~!」
焦った亮は、配信を終了し、早急に着替えて、恵梨香の元へ向かうのだった。
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